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Episode 129

「街の皆よ。本日は第二回テスターの街大鬼ごっこに参加頂きありがたく思う。急遽決まったことにも関わらず、これほどの参加者が集まり開催できることを私は大変喜ばしく思う。 参加者だけではなく準備、盛り上げに協力してくれた皆にも心から感謝を申し上げる。皆ありがとう」


 広場の中央の壇上。


 領主のアスラ・テンペリス伯爵が集まった人々に向けて『第二回テスターの街大鬼ごっこ』の開催の挨拶を述べていた。


「さて、当イベントはほとんどの者が知っていると思うが、一昨年にも開催したレイフォンを捕まえることを目的にした鬼ごっこである。制限時間三時間内に是非皆にはレイフォンを捕まえて欲しい。見事捕まえた者にはレイフォンを丸一日自由にできる権利と、賞金三百万SL、いや五百万SLを贈呈しようじゃないか」


 突如、賞金額を上げて話したアスラ伯爵の言葉に、集まっている人々から驚きと歓喜の声があがった。


 一般的な平均年収が三百万SLとされるウェスタリア王国。


 急遽決まった街のイベントに三百万SLでも破格と思われる額、それがさらに+二百万SL。


 盛り上がらないはずがなかった。


「うん、うん。盛り上がり結構。皆、期待しているぞ」


「「「「「うぉー!!」」」」」


 盛り上がりや気合い、やる気を見せる人々を見渡し満足そうな表情を浮かべるアスラ伯爵。


「では、今回の標的でもあるレイフォンからもひとこと貰おうじゃないか。そういえばレイフォンは「俺があんなむさ苦しい女っ気のないような連中に捕まるはずがないじゃないか」とアシュリーに膝枕……いや、一緒に街に来ている美少女の方だったかな? とにかく美少女に膝枕をされながら言ってたな。ニヤニヤと笑いながらな」


 参加者を煽るために平気で嘘をついたアスラ伯爵。


「レイフォンのやろー!」


「ふさけやがって!」


「アシュリー様だけじゃなく……」


「許せん!」


 どうやら、アスラ伯爵の煽りは成功したみたいだ。


「ほら、レイフォン? 壇上に上がって何かひとこと言ってやれ」


 アスラ伯爵がレイフォンに視線を向けて話しかけると同時に参加者達もレイフォンに視線を向けた。


 参加者(ほぼ男性)の表情は敵意むき出しである。


 完全に状況はアウェーのレイフォン。


(いやいや、ふざけるなよおっさん! こんな状況で何を話せって言うんだよ!)


 レイフォンは目で訴えるようにアスラ伯爵に視線を向けた。


 しかし


「どうしたレイフォン? 上がってこないのか? なるほど……そういうことか……。参加者の皆よ! レイフォンはお前らに話すことなどない虫けらどもが! と言いたいらしい」


 納得したような表情を見せたと思ったら、唐突に大きな声でレイフォンの勝手な代弁をしはじめたアスラ伯爵。


「そんなこと思ってねぇよ!」


 たまらず壇上に上がり、アスラ伯爵にツッコミをいれたレイフォン。


「おっ、上がってきたかレイフォン。なら、自分の口から皆に言うのだ。虫けらどもと」


「だから、そんなこと思ってねぇし! 言わねぇよ! あんたはバカか!」


 レイフォンがバカと言った直後、アスラ伯爵は口元をニヤリとさせた。


「皆! 聞いたか? レイフォンは領主の私にバカと言った。領主の私にだぞ? そんなレイフォンが皆のことをどう思っていることやら……私には想像できんな……悲しいことだ……」


 わざとらしく悲しむ表情を見せるアスラ伯爵。


「いや、今のは領主様がーー」


「レイフォン! お前ってやつは領主様になんてことを!」


「許さん! 絶対に捕まえてやるからな!」


「少し顔がいいからって調子にのるなよ!」


「そうだそうだ!」


 レイフォンの言葉は参加者達の声によって遮られた。


(くそ、どうしても俺を捕まえさせたいらしいな伯爵様は。こうなったらやけくそだ)


「皆さん! 俺の話も聞いてください!」


 大声で参加者達に呼び掛けるレイフォン。


「ふぅーー」


 そして、深呼吸を一息ついたあとレイフォンは


「その、俺は別に皆さんのことを悪くは言っていませんし、思っていません。だけど……それでも俺に文句を言いたいのなら……俺を捕まえてから言えや!」 


 挑発するように大声で言葉を放った。


「まっ、皆さんが俺を捕まえることなんて一昨年同様に無理ですけどね。つか、不可能?」


 最後、レイフォンはさらに挑発するようにニヤっとした表情を参加者に向けて見せたのであった。


 


お読み頂きありがとうございました。

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