雨
朝か……辺りはまだ暗い、だけどユウが起きてるって事は朝なんだ。
でも、あともうちょっと寝かせて、疲れてんだよ……
「無能だと思うなら有能になるための努力をする!」
寝ぼけ眼で声の発信源に視線を向けると、ユウが何かを投げ付けてきた。
「おうふっ!」
なん、なんだこれ。木の棒?杖?
「キヨ.....じゃなかった、清一先輩、僕剣道やってるんで、よかったら教えますよ。」
「は、はぁ.......」
剣道やってた事は昨日聞いたが。何故に敬語?いやこだわらないタイプだけど.......コレで正しいんだろうけど......なんか違う気がする。怯えた目で見られてるし。
「さっきは言い過ぎました。これから危険な事も多いと思うので、こんな事出来るのも今ぐらいでしょうし、教えましょうか。」
取り敢えずお願いしとく。
「有難いです。お願いします。
んで、なんかよそよそしく無いですか?」
昨日の誤解がまだ完璧には解けてないらしい。ホモじゃねーよ俺は。
バシッ、ドシッ。
「キヨ!しっかり握って!」
先程のよそよそしさは何処とやら、鬼師範と成り果てたユウは、何と言うか怖かった。そして生き生きとしていた。
「カハッ。」
面と思い避けた瞬間、胴に棒を当てられる。手加減されてるのだろうが、微妙に痛い。
だがそうしてるうちに、確実に何本かは反応出来るようになっていた。
「握りすぎ!そんなんじゃ意味無いよ!素振りやり直し!」
1時間くらい過ぎ、雨が降り始めるまで練習は続いた。
「いや~、意外と才能あるかもよ?キヨ。」
ビスケットを食べながらユウが言う。イキイキしてんなこいつ。
「雨止みそうにないな......。」
素振りをしながら言う。強くならねぇと。実際戦うとなると、武器っていったらこれしかねぇもんな。
あとあるとすれば.......ん?
「ユウ、ちょっと炎だしてくれ。」
えっ?という顔を一瞬したが、すぐに従ってくれた。
ユウが手に力を入れるとボッと炎が出て、部屋が照らされる。炎が出る瞬間をよく観察する。
「もう一回お願い。」
ボッと炎が出るその前の一瞬、腕に炎の筋が一瞬這っている。0.5秒程だ。
何度も頭の中で繰り返し、頭に焼き付ける。
「炎を出し続けられる時間と威力、次出す迄のラグとか、色々教えてくれない?」
生き残る為の鍵は出来るだけ集めないと脱出できないからな。まずは鍵集めだ。
雨は止まない。激しくなるばかりだ。こんだけ降るなら川なんて必要無かったかもしれんな……。
「ユウ、あと3日経っても食糧が見つからなかったら、この場所を一旦離れる。いいよな?」
「もちろん。」
不安になってきた。本当に食糧はあるのか?
周辺を隈なく探したが、見つからないという事は、もっと他人の領域であるかもしれない所に侵入しなければならないという事だ。
探せば探すほど、危険は増して行く。
会う人間がユウみたいな奴だけだとは分からない。誰か、まだあった事も無い知らない相手も焦ってるはずだ。何をしでかすか分からない。