62話 星のデビュー
始業式があった週の土曜日の夜、祐樹は再び発症した手の痛みからしばらくゼネレーションLIVEの配信は控えていた。
そのため珍しく家のリビングでテレビを見ていた。
「祐樹、何かあった?」と母親が尋ねる。
「えっ?なんで?」
「いつも夕食が終わったら自分の部屋に一目散に行くのに、ここ数日は寝るまでリビングにいるから何かあったのかな?って思って」
「あーいつも勉強してたけど、ちょっと最近疲れたから休憩しようと思っただけだよ」
「それなら良いんだけど、何かあるなら言いなよ!」
「うん、大丈夫だから・・・。何かあったら言うよ」
そう言うとパソコンの雑誌を読みながら時々テレビに目を向けていた。
テレビは20時になり音楽番組が始まった。
その番組はアーティストが生のステージで曲を披露するものである。
いつもはあまり見ないが、今日は聞き流す程度でテレビを見ていた。
司会者が本日の参加者を紹介する。
祐樹はあまり歌手やアーティストに興味がないため、紹介している人やグループは知らないものばかりであった。
「今日は素敵なゲストがいます。後程紹介するので楽しみにしていてください。」と司会者が紹介する。
「素敵なゲスト?」誰だろうと思いながらも興味がない祐樹。
番組が始まって数名のアーティストの曲が流れているが聞き流しているため、頭に入ってこない。
時間が20時30分頃になって、祐樹が自分の部屋に戻ろうとした時、司会者から今日のゲストの紹介の時間となった。
祐樹はちょっと気になり、誰かを確認するために立ち止った。
「それでは本日の素敵なゲストを紹介します。」
「その方は、覚えていますでしょうか?YouTubeのページ、CM曲で話題となった『HIKARI』さんです。」
祐樹は驚いた。
「えっ?HIKARIさん?」
司会者は続けて、「HIKARIさんは先週デビューされて、CDも来週にリリースされます。」
「その曲は、みなさんご存じの『希望の一歩』それではHIKARIさんよろしくお願いします。」
とステージにHIKARIが登場した。
「えっ!ちょっと待って!」
「どう言うこと?」
「星?」
そのTVのステージにいたのは前の茶髪のロングではなく、黒髪の女の子
そして化粧も薄目のメガネを外した星の姿だった?
驚く祐樹の目の前で、曲が流れた。
「間違いない。希望の一歩!」
何百回と聞いたその曲そのままだった。
HIKARIが歌いだすと、声はHIKARIの声、透き通った高い声は澄んで美声となってTVから流れている。
祐樹は足が震えた。
そのままソファーに倒れ込むように座った。
画面のHIKARI?いや、星を集中する様に見ていた。
「どうして?星が・・・。」
「星がHIKARIさん?」
祐樹は頭がパニックになっていた。
曲が終わり、司会者が話す。
「HAKARIさんはこれからたくさんの番組に出られることでしょう!」
「みなさん、応援してあげて下さいね」
そう言うとHAKARIが「よろしくお願いします。」と頭を下げた。
よく聞くとその声は星そのままだった。
その後も司会者とのトークがしばらくあったが、その内容はハニックの祐樹には全く残らないものであった。
HIKARIの歌が終わって、他のアーティストの曲に変わっても祐樹は放心状態が続いていた。
「祐樹、どうしたの?顔色悪いよ」
「あっ大丈夫!」
祐樹はそう言うと、自分の部屋に向かった。
部屋に戻って椅子に座り冷静さを取り戻すのに必死だった。
その時携帯の着信フォンが鳴った。
「晃からか?」
「もしもし、晃?」
「祐樹か?」
「今テレビを見ていたか?音楽番組!」
「あー」
「あれってHIKARIってあのHIKARIさんだったよね」
「そうだと思うけど・・・。」
「根元さんじゃなかった?」
「俺にもわからない」
「そうなんだぁ」
「自分自身も今、どういう事か整理が出来てなくて、何が何かわからないんだよ」
「知らなかったんだぁ」
「知らないも何も、本当に星か?」
「それは俺にもわからない」
「でも声もそのものだったけど・・・。」
「祐樹、どうするんだよ?」
「どうって!どうすることもできないじゃん」
「そうだよなぁ」
「また、明日話そう!」
「おー、ありがとう」
「じゃあな!」
祐樹は電話を切った。
「あっ!そうだ」
「星に電話してみよう!」
祐樹は思い切って星に電話を掛けた。
直ぐに出た。
「星?」
でもそれは「お掛けになった電話番号は現在使われておりません」って言う内容だった。
「どう言うこと?」
祐樹は何が何かわからなくなっていた。
どうすることもできない祐樹はその日はそのまま寝ることにした。
でも気になってずっと寝られないでいた。
翌朝学校では少し噂になっていた。
「昨日のテレビの音楽番組観てた?」
「観てた」
「HAKARIってこの顔みた?」
「あれって根元さんじゃない?」
「確かに似てたけどそんなことないでしょう?」
「そうだよね。まさか根元さんがそんな事しないか?」
「そうだよ」
そう言うと、みんなは納得していた。
祐樹が席に座ると
「祐樹君、おはよう」
「星の件、祐樹君はどう思う」
「何が何かわからないけど、HIKARIさんは星だと思います。」
「祐樹君、ちょっと良い?」
「はい」
そう言うと、2人は教室から出て階段の下のスペースに移動した。
「どうしたんですか?早苗さん」
「HIKARIさん、実は星なの」
「早苗さん、知っていたんですか?」
「まだ星がこっちにいる時に相談されて・・・。」
「知らなかった」
「星はね、祐樹君がHIKARIさんのこと好きだったから言えなかったみたい」
「もしデビューすることになったら、祐樹君に言うって言ってたけど、みんなとの関係が終わるのが嫌でデビューはしないって言ってたんだけど・・。」
「そのあと、お父さんのことでしょう?」
「そうだったんですね。教えてもらえなかったのは自分のせいだったんですね」
「でもどうして?今・・」と早苗が考えていた。
祐樹は星と初めて会ったときを思い出した。
祐樹がHIKARIの曲を口ずさんで、それで星が声を掛けた。
「そう言うことだったんだぁ」とわかった。
「で、祐樹君はどうするの?」
「昨日星に電話したんだけど繋がらなくて・・・。電話番号変えたのかな?」
「そうなの?」
そう言うと早苗も電話してみた。
「本当だぁ。繋がらない?」
「電話番号変えたみたい・・」
「本当にどうしちゃったの・・・星?」
読んで頂き、ありがとうございます。
星がデビューしました。
でも早苗や祐樹はその理由を知りません。
困惑する2人はどうするのでしょうか?
面白いと思って頂いたら、評価、ブックマークの登録をお願いします。




