武神流5〜新弟子綾乃入門〜
「櫛名田真琴。只今帰着......。」
「真琴っちゃーん!」
「あ、綾乃!もう来たのか?」
「うん。早速今日からなの。よろしくね!」
「あ、おほんっ!今日は、新弟子を紹介する。片平綾乃さんじゃ。皆の者。護身術初心者ゆえ。手柔らかに頼む。」
「綾乃ちゃんかー。可愛いー。俺、山本祐樹。よろしくね。」
「俺、寺田翔太。よろしく。」
「か、片平綾乃です。よろしくお願いします。」
「俺、辻本......。」
「これ、いい加減にせい。ここは合コンの場じゃないぞ。」
「さて、新弟子を迎える度、恒例ではあるが、武神流の心得を皆で復唱しよう。」
一同「はいっ!」
「一つ、武道家たるものいつ如何なる時も、己を制し自己の研鑽に努めること。」
「一つ、武道家たるものいつ如何なる時も、己を制し自己の研鑽に努めること!」
「一つ、例え相手が武器を持つ場合も、徒手空拳を厳守すべし。」
「一つ、例え相手が武器を持つ場合も、徒手空拳を厳守すべし!」
「一つ、弱きを助け、強きを挫くことを本懐とすべし。」
「一つ、弱きを助け、強きを挫くことを本懐とすべし!」
「一つ、如何なる時も手加減を忘れず、罷り間違えても相手の命を奪うべからず。」
「一つ、如何なる時も手加減を忘れず、罷り間違えても相手の命を奪うべからず!」
「最後は、綾乃さん。君が読んでくれ。」
「は、はい。一つ、いつ如何なる時も己を見失うことなかれ。」
「一つ、いつ如何なる時も己を見失うことなかれ!」
「以上が、武神流五箇条じゃ。」
「如何かな?綾乃さん。」
「は、はい。難しいけど、とても大切なことだと思います。」
「うむ。宜しい。では、祐樹、綾乃。序の形を演武してくれ。」
「では、綾乃さん。皆と並んで見ていなさい。」
「はい。」
「祐樹、演武でも加減するでないぞ。」
「わーったよ。」
「いざ尋常に始め!」
斜め袈裟の手刀から、肘、掌底へと続き、それを受けては交わし、受け、引きと、流れる様な身のこなしで、攻め側も受け側も無駄な動き一つ無く、入れ替わる、実戦的な演武である。これには、綾乃も目を丸くして見つめていた。
「それまで!さて、如何かな?綾乃さん。」
「すっごいですー。こんなの真似できないですよ。」
「彼らとて、最初はそう思ったのじゃ。数え切れないほどの反復練習の賜物じゃ。のう?」
「祐樹なぞ、最初は転んでおったな。」
「綾乃こそ、実際に度突いてたじゃないか。」
「ははははは。」
「止めんか、恥ずかしい。」
「ふふふ。」
「まあ、追い追いで良い。心構えや、身のこなしなど、休んでいる時も。先輩達の身のこなしなどを見つめながら。覚えるのじゃ。良いな。」
「は、はいっ!頑張ります!」
「真琴、綾乃さんを見てやってくれ。」
「はい。」
「よろしくお願いします。」
「ほ。礼儀は正しいようじゃの。」
「お前が習った方が良いんじゃねえの?礼儀。」
「な、なんじゃと!」
「お、やるか?」
「喝ッ!」
「お主達は儂と、組手じゃ!」
「ヒィ〜!」
こうして、綾乃入門初日は、更けて行くのだった。
to be contined.......