Episode 105
魔王城。
そこには王座の椅子に座る楽しげな表情を浮かべた魔王の姿があった。
「レギアスよ!」
「はっ! いかが致しましたか魔王様?」
すぐに返事をして魔王の前に膝をついた腹心レギアス。
「うむ。我輩は少し面白いことを考えたのだ」
「面白い、ことでございますか?」
「そうだ。我ら魔族から選抜した者と人間から選抜した者とで戦わせる。どうだ? 面白そうだろレギアス?」
「はぁぁ……」
唐突に言われた魔王の言葉に内心、意味がわからないと思っているレギアス。
「そうだな……六対六がいいだろ。そしてもしも、人間側が勝利した場合は我ら魔族は100年間は人間達の暮らす地域には攻め込まない。どう思うレギアス?」
機嫌は良い魔王にさっぱりわからない、とは言えないレギアス。
「そ、それは面白い考えでございます」
「そうであろう? ではすぐに人間の国々に通達を出すのだレギアス!」
「あ、あの魔王様? 我ら魔族が勝利した場合はどうなさるおつもりですか? それにいつ行うのですか? 魔族からは誰を選ぶおつもりですか?」
流石に説明不足だと思ったレギアスは恐る恐る魔王に尋ねた。
「うむ。我ら魔族が勝利した場合は即刻に人間達の国々に攻め込む。開催は半年後。魔族からは……適当に若い連中から選べ。結果を残した者には現在空いているふたつの将軍の座を与えるとでもいっておけ。細かいことはレギアス、お前に任せる」
「か、かしこまりました魔王様」
結局は自分が手配するのかと、ため息をつきたい気持ちを抑えるレギアスであった。
(自由すぎる……まさに父娘……)
レギアスは魔王の娘、ミリベアスを頭に浮かべていた。
ーーーー
魔王の考えた提案が人間の国の王達に手紙で届いたのは翌朝だった。
人間と魔族六対六の勝負。
開催は半年後。
場所は北の地域に近いの誰も暮らしていない地(地図同封)。
会場は人間側で準備すること。
開催までの期間は魔族は人間の地域に手出しはしない。
人間側が勝利した場合は100年間は魔族は人間の地域には攻め込まない。
魔族側が勝利した場所は即攻め込む=滅ぼす。
拒否権はない、そんな手紙が送られてきていた。
各国の王達は自国内だけでは判断が難しいとして、王同士で集まり話し合いをすることが決まった。
話し合いが行われた場所は小さな中立国ジャリック。
どの国からも今回の魔族からの条件を拒否する意見はでなかった。
いや、現状を考えればできなかった。
話し合いは三大国の王を中心に行われた。
そして、人間側の六人中三人は三大国の各勇者が戦うことが決まった。
残り三人も三大国の勇者パーティメンバーからとの話になりかけたのだが、それを反対したのは三大国以外の国々の王。
通常であれば三大国の意見に従うのだが、今回は自分達の国の命運がかかっているのだ。
はい、賛成とはならなかった。
その結果。
この中立国ジャリックにて人を集めて世界武道大会を行い、その上位3名を人間側の代表者とすることが決まったのであった。
三大国の王達はどうせ、自分の国の者(勇者パーティメンバーなど)が勝利し選ばれるだろうと考えていた。
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