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Episode 12

 アシュリーが馬車で去ったあとに、レイフォンの目の前に現れた神様(子犬)。


「神様が近くに居たのに気づいたのは、なんと言うか勘だな?」


「いやいや君ね……勘で普通はボクがいるなんてわからないよ? 森の時もそうだったけどね」


 レイフォンの勘という言葉に呆れたように言葉を返した神様。


「それで、神様は俺に用事があったんじゃないのか?」


「鋭いね君。それも勘かい?」


「そんなとこかな」


「用事と言うかね。少し君に話しておこうと思う事があってね」


「俺に話しておこうと思う事?」


「うん。えっとだね、君は前に森で会った時にボクに言ったよね? 君の幼馴染みを勇者パーティーのメンバーに選んだのは神様だって?」


「ああ、けど神様じゃなくて別の神様なんだろ?」


「ううん。それは違うんだよ」


 首を左右に振る神様。


「この世界に神様はボクだけ、ボクしか存在しないんだよ」


「なら、神様のお導きってのは……」


「僕は導いていないし、そんなのボクは知らない」


「じゃあ誰がアシュを勇者パーティーのメンバーに選んだんだよ! 勇者を選んだのもそうだ……誰がーー」


「少し、落ち着きなよレイフォン」


 少し感情的になりはじめたレイフォンを神様がなだめる。


「けど、誰が神様、ボクを偽ったかはわからないけど、その者は悪い考えで勇者や勇者パーティーメンバーを選んで集めてるわけではなさそうだよ。だから、レイフォンがそこまで心配する必要はないと思うよ」


「そうか……」


 神様の言葉に少しホッとした表情を見せたレイフォン。


「それでねレイフォン? ここからが本題なんだけどね」


「それって今思いついたよな、神様?」


「何で君はそんなに鋭いんだよ!」


 図星だったようだ。


「それで今思いついた本題ってのは何だ神様?」


「えっと……ボクと一緒に旅をしないかい?」


「断る」


「ありがとうレイフォン……って断る!?」


 神様の誘いに即答で断ったレイフォン。


 神様はまさか断られるとは思っていなかったようで目をパチクリさせていた。


「どうしてだいレイフォン?」


「俺はテスターの街でアシュの帰りを待たないといけないんだよ。そもそも理由もなしに急に旅って言われても「はい、わかりました」って答えるはずがないだろ?」


「あっ! そういえば、確かにボクは理由を言ってなかったね……ははは」


 レイフォンに言われて理由を話していなかった事に気づき苦笑いする神様。


「理由はね……君はもっと世界を見た方がいいと思うんだよね」


「世界を見た方がいい?」


 わけがわからない、そんな表情でレイフォンは神様の言葉を繰り返し聞き返した。


「うん。君は幼馴染みの彼女に何かあった時に助けたいんだよね? それはどうやって? 君はあまり君の暮らす街から出た事がないよね?」


「それは……」


 神様の問いに言葉を詰まらせるレイフォン。


「もしかしたら今の君でもなんとか出来るかもしれないね。だけど……この世界はこれから大変な事が起ころうとしているんだ。世界の状況を知らないままの君が本当に幼馴染みに何かあって大変な時に助ける事が出来るのだろうか、とボクは思うんだよね」


「大変な事……世界の状況……それが、アシュと何か関係しているって言うのか神様?」


「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。悪いけど、今ボクが話せるのはここまでだよ。詳しくは話せなくてごめんね。だからそれはレイフォンの自分自身の目で確かめた方が良いかもね」


 神様の意味深な話にしばらく考える様子のレイフォン。



 そしてーー



「わかった神様。俺はアシュがテスターの街に帰って来るまで旅に出る。世界で何が起ころうとしているのか、世界の状況を俺自身の目で確かめる。それが少しでもアシュに関係していて助ける為に必要だって言うならな」


 旅に出る事を決心し、神様に宣言したレイフォン。


「そうこなくっちゃね♪ よろしくレイフォン」


 レイフォンが旅に出るという言葉に嬉しそうな神様は前足を差し出す。


 握手のつもりであろう。


 それに対してレイフォンは


「えっ? 俺、神様とは旅に出るとは言ってないけど?」


 と、真顔で言葉を返した。


「え~~~~~~!?」


 嬉しそうから一転、驚き絶叫する神様。


 そんな神様にレイフォンはニヤっと笑ってひとこと言う。


「冗談だ神様」


「神様をからかうなんてひどいよレイフォン。ボクは今プンスカ怒ってるんだからね?」


 レイフォンの言葉に今度は怒りだす神様。


 喜んだり驚いたり怒ったり喜怒哀楽の激しい神様。


「悪い神様。これからよろしくな。お手っ!」


「ワンっ!」


 レイフォンの差し出した手に言われた通り、反射的にお手をしてしまった神様。


 なんにせよ、これも握手のひとつだろう。


 ーー


 そのあと、レイフォンと別れた神様が


「レイフォンのアホー!」


 と、こっそり泣いて叫んでいたのは秘密である。




お読み頂きありがとうございました。

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