Episode 111
ウェスタリア王国。
「世界武道大会か……」
呟いたのは西の勇者レオン。
「どうした? レオンはもう代表確定しているだろう?」
レオンに尋ねたのはマット。
勇者達は世界武道大会の本当の目的を知っている。
「いや、ミミーもマットも大会には参加しないんだろ? だから誰が残りの三枠になるのかなって考えていたんだ」
「俺はこの腕にまだ馴れていないからな」
両腕の義手を見せるマット。
「私はどちらかというと、支援型だもの」
話したのはミミー。
「そういえば、アシュりんが参加するって手紙に書いてあったわね」
「手紙!?」
テーブルに手を置き身をのりだしたレオン。
「あっ……うん。それで、予選に参加する為に今、こっちに帰って来ているらしいわ」
「僕は聞いていない!」
「ちょっと落ち着けレオン。ということは……アシュリーが3枠に入る可能性は高いだろうな」
「そうね。けど、流石に精霊竜は使えないんじゃないのかしら?」
「大丈夫だろう。しかし、アシュリーは大会では精霊竜の力は使わないだろうな」
「そうね」
精霊竜に任せて、はい優勝というアシュリーの想像ができない2人。
「それでもアシュりんは」
「強い。いや、もっと強くなっているかも知れないな」
「そうね。楽しみだわ」
そんなふたりの会話の中、レオンは
(アシュリーが帰ってくる。僕に会いに……)
と勝手な妄想を膨らませていたのであった。
ーーーー
サウザトリス王国。
「シンメとトリーなら予選なら大丈夫だと思うけど、油断はしないでよ?」
南の勇者ミカレ。
「わかってるわミカレ」
「もう、私達は油断なんてしないわ……あの時みたいに……」
答えたのは双子の姉妹シンメとトリーのふたり。
「そうね……」
あの時
それは、第六魔王軍将軍バルトスとの戦いの時のことである。
結局は自分達では勝てずにアシュリーが倒した戦い。
世間的にはミカレ達が倒したことになっている。
「アシュリーさんもおそらくは参加してくるわよね……」
「彼女には勝てる気はしないけど、それでも」
「なんとか代表には選ばれたいわね。ミカレだけだと心配だし」
「それはどういう意味よ!」
ふたりはミカレを見ておかしそうに笑う。
「ミカレは」
「すぐに暴走するものね」
「……」
少しだけ自覚のあるミカレは言い返せない。
「そういえばアシュリーさんと一緒にいた彼」
「レイフォン君のことよねトリー?」
「うん、彼も出場するのかしら?」
「どうかしら? けど見てみたいわね。レイフォン君の力」
「レイフォンさんか……」
三人は無詠唱で簡単に魔法を使っていたレイフォンのことを思いだし、考えていた。
そして
(天空人……まさかね……)
少しだけレイフォンが幻の天空の国『インフェルリア』の住人、天空人ではないかと想像してしまったミカレであった。
ーーーー
イースラ王国。
「女王様……」
ため息をつき、どこか遠くを眺めて呟いている東の勇者カルカ。
「……罵倒をうけたい……殴られたい……」
「気持ち悪い……」
そんなカルカを見て苦笑いをして、小さく呟いたペコ。
「ペコ、俺のこのモヤモヤとした気持ちは何だと思う? やっぱり恋か?」
間違ってはいないけど、少し違うと思うペコ。
「あー、そうじゃないかなカルカ……たぶん」
どうでもいいと思うペコ。
「やっぱりか……そうか……こんな気持ちになったのははじめてなんだ俺は……そうかやっぱり……恋か……」
恋だとわかりスッキリとした表情を見せるカルカ。
(姐さん(ミリベアス)には近づくなって言われているけどね)
「どうしたら言いと思うペコ!」
とりあえず、医者に診て貰えとは言えないペコ。
「う~ん、半年後の魔族との勝負でカッコいい所でも見せたらいいんじゃないかな?」
(それでも姐さんはカルカに振り向かないと思うけど)
「そうか! わかった! 見てろよ女王様! ペコ、お前も予選頑張れよ」
気合い十分のカルカ。
ペコは自分に対してカルカがエールを送ってきたことに、少しだけ驚いていた。
「……頑張るよ。カルカもまっ、頑張りなよ」
「おう!」
いつも自分をバカにする幼馴染みのカルカだけど、少しぐらいは応援してもいいかなと思ったペコであった。
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