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Episode 10

 向かい合うレイフォンとアシュリーのふたり。


 馬車は女性の従者が気をつかってか少しだけ離れた場所で待機している。


「どうしてレイは遅れたのよ!」


 口を尖らせて少し責めるような口調のアシュリー。


「もしかしたら……もしかしたらだけど、もう二度と私に会えなかったかも知れないのよ? もしかしたらだけど……」


 アシュリーの声のトーンは少しづつ下がっていった。


 口は尖らせたままだ。


「もしかしたらが多いな……つか、俺に何も言わなかったアシュも悪いだろ?」


 やれやれといった表情のレイフォン。


「ごめん……」


 レイフォンに対してアシュリーは素直に謝った。


「いや……俺も遅れて悪かった」


 素直なアシュリーにあれ? っと意外な感じを受けながら謝り返すレイフォン。


「まっ、そのあれだ……アシュの事だから大丈夫だとは思うけど、これ、持っていけよ」


「突然何? ん? 綺麗な赤色……これは?」


 レイフォンは頭をかいたあと、アシュリーに神様に貰った赤いペンダントを渡した。


 赤いペンダントを受けとり首を傾げるアシュリー。


「お守りだ。その……たまたま見つけてだな、それでなんとなく買っただけの物だ」


 再び頭をかいて嘘を交えて答えたレイフォンの表情は照れくさそうだ。


「ありがとう……レイ」


 ペンダントを抱き締めるように両手で持ち、嬉しそうな表情を見せたアシュリー。


 その表情、笑顔は美しく、レイフォンは見とれてしまっていた。


「どうしたのよ? レイ?」


「いや……何でもない」


 ぼーっとしているレイフォンにアシュリーは尋ねるが、アシュリーに見とれてしまっていた、とは言えないレイフォン。


「ほら、俺もアシュと同じペンダントを持ってる」


 誤魔化す為かレイフォンはアシュリーにもうひとつの青いペンダントを見せた。


「色違いのお揃い、なの?」


「た、たまたまのたまたまだ!」


「ふふっ、そう」


 嘘まるまわかりで動揺するレイフォンがおかしくて笑ってしまうアシュリー。


「そ、そうだよ!」


「そう言う事にしておくわよ。レイ」


「だから、これはーー」


「レイ?」


 楽しそうな表情のアシュリーにレイフォンが誤解だ、と言葉を返そうとした時、真剣な表情に切り替わったアシュリーはレイフォンを見て話しかけた。


「何だよ?」


「私は今から王都に行って、正式に勇者様のパーティーメンバーとなります」


 急にいつもと違う表情と雰囲気、話し方をするアシュリーにレイフォンも真剣な表情を見せる。


「……そうだな」


「そのあとはおそらく、私は勇者様達と魔王討伐の為、魔族の国に向かいます」


「ああ」


「周囲の人々も私もそうですけど、私達は魔王には負けない、勝てると思ってるでしょう……しかし、実際にはそうだとは限りません。私達人間はこの100年間まともに魔族と戦った事がありません。魔族がどういった存在なのかも知りませんし、わかりません。未知数なのです……」


「……」


「なので、いつ魔王を倒して帰ってこれるかもわかりません。もしかしたら一年後、三年後、五年後かもしれません。それに絶対に魔王を倒せる保証などはどこにもありません」


「……」


 いつも自信満々ポジティブ思考のアシュリーだが、今のアシュリーは真剣な表情でネガティブ思考に話している。


 それに対してレイフォンは黙って聞いていた。


「だからね……もしも……もしも私が死んでもーー」


 話し方が戻ったアシュリーはやわらかな笑顔の表情でレイフォンに話しかけはじめた。


 しかしーーアシュリーが"死"と発した時だった。


「死ぬとか言うんじゃねえ! お前は死なない! 死なせない! だから……もしもでも死ぬとか言うなよ……アシュ」


 レイフォンは大きな声を出しアシュリーの言葉をさえぎった。


 同時にレイフォンはアシュリーを抱き締めていたのであった。


「死ぬとか言うなよ……お前は死なない……絶対にな……」




お読み頂きありがとうございました。

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