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帝都吸血奇譚  作者: 彗
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「お母さん!お母さん、、、。」

黒い人影が消えた部屋で少年は母に駆け寄る

返り血が飛び散った部屋で、女性が倒れていた。

血飛沫を浴びた少年が、赤く染まった女性に懸命に叫ぶ。

赤い女性は、少年の頬に手を震えながら添える。

「紫遠、、、。どうか、幸せに、、、。」

「やだ!!お母さん!!」

静かな部屋で、少年の声だけが響いた。

『お母さん!!』

自分の叫び声で目を覚ます。

自分の部屋だった。

そこに、母はいない。


 ひとりだった



とある夜、最近流行りのレンガでできた廊下を、一人の青年が歩いていく。

その青年は、着物を緩く纏っており、肩にかけられた羽織が歩くたびにゆらゆらと揺れる。

顔は仏頂面で、眉間に皺が寄っていて、どこか緊迫した面持ちだった。

そんな彼が向かっているのは、この建物の一角にある書斎。

そこには、彼がいるはず。


部屋の前についた俺が扉を叩くと、眼鏡をかけた青年が顔を出した。

「あれ、一条?どうしたの?」

何も分かっていなさそうな相棒の様子に、俺は、ため息をついた。

「斎場、今何時か分かっているのか」

「え、今?ちょっと待ってね」

そう言って斎場が部屋に引っ込んでしばらくして

「もうこんな時間!?」と、素っ頓狂な声が響く。

なんであいつは時計を見ないのだろうか、、、。

それからバタバタとした音が聞こえ始め、俺は呆れたように言った。

「なんで時間通りに集まれないんだ」

「ごめん。朝方に始めたから夜には終わるつもりだったんだけど、、、」

「今度は何の研究をしてたんだ?」

「えーっとね、今回は吸血鬼の血液の成分について調べてたんだ。吸血鬼って基本吸血鬼からしか

生まれないんだけど、片親が人間でも生まれてくるんだよ。大抵の吸血鬼は片親が人間のパターン

で、純血の吸血鬼は稀みたい。だから半吸血鬼の血液と純血の血液の成分から、より受け継がれやす

い特徴を表にまとめて分析して、、、」

「分かった。分かったから、もう準備をしろ」

普段はおとなしい斎場だが、研究の話をしだすとどうも止まらなくなるタチがある。

斎場の研究は実際、役に立つものばかりだが、細かいところはよくわからない。

なので、最近は結果だけを聞くようにしている。

斎場は、はっとしたように部屋に戻ると、準備を整えて出てきた。

「お待たせ。いつも呼びにきてくれてありがとう」

「いいから行くぞ」

「うん」

二人が出て向かった門の先には、ため息をついている女性とつまらなそうな顔をした青年が待っ

ていた。

二人は斎場に気がつくと、呆れ顔をした。

「あ、やっと来た」

「もおー、先輩、研究は程々にしてくださいよー」

「ごめんね。つい夢中になっちゃって。」

斎場は申し訳なさそうに、頭を掻いた。

「全員、準備はいいな。出発だ」

四人は誰もいない大通りを歩いていく。

ここは昼間であればそれなりに人がいるのだが、夜になると、人気のない不気味な街に変わる。

俺や斎場はもう何年も見てきて慣れたが、まだ新人の篠原には怖いらしい。

「ここ、相変わらず不気味なんだよなあ。」

俺と斎場の同僚である町田がふと、こぼす。

町田も未だに慣れていないらしい。

町田はあまり暗い所が得意ではなかった。

「まあまあ、頑張って早く終わらせましょ!」

一番後輩の篠原が夜の闇に負けない明るい声で返すと、斎場が俺に問いかけた。

「今日の任務はなんだっけ?」

「今日は吸血鬼の目撃情報があった館に行く。そこは昔殺人事件があった館で、今は廃墟になっ

ていたのだが、どうやらあいつらの根城になったらしい。」

「殺人事件か、、、。確か、一人暮らしの女性が殺されたんだっけ。」

「あー、、、。今も解決してないやつだろ?ほんと、誰の仕業なんだろうな、、、。」

「案外、吸血鬼の仕業だったりして?」

三人で話していると、黙々と歩いていた俺は、ふと近くの路地裏に入った。

「あれ、どこ行くの?」

「、、、こっちが近道なんだ。ついてきてくれ。」

「一条先輩、よくこんな道知ってましたね!この辺の出身とかですか?」

「まあ、そうだな。」

「へえー!じゃあここのどこかが、一条先輩のお家なんですね。」

篠原の明るい返事に、俺は表情が妙に曇ったのを感じた。

家のことになると、どうも昔のことを思い出してしまう。

「もうそろそろ着くぞ。全員、準備しろ。」

遠くの方に古びた洋館が見え始める。

昔は質素ながら美しかった洋館は、今はどこか不気味な雰囲気の漂う館となっていた。

分かってはいても、目にするとやはり辛いものがある。

俺が声をかけると、全員が武器を手に持った。

一条は刀。斎場も弓矢。町田は刀で、篠原は荷物を構える。

「いいか。町田はここで篠原と待機。俺と斎場は建物の中へ。」

「了解です!」

「分かった」

「了解」


彼らは建物の中に入っていく……。


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