子どもと木馬
子供は真夜中、木馬にまたがり星の輝く夜空へ翔びたつ。
木の馬がぎしりと身を浮かすのは乗った子供が、
「動け!」
と言った時だけだ。
子どもが馬のたずなを引くと、木馬はヒヒンといなないて星輝く夜空に翔びたつと言う。
ある日、夜空を見上げた男が空駆ける木馬を見付けた。
「これはどうしたことだろう。乗っているのは向かいの家の坊やじゃないか?」
その男、慌てて向かいの家へと駆け込んで、
寝ていた夫婦をたたき起こし、
子ども部屋を確認したが、
子どもはベッドですやすや寝ていた。
木馬もゆらゆら揺れるばかりで、
鼻じらむ夫婦を背に、男は首を傾げるしかなかった。