表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/198

Episode 126

『第二回テスターの街大鬼ごっこ』当日。


 スタート地点となる街の広場では屋台などが並び、沢山の人達で賑わっていた。


「アイラお姉ちゃん? 人がいっぱいだね?」


 賑わいを見て目を丸くしキョロキョロと見渡すルン。


「そうね。迷子にならないようにちゃんとルンは私の手を握ってるのよ?」


「うん!」


 ルンは差し出されたアイラの手をぎゅっと握り元気に頷いた。


 手を繋いだことを確認したレイフォンは


「よし、なら屋台をまわるぞ? 今日は俺が好きなもんをなんでも買ってやるからな」


 と上機嫌にふたりに声をかけた。


「本当に! レイお兄ちゃん?」


 嬉しそうに聞き返すルン。


「今日の俺には一年ぐらいは働かなくてもいい金が入る予定だからな」


「レイ兄さん? それって昼過ぎから行われる鬼ごっこのことだよね?」


「そうだアイラ。俺が逃げ切って勝つことは決定しているからな。だから、アイラも遠慮せずに好きなもん買って、食って、歌え、はっはっは!」


 スイッチが入りはじめ突然と笑いだしたレイフォン。


「レイ兄さんがいきなり壊れた……」


 そんなレイフォンを見たアイラは微妙な表情を浮かべ呟いた。


「レイお兄ちゃん楽しそう! わたしも笑う~、はっはっは!」


「おっ、いいぞルン。そうだ、笑うんだルン!」


「うん!」


「「はっはっは!」」


 手を握ってるようにと言われたばかりのルンは早々にアイラの手から離れ、レイフォンの隣に並び、両手を腰に当てたポーズでレイフォンと一緒に笑っていた。


 人混みで笑うふたりは目立っていて、近くにいるアイラは恥ずかしそうに顔を少し赤くさせうつむかせていた。


(恥ずかしい……)


 だが、そこに救世主が現れる。


「レ~イ! 何をそんな大きな声で笑ってるのよ!」


「レイフォンさん、もうスイッチが入ってます」


「やっぱりこのレイフォンはちょっと違うわね」


 アシュリー、マリベル、ミリベアスの三人である。


「なんだよアシュ? アシュだって大きな声を出してるだろ? つか、一緒に笑わないか?」


「笑わないわよ!」


 返しの早いアシュリー。


「そっか、ならお前らはどうだ?」


「レイフォンさんすみませんけど意味がわからないです」


「わたくしもよレイフォン」


 ふたりはレイフォンに若干引いている。


「お前らは全然わかってないな、なっ? ルン?」


「うん! お姉ちゃんたちはぜんぜんわかってな~い!」


 楽しそうな笑顔でレイフォンに返事をしたルン。


「ほらな?」


 ルン以外の4人はレイフォンに対し何がほらな? だと思った。


「よし! もういっちょ笑うぞルン!」


「うん!」


「なら、せーのーー」


「なら、じゃないわよ! バカレイ!」


 アシュリーは魔法剣ではなく木剣をどこからか取りだし、レイフォンに振りかざした。


 しかし


 レイフォンは簡単に避けた。


 それもいつのまにかルンを抱きかかえて。


「ふっ、悪いなアシュ。今日の俺はいつもの俺じゃないんだ」


 すました表情を見せるレイフォンの言葉に、これまたルン以外の4人は確かにと思った。


 レイフォンが思っていることとは別の意味だが。


「そうね……レイはおかしいわ」


「私もそう思います」


「わたくしもよ」


「わ、私も……」


「そうか、そうだろ? 今の俺は俺であって俺じゃない。言うなればあれだ。わかるだろ?」


 レイフォンに抱かれているルンはキョトンとしている。


「あれでわかるわけないじゃない!」


「何をそんなにピリピリしてるんだアシュは? 俺に避けられたことを怒ってるのか? 悪いが今日の俺には誰も触れられない。例え神様だとしてもな。だから悪いなアシュ」


 レイフォンが言った神様とはあの神様(子犬)ではない。


 想像上のもっと立派な神様らしい神様のことである。


「ムカつく……。マリベルはともかく、ミリベアス? 今日は絶対にレイを捕まえるわよ?」


「あら? やる気になったのねアシュリー?」


「そうよ。絶対に捕まえて言うこと聞かせるんだから」


「ふふ、そうね」


 やる気を見せたアシュリーを見て微笑むミリベアス。


「あの……アシュリー? 私のともかくってのは?」


「マリベルは……その……応援係よ。だってマリベルは運動神経悪いでしょ?」


「うぐっ……そうですけど……傷つきます……」


 ショボくれるマリベル。


「まっ、確かにそうね。マリベルはドジだものね」


「うぐっ……」


 マリベルはミリベアスにとどめの言葉をさされた。


「お前らはまた、俺を捕まえる作戦でもしてたのか? 無駄だからやめとけ」


 完全にスイッチが入ってしまってるレイフォン。


 ルンは下ろされてアイラに手を繋がれている。


「なら、レイフォン? もしもわたくしかアシュリーが貴方を捕まえたら本当になんでもしてくれる? 例えばわたくしをお嫁さんにするとか?」


「な、何を行ってるのミリベアス!」


「そ、そうですよ!」


 ミリベアスの言葉にアシュリーとマリベルは声を張り上げた。


 そして、レイフォンはというと


「いいぜ。もしもどちらかが俺を捕まえることができたら嫁でも婿にでもなんでもしてやるよ」


 ニヤっとした表情で了承したのである。


「ちなみに3人でもいいかしら?」


「ああ、三人でも何人でもいいぜ? 勝つのは俺なんだからな。はっはっは!」


 言い終わるとレイフォンは再び笑いだした。



「と言うことよ?」


「わ、私はただレイを捕まえるだけよ……」


「あの……その……あの……が、頑張ってください!」


 ミリベアスに確認するように声をかけられたふたりはともに顔を赤くさせ、アシュリーはそんなの関係ないという風に答え、マリベルは明らかに動揺し、最後に参加するふたりにエールを送ったのであった。


 

お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ