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Episode 109

 マリベルと護衛三人が住む(潜伏している)カサンの街にある家。


「3人に話したいことがあるのです」


 夜の食事に突然とマリベルは三人の護衛に向けて言葉を発した。


「姫様どうなされたんですか急に?」


「はい……実は私は旅に出ようと思っているのです。常識もない世界を知らない私は……」


「旅、ですか? なら自分もーー」


 お供しますと言おうとした男性護衛の言葉を塞ぐように、エリザが手を前に出した。


「姫様はおひとりで旅に出られるのですね?」


「はい……いえ、正確には旅をしているある方々に同行の許可をお願いしようと思っています」


 レイフォンが旅をしていることを聞いていたエリザはすぐに誰のことだかわかったようだ。


「誰ですかそれは!」


「声が大きいわよ。確かに彼との旅なら安全かも知れないわね」


「彼って誰だエリザ!」


 男性護衛は賛成ではないようだ。


「私達より格段に強い男の子よ? 姫様を笑顔にできるね」


「……よくわからないが姫様が決められたことなら俺は賛成します」


 もうひとりの男性護衛は賛成の意を表した。


「私ももちろん賛成です姫様」


「……ありがとうふたりとも」


「自分は……」


 納得できない、そんな表情を浮かべる男性護衛。


「なら、その彼と勝負でもしてみるかしら?」


「望むところだ!」


 ならばと、唐突なエリザの提案に男性護衛は即返答した。




 こうして、知らないところで男性護衛と勝負が決まったレイフォン。


「あ、あの……」


(まだ、レイフォンさん達に同行の許可も貰ってないんだけど……)


 勝手に決まる勝負にマリベルは思ったのであった。



 ーーーー



 翌日。


(なんで自分がマリベルの護衛と勝負することになったんだ)


 と思うレイフォンの前にはマリベルの男性護衛の姿があった。


「お前が姫様をちゃんと守れるような男か、自分が確めてやる」


(意味がわからないんですけど?)


 レイフォンと男性護衛との勝負のセッティングはレイフォン抜きに話し合われた。


 マリベルはアシュリーから旅の同行の許可を貰い、そして勝負の事情も話してある。


 ただ、レイフォンは何も知らない。


「モテる男は辛いわねレイフォン」


「なんの話だよミリベアス!」


 ミリベアスも事情は知っている。


「レイ! 手を抜いたら殺すわよ!」


「そんな口癖はやめろアシュ!」


「レイにだけにしか言わないわ!」


 嬉しくない……そう思うレイフォン。


「それじゃあ、はじめるわよ?」


 審判を勤めるのはエリザ。


「いつでもかまない自分はな」


「俺は……なんかどうでもいいです……」


 やる気満々の護衛とやる気なしのレイフォン。


「それでは……はじめ!」


 エリザのかけ声ではじまった勝負は一瞬でついた。




 男性護衛が動き出す前にレイフォンは、男性護衛の目の前に立ち首元に手を突き立てていた。


「はい、終わりと……あぁ面倒だった」


 突き立てた手を離し本音を漏らしたレイフォン。


 レイフォン以外は言葉を発しない。


 秒すら経っていない決着に驚いていたのだ。


 そんな中、ミリベアスだけは感心するような表情を見せ、神様は呆れていた。


(動きを追うだけで精一杯だったわ……流石わたしくしの認めた男ね)


(レイフォン……自粛するつもりないよね……あんなに目立ちたくないとか言いながら……)


「ん? どうした? 終わったんだろ?」


「レイフォン君……貴方はいったい何者なの?」


 エリザは思わず聞いてしまった。


「俺ですか? 俺は普通の旅人? ですかね今は」


 首を傾げて答えたレイフォンに一同は思った。


 普通ではないだろうと。


「そう……なのね……」


 もちろん納得はしていないエリザ。


「とにかく今ので彼、レイフォン君の実力はわかったでしょ?」


「ああ……」


 エリザに声をかけられた男性護衛は混乱したまま頷いた。


 そして


「レイフォンさん! ありがとうございます!」


 とマリベルはレイフォンに飛びついた。


「うわっ!? お前いきなり危ないだろうが!」


「レイフォンさんならちゃんと受けとめてくれると思ったんで」


「はっ? つか……アシュこれはーー」


 誤解だと言おうとレイフォンはアシュリーに顔を向けた。


「わかってるわよ」


 アシュリーは仕方ない、そんな表情を浮かべていた。


 そんなアシュリーの表情を見て、とりあえずはほっとしたレイフォン。


「レイフォンさん、これからしばらくよろしくお願いしますねっ」


 レイフォンに抱きついたまま笑顔で話すマリベル。


 いまだに事情を聞いていないレイフォンにはわけがわからなかった。


「レイフォン君、姫様をよろしくね」


「姫様を頼んだ」


「自分からも……頼む」


 護衛3人からもよくわからないまま頼まれたレイフォンは


「つか……誰か俺に説明してくれよ!!」


 と叫んだのであった。



お読み頂きありがとうございました。

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