Episode 108
神様から魔族の動きの情報を聞いた翌日。
「世界武道大会?」
「優勝者には三億SL!? 準優勝でも二億SL、三位にも一億SLってとんでもない額だな」
「俺も出場してみようかな……」
街の至るところに張られている貼り紙。
カサンの街は、いや、どの国の街でもおそらくは話題になっているだろう。
世界武道大会参加者募集の貼り紙に。
貼り紙にはただ強き者を求めるとだけが記載されていた。
魔族のことは何も記載はされていない。
「おい、(魔王の)娘? ミリベアス、お前は何も聞いていないのかよ?」
街の建物に貼ってある貼り紙を見たあと、レイフォンは隣に立っているミリベアスに尋ねた。
「知らないわよ。わたくしは最近は(魔国には)帰っていないのだもの」
「帰れよ」
「嫌よ。今はこっちにいる方が楽しいもの。あと、これはたぶんお父様の思いつきだと思うわよ。お父様って結構自由な性格だから」
なるほど、だから娘も、とレイフォンはミリベアスを見ていた。
「何よレイフォン? わたくしに惚れた?」
「違う! お前のその性格は父親譲りかよって思っただけだ」
「ふーん、それで? レイフォンは参加するのかしら? 世界武道大会に?」
気にする様子もなくミリベアスはレイフォンに尋ね返した。
「いや、面倒だから俺はパス。だけど……アシュがな……出場する気満々なんだよな」
「アシュリーなら余裕で優勝するんじゃないかしら?」
「余裕かはわからないけど、三位までに確実に入るだろうな……」
レイフォンは不満げな表情を浮かべていた。
「何が気にくわないのよレイフォンは?」
「あいつは……あいつはウェスタリアの国の人間だから、予選に参加するには国に戻らないといけないんだよ。それが面倒なだけだ」
アシュリーがウェスタリア王国の勇者パーティメンバーと言いそうになったレイフォン。
「ん? 別に予選はどこの国でも可って書いてあるわよ?」
「アシュはウェスタリア王国の貴族の娘でもあるからそうはいかないんだよ」
「ふーん、貴族とか人間は面倒ね」
ミリベアスの言葉にレイフォンも同感だと思った。
「ということは、そのウェスタリア王国に向かうのね? どんな国なのかしら? 楽しみだわ」
楽しげな様子のミリベアス。
「まさかお前? ついてくる気じゃないよな?」
「まさかじゃなくてついていくに決まってるじゃない? わたしくしはレイフォンの二番目の女よ」
「俺は両方認めた覚えはねぇからな?」
「ガードの硬いレイフォンもわたくしは好きよ?」
(ガードとかじゃねぇよ……)
ミリベアスと話が噛み合わずにレイフォンはため息をついた。
「面倒だ……勝手にしろ」
「言われなくてもそうするわよレイフォンっ」
ひとりで宿屋の部屋に戻ろうと歩き出したレイフォン。
すると
「待ってよレイフォンっ」
とレイフォンの腕に抱きついてきたミリベアス。
「お前! やめろって! 離れろ!」
「今、勝手にしろってレイフォンが言ったじゃない?」
「そういう意味で言ったわけじゃねぇよ!」
「まっ、どういう意味でもわたくしは勝手にするんだけどね」
楽しそうな表情を浮かべているミリベアス。
「また、アシュに俺が誤解されるだろうが!」
「そのうちアシュリーもなれるわよ。それでマリベルだっけ? あの娘がレイフォンの三番目なのかしら?」
「急に話を変えるな! つか違うし、お前も違うからな?」
最近はつっこんでばかりだと感じ、色々と面倒になってきたレイフォンは再びため息をついた。
そして
(ハーレムルート…………って何だよ! 俺はそんなのは目指してねぇし、望んでねぇ! こんな異世界知識いらねー)
またも、頭に浮かんできた言葉にレイフォンは心の中でつっこんでいたのであった。
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