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Episode 11

「レ、レイ?」


 アシュリーはレイフォンに突然抱き締められた事に顔を赤くさせ混乱していた。


「わ、悪いアシュ……だけど、今の俺の顔はなんつーか……アシュに見せられない……だから、もう少しこのままで居させてくれないか?」


 つい、勢いのままにアシュリーを抱き締めてしまったレイフォンだが、自分の顔が赤いのがわかっているのだろう。


「……うん」


 アシュリーは大人しく頷き自然とレイフォンの背中に腕をまわした。


 ふたりの表情は赤というより真っ赤。


「アシュ?」


「何? レイ?」


「さっきも言ったけどもう一度言わせてくれ。アシュ、お前は死なない、俺が絶対に死なせないから。だからもう死ぬとか言うなよな」


「……うん」


 優しく話すレイフォンにアシュリーは目を瞑り頷いた。


「だからアシュは安心して魔王をぶっ倒してから……ちゃんと帰ってこいよなテスターの街に。俺、待ってるからアシュリー・テンペリスとをな」


「ふふふっ」


 突然、笑い出すアシュリー。


「何だよ? アシュ?」


「もう死ぬとか言わないわ。死ぬ気はもう全然これっぽっちも思ってないわ。だけどレイ? 貴方はどうやって私を死なせないつもりだったのよ?」


 アシュリーの声は明るい。


「気合いと根性」


「気合と根性ってね……それに待つのは普通は女性じゃないかしら?」


 レイフォンのなんとも適当な言葉に呆れたように返すアシュリー。


「それは、お前が、アシュが勇者パーティーなんかに選ばれたからだろ?」


「まっ、そうなんだけどね」


 顔の赤みは消え、いつも通りの話し方に戻っているふたり。


 抱き締め合ってる以外は。


「そ、そろそろ、落ち着いてきたから離れるぞ?」


「あっ……うん」


 抱き締めてる事を思い出したかのようにひとこと声をかけてからアシュリーの肩を掴み抱き締めた体を離すレイフォン。


 アシュリーは少しだけ名残惜しそうな表情をしていた。


「レイ? あのね……魔王討伐が終わって私がテスターの街に帰ったらーー」


 離れたて少し間が空いたあと、アシュリーがレイフォンに何かを伝えようとした。


「それ以上は言うな。それをアシュが言ったら悪い事が起こりそうな予感がする。帰ったらちゃんと話は聞いてやるから、今は言うな」


 しかし、それをレイフォンは言わせなかった。


 レイフォンの頭に浮かんだ『死亡フラグ』という言葉がアシュリーにそれ以上言わせては駄目だと感じさせていたのだ。


「アシュリー様! そろそろ!」


 少し離れた馬車から女性の従者がアシュリーを呼ぶ声。


「わかったわ!」


 すぐにアシュリーは返事をした。


「私、そろそろ行かなくちゃ……だからね……最後にレイ? 少しだけしゃがんでくれる?」


「しゃがむ? こうか?」


 寂しそう、だけど笑顔の表情のアシュリー。


 レイフォンはアシュリーに言われた通りに大人しく少しだけしゃがんだ。


「レイーー」


 アシュリーが名前を呼んだ直後。


「!?」


 レイフォンとアシュリーの唇が重なった。


 アシュリーは目を瞑り、レイフォンは目を見開いている。


 そしてーー


 ふたりの唇がゆっくりと離れていく。


「ーーいってきます。私のファーストキスなんだからね……感謝しなさいよね」


 そう言い残し、頬を赤らめ恥ずかしそうなアシュリーは馬車の方へと向かって駆け出した。


 ポカーンとした表情でフリーズするレイフォン。


「ちょっ! アシュ! 今のはよくわからなかったけど、帰ってくるの待ってるからな!」


 フリーズの解けたレイフォンは既に馬車までたどり着いて離れてしまっていたアシュリーに大きな声で叫んだ。


 アシュリーはそれに気づき、レイフォンに大きく手を振ってから馬車へと乗り込んだ。


 そして、馬車はすぐに動き走り出した。



 やがてーー



 馬車の姿は見えなくなり


「アシュのやつ、行っちまったな……つか、俺もファーストキスだっつーの」


 呟いたレイフォン。


「ところで神様? 神様が覗きなんてどうかと思うんだけど俺は?」


 気持ちを切り替え、そう言葉を放ったレイフォン。


 するとーー


「あれれ? よくボクが近くに居たことがわかったね君は? あと、覗いていたわけじゃないないよ。たまたまだよ」


 宙に浮いた子犬姿の神様が姿を現したのであった。


 


お読み頂きありがとうございました。

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