Episode 115
「お待たせ、ビーフシチューよ」
定食屋の奥さんが運んできて、テーブルに置かれたビーフシチュー。
「これがビーフシチュー……確かに黒いシチューですね」
「良い匂いがするわ」
ビーフシチューに興味津々のマリベルとミリベアス。
「奥さんわざわざありがとうございます」
「いいのよレイ君。気にしないで召し上がれ」
レイフォンが奥さんに礼を述べたあと、皆一斉にスプーンを持ちビーフシチューを食べはじめた。
「ルン、熱いから気をつけて食べろよ?」
「うん!」
「本当にお兄さんみたいねレイは……パクっ。ん、やっぱり美味しいわ」
「お肉の甘味といいますか、凄くまろやかなお味で美味しいです。 レイフォンさんのゲキオコする気持ちがわかります」
「マジギレだ」
マリベルとレイフォンの言葉にどっちも違うと思うアシュリー。
「本当……お肉と玉ねぎの甘味……噛もうとする前に消えてなくなるトロトロとするまでよく煮込まれたお肉……闇の世界かと思ったらそうではなかった……そう思える料理ね……深いわ」
「ミリベアス……なんだよその表現は?」
「美味しいってことよ?」
真剣な表情で述べたミリベアスのビーフシチューの感想にレイフォンは苦笑いを浮かべていた。
「わたし、パンにつけて食べるの好き~!」
「おい、飛び散るだろ? 服が汚れるだろ?」
「レイフォンって子供好きなの?」
ルンに世話をやくレイフォンを見たミリベアスは尋ねた。
「別にそういうわけじゃないけどな」
「ふ~ん、それでレイフォンはわたくしとの子供は何人ぐらいほしい?」
「そうだな…………って! 答えるかアホ!」
ルン以外の3人は顔を赤くさせて、奥さんは様子を見て微笑んでいる。
「ルンは弟と妹ならどっちがほしい?」
「ん? 弟かなミリお姉ちゃん」
「だって?」
「だってじゃねぇよ! つか、お前そろそろ(魔国に)帰れよ。なんなら俺が強制送還してやろうか?」
「照れちゃって可愛いわねレイフォン」
クスっと笑ったミリベアス。
「照れてねぇよ……つか、駄目だこいつ……」
レイフォンは呆れてため息をついたのであった。
ーー
ビーフシチューをご馳走になったレイフォン達は奥さんにお礼を述べたあと、定食屋を出た。
「なら、俺はこいつらと帰るからアシュは領主様に俺がよろしく言ってたって伝えといてくれ」
「わかったけど、街にいる間に一度は屋敷に顔を出しなさいよ? お父様だってレイに会いたいと思うだろうし」
「わかってる。じゃあふたりも任せた。とくにミリベアスはちゃんと見とけよアシュ」
「そんなにわたくしが心配なのレイフォン?」
「心配だ。お前の言動にだ。マリベルは最近は大人しいから大丈夫だろうけど」
「どういう意味ですかレイフォンさん?」
マリベルの抗議するような表情。
「お前の言動も怪しいんだよ」
「レイフォンさんひどいです……」
少しだけ落ち込みマリベル。
「とにかくだ。すぐにまた会うと思うけど今日はじゃあな」
「わかったわ。またねレイ、アイラちゃん、ルンちゃん」
「さよならアシュ姉さん、ミリ姉さん、マリ姉さん」
「お姉ちゃんたちバイバ~イ!」
馬車に乗りレイフォンと姉妹は自宅へと向かいだした。
ルンはアシュリー達三人人に大きく手を振っている。
「なら、私達も私の屋敷に向かいましょうか」
「はい」
「そうね」
残されたアシュリー達三人もアシュリーの屋敷へと歩き出したのであった。
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