Episode 106
以来を終えてイースラ王国カサンの街に戻ってきていたレイフォン。
「お前はいつ(魔国に)帰るんだよ」
「決めてないわよ? そんなの?」
街に戻ってきてもまだ、宿屋の部屋に居座っていたミリベアス。
「つか、何故お前もここにいる?」
「か、神様さんがレイフォンさんに会いたいって言うので私は……」
マリベルまでも神様(子犬)を抱いて部屋にいた。
『僕は何も言ってないよレイフォン?』
否定する神様。
「どうでもいいんだけどさ……」
「何?」
「何ですか?」
レイフォンを中心にベッドの上の左右に引っ付くように座っているミリベアスとマリベルのふたり。
向かいのベッドにひとり座っているアシュリーはジトーっとした目でレイフォンを見ていた。
「……浮気」
そして、ポツリと呟いた。
「待てアシュ! これは違う! つか、お前ら離れろよ!」
「なんで?」
「どうしてですか?」
首を傾げるふたり。
剣を取り出すひとり。
「おい! その剣はなんだアシュ! 今すぐしまえ!」
「ん?」
こちらも首を傾げたアシュリー。
「決まってるじゃない? 斬るためよ?」
「な、何をだよ?」
「決まってるじゃない? 目の前の浮気男よ」
レイフォンを見つめるアシュリー。
『修羅場♪ 修羅場♪ レイフォン修羅場♪』
レイフォンのピンチを楽しそうに見ながら歌をうたっている神様。
(こいつ……)
「ワォーン」
自分はただの子犬ですアピールをする神様。
「レイ? 何をよそ見しているの? 死にたいの?」
「レイフォンは浮気をしたの?」
「レイフォンさん、最低です」
他人事のように話すふたり。
「まてまてまて! よくよく考えたら俺だけが責められるのはおかしいだろう? こいつらが勝手に付きまとってるだけでーー」
「(戦いが)終わったら……そうやって、わたくしをポイなのね……レイフォンは……」
「レイフォンさんは私をあんなに……(怒ったり)したじゃないですか? あと……(依頼で)守るって……」
よそよそと悲しむふりを見せるミリベアスと後半恥ずかしそうにモジモジとしだしたマリベル。
「レイ?」
誤解を強めるふたりの言葉と様子に、久しぶりの目が笑っていないアシュリー。
「お前らは大事なとこが抜けてるだろうが! つか、本当に俺から離れろよ!」
レイフォンはふたりの肩を掴み離そうとした。
しかし
ムニュ ムニュ
柔かな感触を両手で感じたレイフォン。
おかしい、レイフォンはそう思った。
「あら? レイフォンって大胆なのね?」
「あっ、あっ、あっ……」
うっすらと笑みを浮かべるミリベアスと顔を真っ赤にして口をパクパクとさせるマリベル。
「……そういうことなのね……やっぱりレイは大きな胸が好きなのね……」
顔を俯かせて話すアシュリー。
「ま、待て! ご、誤解だ! 誤解ですアシュリー様……」
ムニュ ムニュ
再びの柔らかい感触。
「あら……」
「あっ……」
『レイフォン? その体勢じゃ全然説得力がないよ?』
レイフォンは左右ふたりの豊満な胸を掴んでいた。
言い訳できないレベルにしっかりと。
そして
剣を振りかざすアシュリー。
レイフォンから瞬時に離れる左右のふたり。
「あの世でも元気でね……さよならレイ……死ねぇえええ!」
レイフォンが意識を失う直前に頭に浮かんできた言葉。
ラッキースケベ
ラッキーでもなんでもないとレイフォンは思いながら意識を失ったのであった。
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