66話 進路
星がデビューして2カ月が過ぎようとしていた5月の後半の月曜日。
昼休み、いつもと変わらず祐樹は、前田晃と北村幸一と中庭のベンチで昼食を食べていた。
「祐樹、明後日3者面談あるやんかぁ。どこの大学に行くか決めた?」と前田晃が話す。
「そうだね、一応決めたよ!」
「どこにするんだよ!」
「慶応!」
「えっ!けいおー?」
「マジで?行けるの?」
「わからんけど、もう少し頑張れば行けるかもって先生が・・・」
「祐樹はなんだかんだ言っても頭良いからなぁ」
「慶応かぁ」
「かわいい子いっぱいいるんやろなぁ」
「うらやましい・・」
「幸一は?」
「俺は就職して親孝行するわ!」
「幸一の家は兄弟多いし大変やからな」
「そう!だから少しでも早く働いて親を助けないと!」
「それに進学ってお金ないしなぁ」
「ほんまに、幸一は親孝行だぁ」
「そう言う晃はどこ行くんだよ?」
「家はゆくゆくは家の商売継がなあかんし、機械系の専門学校に行くつもり」
「晃も親孝行じゃん」
「まぁ小さい頃から親から言われてるしな」
「なんかマインドコントロールっていうやつ?」
「はは、親に仕込まれてたんやな」
「そうなるな」
「そっかぁ、みんなバラバラになるな!」
「仕方ないけどな!」
「まぁ3人は腐れ縁と言うことで、卒業してからも頼むな!」
「そうだなぁ」
「そうだ、祐樹は根元さんと連絡とったか?」
「取ってない」
「そっかぁ」
「もう星は俺なんか手が届かない人って感じだしなぁ」
「そうだなぁ」
「CDもいきなりミリオン近くになってるしなぁ」
「えーー!と言うことは、やっぱりHIKARIさんって根元さんだったんやな」
「ああ、幸一には言ってなかったな!」
「そうかな?って思ってたけど、学校ではあの根元さんがアイドルなんてってみんな別人に扱いになってるからな」
「早苗さんから教えてもらって確信したんだ!」
「そうなんだ」
「それに星は電話番号も変えてしまってるから、もう連絡しようがないし!」
「えっ!早苗さんも知らないの?」
「そうみたい、自宅の電話番号はわかるみたいだけど・・・」
「もう過去の人には会わない方が良いって思ってるのかも知れないし、今更連絡取ろうとしても迷惑だしな」
「そっかぁ」
「なら新しい彼女見つけないとあかんな!」
「しばらく恋愛は良いかな?」
「良い若いもんが何言ってるんだか?」
「・・・」
「その前に、幸一君・・・晃君・・・」
「2人の彼女を見つけないとな!」
「そうだったぁ~」
幸一と晃は顔を見合わせた。
「まっ!何とかなるか?」
「何がなるんだよ?」
「そろそろ戻るか?」
「はぐらかしやがって!」
「おー戻ろ!戻ろ」
「幸一まで・・・」
3人は笑いながら近くの入口から各々の教室に戻っていった。
帰宅後、祐樹とお母さんが夕食を食べていると
「祐樹、明後日3者面談だよね」
「そうだよ」
「ところで進路って、お母さん聞いたことないけど決めてるの?」
「えっ!そうだっけ?」
「慶応!」
「慶応って!あの慶応?」
「そう!」
「あの慶応」
「祐樹が慶応ボーイってかぁ?」
「変?」
「そう言う意味じゃなくて、凄いなって誉め言葉だよ」
「慶応の経済学部を志望するつもりだよ」
「へー将来起業でもするつもり?」
「そう」
「マジで?」
「あんた、起業って大変だよ!」
「解ってる!だから経済学から学ぼうかと思って」
「どんな会社を起業するつもり?」
「IT関係かな?」
「お父さんも定年退職したら入ってもらおうかと思って!」
「あらそうなの?」
「まー今のところまだ思っているだけだから」
「とりあえずわかった。2時半だよね」
「そう!」
「お母さん、仕事帰りに行くから」
「うん、ありがとう」
その頃、星はプロダクションの事務所の会議室にこもっていた。
そこに社長秘書の二宮美香が事務所に戻ってきた。
「ふーう、外回りはやっぱり疲れるなぁ」
そう言うと事務所の会議室のドアを開けた。
「あら星ちゃん帰ってたんだぁ」
「あっ!美香さんこんばんは」
「美香さんも今帰りですか?」
「そうなの、今度のイベントの打ち合わせで東京まで行ってたの!」
「そうなんですね、東京までって大変でしたね」
「朝一に出て、打ち合わせしてそのままとんぼ返り・・・」
「やっぱり社員が少ないのって大変」
「そうですね。美香さんや社長が自ら動いてますからね」
「ほんと!そう」
「星ちゃんは勉強?」
「はい!今度中間テストがあるからその勉強で・・・。」
「星ちゃんも大変だよね。アイドルと学校の掛け持ちだもんね」
「自分が選んだ道なので・・・。」
「でもあと一年で卒業でしょう?」
「卒業後がどうするつもりなの?アイドル一本?」
「それを今考えてるんですが、通信制の大学があるみたいで、そこを一旦目指そうかな?って思っています。」
「そんな大学があるんだね」
「そうなんです。一応慶応の通信制を目指そうかと」
「慶応かぁ。頑張ってね」
「ありがとうございます。」
「もう帰る?」
「そうですね。もう少ししたら帰ります。」
「たぶんさやかさんももう少しで帰ってくると思うので、それまで待っています。」
「そうなんだぁ」
「それなら3人で軽く食事でも行く?」
「いいですね。」
「じゃあお母さんに連絡しておきますね。」
「うん」
数分後マネージャーの新道さやかも帰ってきた。
「さやかちゃんお帰り」
「美香さんも帰ってたんですね」
「お疲れ様です。」
「星ちゃんは会議室で勉強してるよ」
「星ちゃん頑張り屋のだから」
「そうそう、この後3人で食事でもって話してたんだぁ」
「はい、大丈夫です。」
「なら10分後に出掛けましょう!」
「急いで用意します。」
さやかは会議室のドアを開けた。
「星ちゃんお疲れ様」
「さやかさん、お帰りなさい。そしてお疲れさまでした。」
「いやいや、星ちゃんがお疲れさまだよ!」
「食事の件、聞いたよ。10分後だって!」
「はい、じゃあ片付けますね」
そう言うと星は勉強道具をカバンにしまった。
「美香さん、用意できました。」
「それなら行きましょうか?」
「もう事務所に誰もいないよね」
「今日は社長も直帰で、北原さんも石橋さんも出張です。」
「なら私たちが最後ね」
「施錠して出ましょう!」
「はい」
そう言うと美香が事務所の電気を消してドアの施錠を行った。
「どこ行きます?」
「星ちゃんは何食べたい?」
「そうですね」
「イタリアンで!」
「なら駅前のこの前出来たお店に行く?」
「はい、行ってみたかったんですね」
「ならそこにしましょう!」
そう言うと3人は事務所を後にした。
第3章の始まりです。
別れてからお互いを思いながらそれぞれの道に進む奮闘を書いていきたいと思います。
引き続きよろしくお願いします。
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