Episode 114
「それで、もうわかっているけどこの子達がレイの言っていた妹達ね?」
「ああ、そうだ」
「は、はじめましてアシュリー様……」
「はじめましてアシュリー様!」
アイラは緊張、ルンは笑顔でアシュリーに挨拶をした。
「ほら、アシュの顔が怖いからアイラが怯えてるだろ?」
「はっ?」
「ち、違います……ただ……緊張して……」
「なっ?」
「今、アイラちゃんだっけ? この子は緊張って言ったわよね?」
レイフォンを睨みつけるアシュリー。
「アシュリー様……こわい……」
「ほら、ルンまで怯えてしまったじゃないか? 大丈夫だぞルン? 顔は怖いけど食ったりはしないからな?」
「本当?」
「ああ、本当だ」
膝の上から見上げるルンにレイフォンは優しく微笑んだ。
「レイフォンさんのあんな優しそうな表情、はじめて見ました」
「そうね……」
マリベルとミリベアスははじめてと言ってもいいレイフォンの優しそうな表情を見て声を漏らしていた。
「ちょっと! 私がまるで悪者みたいじゃない! どうしてそうなるのよ!」
「ルンはあんなすぐ怒るような女性みたいに成長するなよ?」
「ん?」
ルンはよくわかっていなかった。
ーー
改めて挨拶と自己紹介を終えたレイフォン達。
定食屋の奥さんはレイフォン達の為にとビーフシチューを頼みに厨房に行っている。
「それで、アシュがどうしたら穏やかな性格になるかって話だったな?」
「そんな話はしてないわよ! ただ自己紹介をしただけでしょ!」
「ほら、また怒った」
「アシュリー、様?」
これ以上イメージを悪くしてはいけないと、アシュリーは無理矢理笑顔になった。
「レイ、あとで覚えてなさい」
「ルン、俺はお前を離さないぞ」
「ん? うん!」
よくわからないまま元気に返事をするルン。
レイフォンはルンを最強の盾だと思っていた。
ルンを膝に、近くにおいてる限りアシュリーからの攻撃はない。
「レイフォンさん、今日はアシュリーに強気ですね?」
「あとでどうせ、アシュリーにお仕置きされるわよ」
「そうですね……」
テスターの街に到着までに何度か見ていたレイフォンとアシュリーとのやりとり。
それを思い出したマリベルは苦笑いを浮かべていた。
「あの……レイお兄さん、レイお兄さん達はどうしてこの街に?」
質問してきたのはアイラ。
「ついでだ。まっ、お前ら姉妹が元気にしているかも気になったし、こいつらもお前らに会ってみたいて言うからな」
「そうなんですか……嬉しい」
笑顔を浮かべるアイラ。
「レイとは違って素直だし、賢そうな妹達じゃない?」
「それは俺への当て付けかアシュ?」
「こんなんじゃ足りないわよ」
「ですよね……」
レイフォンはルンをギュっと抱きしめた。
「ん?」
どうしたの、そんな表情を浮かべるルン。
「とりあず俺達は一週間ぐらいはテスターの街にいるつもりだからよろしく頼むぜ?」
「ここはレイ兄さんの街でしょ? それにお家も、ふふっ」
「まぁな」
おかしそうに笑うアイラを見て、元気に暮らしてるんだなと思い安心したレイフォン。
「アシュは屋敷に一度帰るだろ? つかあの領主様ならもう、おまえが帰って来てることは知ってるだろうしな」
「そうね……」
「あと、こいつらはアシュの屋敷に泊まらせろよ? 広い屋敷なんだから?」
「わかってるわよ」
「あら? 今日からはレイフォンと一緒に寝れないのねわたくし?」
「一緒に……」
ミリベアスの言葉を聞いたアイラは顔を赤くさせた。
何故かマリベルまでも。
「お前は勘違いさせるようにわざと言うんじゃねぇよ!」
「ん? わたしもレイお兄ちゃんと一緒に寝る~!」
無邪気なルン。
「お前らと一緒だとルン達に悪影響がおよぶ」
「ルンだったかしら? わたくしのこともミリベアス、いえ、ミリお姉ちゃんと呼んでいいわよ?」
「ミリ、お姉ちゃん?」
首を傾げて呼んだルン。
「なら、私のこともアシュお姉ちゃんでいいわよ?」
「わ、私のこともマリお姉ちゃんで!」
「アシュ、お姉ちゃんにマリ、お姉ちゃん? うん! わかった!」
元気に笑顔で答えたルンに三人も笑顔を見せた。
「お前らな……」
「べ、別にどう呼ばれてもいいでしょ? アイラちゃんも私達のことはお姉ちゃんって呼んでね?」
「は、はい……アシュ、姉さん」
アイラにも姉と呼ばれたアシュリーは満足気な表情を浮かべたのであった。
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