訪問者
ゴンッゴンッと、壁を叩く音が聞こえる。寝てしまった事に気付いた直ぐ後、事態を察して血の気が引いた。
どうしよう。取り敢えず隠れる場所を探すが、小さな箱があるだけで何も無い。
もうどうしようもねぇ、たいした事の無い人生だ。どうにでもなれ。
そう腹を括ると、不思議と力が出てくる気がした。口を開けて声を出す。
「誰だよ。」
裏返った情けない声が出た。不思議と力が出たのは気のせいでした。
キマリが悪いので、恥ずかしまぎれにもう一度声を出す。
「誰だってんだよ!」
言った瞬間、冷や汗が出た。
ここで今、生意気な態度をとってしまったら相手からの心象が悪くなる。
これからの境遇を左右する時だってのに、何てことをしてしまったんだ俺は。謝らないと......。そう思って口を開いた瞬間、
「自分も閉じ込められてて、今出てきた!」
軽やかで、でもしっかりと芯の通った声が壁の向こうから聞こえてきた。
想像していたのと違って拍子抜けしてしまった。
そして、 自分と同じ境遇の人間が居たことに安堵を覚える。
「外に出れなくて困ってるんでしょ?壁に赤いランプが光ってるから、それ押して!」
なるほど、先程まで真っ暗だった部屋の奥に視線を移すと、赤いランプが光っている。
ランプを押すと、鈍い摩擦音と共に壁の右下の部分が地面にめり込み、人一人が通れる出口が出来た。
密室からの脱出クリア。ただしヒントを得てからのの脱出。及第点には届かないな。
自然と、軽く笑みがこぼれた。声の主に礼を言おうと出口に目を向ける。
開いた出口の眩しさに目を細めて見たその先には、
希望に満ちた目で、真っ直ぐ自分を見つめている少年がいた。




