Episode 120
レイフォンがいる冒険者ギルド。
ギルド内ではレイフォンの話で盛り上がっていた。
「ーーレイフォンは真面目そうに見えるのに本当に駄目な奴だったよな」
「だな。歳上にはちゃんと敬語を使うガキだったから、最初はどこの真面目な坊っちゃんかと思ったら」
「中身は」
「だらしない奴なんだもんな」
「それゃあ、アシュリー様もレイフォンには厳しくなるわな」
「だな」
懐かしみながら楽しそうに笑う冒険者達。
(朝から酒を飲んで依頼に行かないあんたらには言われたくねぇよ)
黙って話を聞いていたレイフォンは苦笑いを浮かべて思っていた。
「そんなレイフォンが旅に出るって聞いた時は本当に驚いたよな」
「ああ、あの面倒くさがりなレイフォンがだからな」
「今頃……あいつはどうしてるだろうな?」
「なんとかやってるさ」
酒の入った冒険者達はレイフォンの存在を忘れていた。
レイフォンはもちろん、ギルド受付担当職員ミリアも苦笑いである。
「あの……俺はここにいるんですけど?」
「「「「「レイフォン!?」」」」」
冒険者達は驚いた表情を見せ、一斉にレイフォンを見た。
「いや、なんで驚いているんですか?」
(なんだこれ……)
レイフォンが冒険者達に呆れていると
「レイフォン! よくも俺に何も言わずに旅に出やがったな! しかもアシュリー様と一緒に帰ってきたって言うじゃないか! どう言うことだ!」
バンっとギルドのドアを勢いよく開けて入ってき、いきなり怒鳴るようにそう言ってきたのはレイフォンやアシュリー達と同じ年代の少年。
「どちら様ですか?」
冷静に言葉を返したレイフォン。
「ふざけるな! チャドだ! レイフォン、お前の永遠のライバル、チャドだ!」
「冗談だ。で、なんだよ? 自称永遠のライバルでアシュリーに十回フラレたチャド?」
「十回じゃねぇ! まだ九回だ!」
(まだって、こいつは諦めていないのかよ)
アシュリーと同じ歳のチャドもテスターの街生まれの冒険者。
そしてチャドは昔からアシュリーのことが好きだった。
いや、今も好きである。
だが、見向きもされないチャドはいつしか、いつもアシュリーと一緒に行動をともにしているレイフォンに原因があると考えた。
それからは、レイフォンがひとりの時を見計らってよくつっかかていた。
と言っても、レイフォンはひとりの時は基本は自宅警備していたが。
「つか、後ろにアシュがいるぞ?」
「ア、アシュリー様おはようございます!」
レイフォンに言われてすぐにうしろを振り返り、直ぐ様に目を瞑り深く頭を下げたチャド。
チャドはアシュリーのことを直視できない。
すぐに緊張してしまうのだ。
(こいつ、こんなんでよく何回もアシュに告白できたよな?)
「あっ、悪い気のせいだった」
目を開けて確認するチャド。
レイフォンの嘘に気づいたチャドの肩は震えていた。
「レイフォン……お前ぇぇえええ!」
当然だが、チャドは怒っている。
だが、レイフォンは気にする様子は見せない。
「今日という今日はお前と決着をーー」
着けてやる!
そうチャドが言おうとした時
再びギルドのドアが勢いよく開けられた。
「レイ! 探したわよ!」
入ってきたのはアシュリー。
後ろにはミリベアスとマリベルの姿も見える。
ドアの近くにいたチャドは間近でアシュリーの姿を見てしまっていた。
その結果。
「ア、アシュリーしゃまが本当に来られたでごじゃ、ござる……」
尻餅をついたチャドは変な話し方で声を漏らしていた。
チャドの声が聞こえたアシュリーは
「誰? この変な人は? レイの知り合い?」
とチャドをチラっと見てからレイフォンに尋ねたのであった。
(哀れだな……チャド……)
レイフォンは思ったのだった。
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