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Episode 137

 終了の鐘の音が鳴り、広場に戻ってきたレイフォンの腕に巻かれていた青い布を見たアスラ伯爵はやっぱりかというような少し残念そうな表情を浮かべていた。


 それから勝利者の発表、賞金の授与などはスムーズに執り行われ、テスターの街大鬼ごっこはあっけなく、これといった面白みもなく終了した。


「レイ兄さんお疲れさま。それと、おめでとう」


「レイお兄ちゃん、おめでとう!」


 レイフォンに声をかけたのはアイラとルン。


「ありがとな。言った通り俺が逃げ勝っただろう?」


 機嫌良さげに言葉を返したレイフォン。


「うん! すごいね!」


「うん、だけどレイ兄さんがどういう風に逃げていたのか見れなかったのが少し残念だったかな」


「確かにな。ビデオカメラとかがまわってたわけじゃないしな。それに、後半とかは俺は誰もいない森の中にいたから当事者にしか内容はわからなかっただろうし……だけどーー」


 鬼ごっこが終了した夕方の広場にはまだ屋台などが残り、人々で賑わっていた。


 それに、昼間より人が集まっているように見え、まるで祭のようにも見える。


「ーー参加者や賭けをしていた連中以外には誰が勝とうとよかったんだろうな。まっ、鬼ごっこは騒ぐ為の余興みたいなものだったんだろう」


「ビデオカメラ? 余興? けど、私はレイ兄さんの事をちゃんと応援してたよ」


「ルンもおうえんしてた! あと、もうけたの!」


「儲けた?」


「ちょ、ちょっとルン!」


 ルンの言葉に焦るアイラ。


「ん?」


 首を傾げるルン。


「あ~、アイラもやってたのか? 俺は別に怒ったりはしないって。それでいくら賭けていくら儲かったんだ?」


 大した金額ではないだろうと思っているレイフォン。


「それは……その……ごにょごにょ」


 レイフォンにだけ聞こえるように耳元で金額を答えるアイラ。


「!? お前……なかなかやるな」


 予想以上の金額で少しだけ驚いた様子のレイフォン。


「その……たまたまだよ」


 アイラ自信も金額には驚いており、まだ戸惑いが残り、謙遜するようにレイフォンに言葉を返してはいるが、正直何と言葉を返せばいいのかわかっていなかった。


「たまたまでお前ぐらいの歳でその額は普通は賭けねぇよ。アイラはまだ10歳だろ?」


「あっ、それなんだけどーー」


「11だよ! アイラお姉ちゃん今日おたんじょうびなの!」


 アイラが答える前に元気な声で答えたルン。


「本当か?」


「でも……ちゃんとした生まれた日かもわからないし」


 困ったような苦笑いのアイラ。


「そんなのはいいって。なら今日はアイラの誕生日祝いとオマケで俺の勝利祝いだな」


 笑顔のレイフォン。


「私は別に……それにオマケなら私のーー」


「いいから、いいから」


 ニコッと笑いアイラの言葉を遮るレイフォン。


「ルンは?」


 自分だけ祝ってもらえないのが少しだけ不満で、寂しそうなルンは首を傾げていた。


「ルンは……頑張った祝いだな」


「がんばった? うん! ルンがんばった!」


 適当に考えたレイフォンの祝いに喜ぶ無邪気なルン。


「そういえば、三人はどうした?」


 今さら気づくレイフォン。


「姉さん達のこと? 姉さん達ならレイ兄さんが壇上に上がっている時に途中でどこかに行ったけど……」


「なるほど。俺を捕まえられなかった事が相当悔しかったんだろうな」


 アイラの返答に勝手に納得して見せるレイフォン。


「それもあるとは思うけど……」


 何か言いたげなアイラ。


「ん? まっ、いい。よし! 今日は予定通り豪華に行くぞ!」


 だがあえて、レイフォンは尋ねなかった。


 そして、2人に豪華な食事に行くと笑顔で宣言した。


「なら、お金は私がーー」


「何を言ってるんだよ? アイラも儲けたかも知れないけど今日はお前の誕生日祝いだろ? それに、アイラの儲けの何倍の賞金を俺が手に入れたと思ってるんだ」


「でも……」


 遠慮気味のアイラ。


「俺は誰だ?」


「レイ、兄さん?」


 一瞬だけ真面目な表情になったレイフォンに緊張するように言葉を返したアイラ。


「そう。俺はお前らの兄貴だ。だから妹が兄貴に気を使うな。それと兄貴からひとことだけ。今回はいいけど、賭けはもうやめとけよな」


 優しい表情で話し、忠告するレイフォン。


「うん……今回はその……レイ兄さんの妹だろ? って誘われたのもあるけど。レイ兄さんが必ず勝つって信じてたから。だから……そのね……今回は特別なの。もうしない」


 妹扱いされた事が嬉しいアイラは照れたような表情でぎこちなく答えた。


「そっか。なら、そろそろ行くか?」


 笑顔で返したレイフォンに


「うん!」


 とアイラはルンにも負けないぐらいの笑顔で元気よく返事をしたのであった。


 


お読み頂きありがとうございました。

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