最前線は今
激しい轟音が轟く東京、ここは最前線の東京軍事司令部。
「何だって、もう一度言ってくれ」
司令官の仰木は報告に来た兵に向かって叫ぶ。
「最前線のアメリカ軍が全滅した模様、間も無く敵軍、第二防衛ラインに到達します」
轟音に負けない大きさで言った。
「クソっ、アメリカがやられただとぉ、直ちに増援を派遣せよ」
「了解、直ちに」
「あっちょっと待て、偵察部隊はどうなった?」
すると、兵は首を振った。
「おいっこれで何回目だこん畜生ッ、また全滅かよ」
謎の軍隊が攻めて交戦を開始した時から各部隊との無線による遠距離通信がとれないでいた。
したがって今まで有線接続でしかも音声のみで各部隊と連絡していたのだ。
今回、派遣された偵察部隊の任務は敵の写真撮影及び情報収集であった。
「やはり偵察機はダメでしたか」
作戦本部長の上野宮は残念な顔で仰木に言う。
「ああ、地上部隊でもダメだったんだ、今回は予定された帰還日を大きく上回っているから絶望的だと」
「でも可能性はありますよ」
上野宮はにこやかに言う。
「んな馬鹿な言葉ありますか?」
「可能性を信じましょう」
「だといいですな」
こうして二人はその場をあとにした。
―――成田国際空港―――
軍が戦闘機用として利用することになったこの空港。
24時間体制で出撃する戦闘機をサポートしていた。
「おい、これを見てくれ」
管制官が叫んだ。
「オイオイ、どうした?疲労でおかしくなったか?」
冗談交じりで言いながら近づく。
「いいから見てくれ」
「ん?これってまさか戦闘機か」
「まさかあり得るわけないだろ、もう12時だぜ、こんな真っ暗のなか来るわけねえよ」
とその時管制塔の無線が鳴る。
「こ、ち・・・ら・・・空軍・・て・・い・・」
雑音と共に声が聞こえる。
「こちら成田国際空港、無線の周波数がずれている、コードを合わせろ」
すると直ぐにクリアな音声に変わった。
「周波数確認。こちらは空軍第9偵察部隊」
「マジかよ」
「すげー」
管制塔内ではすでに盛り上がっていた。
「敵の攻撃により被害甚大、7機中6機墜落、当機はコンピュータルームに多大なダメージを追った模様。第5操作パネルが言うことをきかない、これより緊急着陸体制に移行する」
「了解、幸運を祈る」
一気に管制塔は静まり返った。
目の前に巨大な機体が入ってくる。
「マズイ、速度が速過ぎるぞ」
急いで無線に呼びかけたがもう手遅れだった。
耳を痛めるような爆音と共に炎の渦が滑走路一面に立ち込めていた。
「そうか・・・墜落したか」
司令官の仰木は愕然としていた。
「はい・・・先ほど成田からそのような連絡が」
「分かった、下がっていいぞ」
「はぁー」
仰木は長いため息を吐いた。
翌日の朝、ニュースがやってきた。
「しし司令官、墜落した偵察機から画像データやその他もろもろのデータの復元が完了しましたッ」
「ほ、本当か」
「ハイッ」
こうして謎の軍隊の詳細を知る術が見つかった。
この拡大し続ける軍に勝つ術はあるのか?
続く。