59話 新年度
川沿いの桜の木がピンク色に色付き朝陽に照らされて輝きが増している。
その下を新しい学生服を着た新入生数人歩いている。
星が群馬に行ってから数カ月が経ち北原第一高校では新年度を迎えようとしていた。
「祐樹、起きなさい!」
「今日から学校でしょう?」
ベットで眠そうな顔の祐樹が起き上がる。
「そうだ!今日から学校だ!」
歯を磨き、顔を洗い自分の椅子に座ると、母親が朝食を運んできた。
「今日から3年生でしょう?もう少し早く起きれないものですかね」
「こればかりは直りませんね」
「早く食べて学校行きなさい」
「はーい」
そんな会話が毎日の様に続いていた。
祐樹が学校に着くと掲示板にクラスの名簿が貼りだされていた。
「自分のクラスは・・・」
「あった!4組」
「メンバーは・・・幸一と一緒か?良かった!」
祐樹が教室に入ると黒板に席と名前が書かれた貼り紙があった。
「自分の席は・・・」
祐樹が貼り紙を眺めていると、「祐樹君!」
振り向くと坂口早苗の姿があった。
「早苗さん、一緒のクラスになったんだね」
「そうだよ。一年間よろしくね!」
「こちらこそよろしく!」
「祐樹君の席は私の隣だよ」
と早苗が自分の席の隣を指差した。
「そうなんですね」
そう言うとその席に座った。
「早苗さん、生徒会長になったんだよね、すごいね」
「たまたま女性がなるってブームが来ただけだから・・・。」
「祐樹君は結局生徒会に入ってくれなかったんだぁ」
「あー、自分はそう言うのは無理ってわかってるもので・・。」
「そっか!」
そんな会話をしていると、「祐樹!おはよう!」
「幸一おはよう!一緒のクラスになったな!」
「おー!」
「あっ!坂口さん、おはようございます。」
「なんで敬語?」
「一応生徒会長なもので・・・」
「もう、普通で良いから
「では早苗さん]
「はい、それでよろしい!」
3人は笑った。
この数か月間何度か晃と幸一と早苗さんと一緒にカラオケとか行ったことがあったため、幸一も早苗さんとかなり親しくなっていた。
しばらくすると担任の先生が教室に入って来てホームルームが始まった。
「この1年みんなの担任をします。森口です。専門は数学です。よろしくお願いします。」
「それではまず出席をとります。」
森口先生が各自の名前を呼び出席を取り始めた。
名前とか同時に返事をする生徒。
最後の一人の出席確認が終わった。
「これで全員だな。このクラスで1年間やっていくのでみなさんよろしくお願いします。」
「さて、もう3年だからみんな名前とか知ってるよな!」
「あえて自己紹介とかしないから、もし知らない人がいるなら自分で話しかける様に!」と先生が言うと
「良かった!自己紹介とかすごく苦手!」「そうそう、私も苦手」そんな声が聞こえた。
「今日はこの後始業式があるからみんな体育館に集合するように!」
「始業式が終われば今日は終わりだからそのまま帰宅するように!」
「明日からは普通の授業がはじまるから教科書忘れないように!」
「はーい」みんなから声がした。
今日は午前中が在校生の始業式でその後入学式が行われるため入学式に関係のない生徒は始業式後には帰宅となる。
全員が体育館に向かった。
始業式では校長先生の挨拶と担任の先生の紹介、新しい先生の紹介と生徒会長の早苗の挨拶であった。
始業式から教室に帰る途中前田晃が声を掛けてきた。
「祐樹!」
「おー晃!」
「3年は離れちゃったな」
「そうだな」
「クラスが違うけど親友だからな!」
「当たり前じゃないか!」
「たまには飯でも食いに行こうぜ」
「了解!いつでも待っているよ!」
「そうだ、星さんと別れちゃったのか?」
「どうなんだろう?自分でもわからない」
「由紀みたいなことにはならないようにな」
「うん」
「それじゃぁ、またな」
「おー」
始業式が終わり教室に戻ると、部活に行く人帰宅する人で教室に残っている人はほとんどいなかった。
祐樹が席に戻ると早苗が座っていた。
「早苗さんは帰らないの?」
「今日は入学式で生徒会長の挨拶があるからそれまで帰れないの」
「そうなんだぁ。何時からあるの?」
「10時半からだからもう少しあるかな?」
「そうだぁ。祐樹君は星とはやり取りしてる?」
「それがぁ・・・星が群馬に行って数カ月は電話やLINEでやり取りしていたんだけど、星が忙しくなったのかな?」
「返信も来なくなって、電話も出なくなって・・・それからは出来なくなってしまって!」
「そうなんだぁ」
「じゃあ、星のお父さんが亡くなったのも知らないんだね」
「えっ!そうなの?」
「私はね。お葬式に群馬まで行ったんだぁ」
「じゃぁなぜ教えてくれなかったの?」
「星に言わないで欲しいって頼まれたから、言えなかった。」
「なぜなんだろう?」
「星ね、学校とお父さんの病院と帰ってからも家事とかしてたからちょっと精神的に参ってたって」
「祐樹とはすれ違いで連絡が何度も出来なくなって、それから更にうつ病みたいになって何も考えられなくなったって」
「だから、お葬式に祐樹君が来てくれてもちゃんと前みたいにできないかも知れないって」
「だから言わないで欲しいってなったのかも?」
「そうなんですね。知らなかった。」
「てっきりもう自分と関わる時間もないんだと思ってた」
「星ね。お父さんが亡くなってしばらく誰とも話せないかもって言ってたけど、元気になったら自分から祐樹君に連絡するって言ってたから、きっとまだ復活できてないんだと思う。」
「それなら今僕から連絡しても迷惑だよね」
「それはどうか分からないけど、もう少し待ってあげてくれる?」
「うん。わかった!」
「あっ!そろそろ行かないと!」
「じゃあね祐樹君、また明日」
「早苗さん、挨拶頑張ってね」
「ありがとう」そう言うと早苗は教室から出て行った。
祐樹は一人教室でも椅子に座り涙を流していた。
「星・・・お父さん亡くなったんだね。大丈夫?」とつぶやきながら・・・星とのLINEのトークを見ていた。
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