↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空から始まる2度目の青春  作者: 紺野 翼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/84

魔法具というもの


午後の授業。


教室に入ってきた教師が、教卓の上にいくつかの道具を並べた。


「今日は魔法具についてだ」


レンは並べられた道具を眺める。


見たことのあるものもあれば、初めて見るものもある。


「魔法具というのは、魔法適性がない人間でも扱えるように作られた道具だ」


教師が、そのうちの一つを手に取る。


「もちろん、魔法適性がある人間が使えば、より複雑な操作ができるものもある。だが、基本的には誰でも扱えるように作られている」


「誰でも……」


レンは少しだけ身を乗り出した。


魔法適性がない。


そう言われたばかりのレンにとっては、気になる話だった。


教師が道具に触れる。


次の瞬間、淡い光が教室を照らした。


「例えばこれは照明用の魔法具だ」


周囲から小さな声が上がる。


「内部には魔法陣が組み込まれている。そして、魔鉱石から取り出した魔素を利用して、その魔法陣を動かしている」


レンの視線が、照明器具へ向く。


魔法陣。


魔素。


魔鉱石。


これまで別々に聞いていた言葉が、一本の線で繋がった気がした。


「つまり……魔鉱石がエネルギー源で、魔法陣がそれを使って動かす仕組み、ってことですか?」


教師が少し考えてから頷く。


「例えとしては近いな」


レンも頷いた。


元の世界でも、電気そのものを作ったり扱ったりできなくても、家電を使うことはできた。


それと似ている。


「じゃあ、魔法適性がない人でも、魔法を使ってるみたいなことができるんですね」


「そういうことだ」


その言葉を聞いて、レンは少し嬉しくなった。


魔法適性がない。


それでも、この世界の魔法技術に触れる方法はある。


しかも、それは特別な才能を持った人間だけのものではない。


教師が別の魔法具を取り出した。


「これは実際に触ってみるといい」


生徒たちが順番に触れていく。


そして、レンの番になった。


「やってみます」


魔法具に手を触れる。


――カチッ。


淡い光が灯った。


「……ついた」


「そりゃそうだろ」


横からアルトが笑う。


「普通の魔法具なんだから」


「いや、そうなんだけどさ」


レンは少し笑った。


魔法適性がないと分かったばかりだったからこそ、余計に嬉しかった。


自分でも、この世界の魔法に触れられる。


それだけで十分だった。


けれど。


レンの視線は、まだ魔法具から離れない。


「先生」


「なんだ?」


「これ、中の魔法陣って見られますか?」


「内部構造か?」


「はい」


教師は少し意外そうな顔をした。


「まあ、授業で扱う範囲なら問題ない」


そう言って、魔法具の一部を外す。


中には、小さな板状の部品が入っていた。


その表面には、細かな線が複雑に刻まれている。


「これが魔法陣だ」


レンはじっと見つめた。


線が繋がっている。


分岐している。


一部分だけ形が違う。


ただの模様には見えなかった。


まるで――


「……プログラムみたいだ」


「何か言った?」


ユナが隣から覗き込んできた。


「いや、前の世界で似たようなものがあったんだ」


「ふーん」


ユナは魔法陣を見て、少し首を傾げる。


「私にはよく分からないや」


「俺にもまだ分からない」


レンは苦笑した。


けれど、分からないからこそ気になる。


魔鉱石から魔素が供給される。


魔法陣が、それを制御する。


そして、その結果として魔法具が動く。


なら。


それぞれの関係を理解できれば、もっと色々なことが分かるかもしれない。


授業が終わる。


レンはリーテルを開き、新しくメモを作った。


『魔法陣』


『魔素』


『魔鉱石』


『魔法具』


四つの言葉を並べ、その間に線を引いていく。


まだ分からないことだらけだ。


それでも。


魔法が使えないから終わり、ではない。


むしろ、自分には別の入り口があるのかもしれない。


「レン」


顔を上げると、フィーリアが立っていた。


「帰る?」


「ああ。ちょっと待って」


レンはメモを閉じる。


「今日、結構面白かった」


「魔法具?」


「うん」


フィーリアは少し考えてから言った。


「レンも、使えるようになるかもしれない」


「魔法?」


「うん」


「……そうかな」


「分からないけど」


フィーリアはいつものように、淡々と答えた。


それから少しだけ間を置いて。


「レンなら、何か見つけると思う」


「……そっか」


レンは笑った。


魔法適性がない。


その事実は変わらない。


けれど。


魔法を使う方法が、一つしかないとは限らない。


そう思えるだけで、少しだけ前向きになれた。


二人は教室を出る。


レンの頭の中には、今日見た魔法陣と、そこを流れていた魔素のことが残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。