Episode 13
旅に出る事を決心したレイフォンは街に帰るとすぐに旅の準備にとりかかった。
そしてーーアシュリーが旅立ってから一週間後。
「アシュリー様に続いて、レイ君までテスターの街を離れちゃうなんて寂しくなるわね……」
ギルド受付担当職員のミリア。
「ギルドも静かになっちまうな」
「レイフォン、お前、ひとりで旅って本当に大丈夫か?」
「ちゃんと、帰って来いよレイフォン」
いつもギルドの酒場にいる男性冒険者達。
「レイ君、このパン良かったら旅の途中に食べてね」
「孫が旅に出る様で私は……ぐすっ」
「ほら、お婆ちゃん泣かないの。レイお兄ちゃん、絶対の絶対帰って来てよね!」
「頑張れよ、レイフォン」
定食屋の奥さんに街の人々。
アシュリーほどではないがレイフォンを見送りに沢山の人々が朝からテスターの街の門の近くに集まっていた。
もちろん神様の存在や一緒に旅をする事は秘密にしている。
「皆さん、俺の為にわざわざありがとうございます。アシュが帰って来る頃には俺も帰って来ます。だから、その時はまた、よろしくおねがいします」
挨拶をして、皆に頭を下げるレイフォン。
「待ってるわよ」
「待ってるぜ」
「待ってるからな」
「待ってるよ!」
笑顔で応えてくれた人々。
「ありがとうございます……じゃあ、俺いってきます」
テスターの街の人達の優しさを感じながら、レイフォンはテスターの街を旅立ったのだった。
ーーーー
「街のみんな、良い人達だね」
テスター街から少し離れると姿を隠していた神様が現れてレイフォンに話しかけた。
「ああ、俺の大切な街の人達だ」
「そうか」
優しい表情で言葉を返すレイフォンに神様も優しく返した。
「さてと、テスターの街を出たのは良いけど……どうすればいいんだ? 神様?」
「そうだね……無難に近くの街からまわるってのはどうかな?」
「そうだな」
ちなみにレイフォンと神様の旅は徒歩である。
「えっと……近くの街は、っと」
地図を広げて確認するレイフォン。
「……ベロアの街か」
「どれどれ?」
宙を浮いて地図を覗きこむ神様。
「徒歩だと半日ぐらいだね。レイフォンはどうして馬車を用意しなかったんだい?」
神様は気になった事をレイフォンに尋ねた。
「俺、馬車酔いするんだよ。それに馬車とか操れないからな、あとは従者とか雇ったら神様も姿を現せれないし、話せないだろ?」
「確かに。レイフォンはボクの事も考えてくれてたなんて意外と優しいんだね?」
「意外って何だよ?」
「ボクはあの屈辱を忘れてないからね」
屈辱とはお手、の事である。
「神様こそ意外と根に持つよな? お手!」
「ワンっ!」
「ぷっ」
お手に反応してお手をしてしまう神様を見てレイフォンは笑いを吹き出した。
「……レイフォンのアホー!」
吠える子犬……いや、神様とレイフォンの旅ははじまったのであった。
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