56話 恋人との最後の夜
先に帰った星は、祐樹が来るまでに肉じゃがを作っていた。
初めて祐樹と自分のアパートで食事をした思い出の肉じゃがをもう一度一緒に食べたいと思って作っていた。
「19時に来るから間に合うかな?」
と思いながらも頑張って何とか間に合った。
あとは温めれば良いだけ。
その時アパートのチャイムが鳴った。
モニターを見ると祐樹が映っていた。
「祐樹、ありがとう」
「ちょっと待って、今開けるから」
[ガチャ]
星がドアを開ける。
「祐樹、こんばんは」
「こんばんは、星」
「上がって」
「うん」
「えっ何か良い匂いがする」
「うん、肉じゃが作ってる」
「そうなの?」
「一緒に食べよう!」
「うん」
「今持ってくるからそこに座ってて」
星がキッチンで肉じゃがを温めていた。
「星、話って何?」
「あー。肉じゃが食べてから話すね」
「わかった!」
しばらく祐樹はテレビを見ていた。
「おまたせ」
「出来たよ」
「美味しそう」
「はい、お皿とお箸」
「ありがとう」
「食べよ」
「この前の味から少しアレンジしてみたんだよ」
「どう?変?」
「美味しい!」
「良かった!」
「私も食べてみよう。」
星もお肉を口に入れる。
「本当、美味しい」
「ジュースも買ってるから飲んで」
「うん、ありがとう」
そんな感じで2人は夕食をしながら最近の学校の話や生徒会の話で盛り上がった。
祐樹はあえてお父さんの話題は控える様にしていた。
食事を終えた2人はテレビを見ながら。
「祐樹、今日ちょっと遅くなっても大丈夫?」
「うん、お母さんには夜も食べてくるって言ってるから大丈夫だよ」
「えっとね」
「この前、お父さんの病院に行ったのね」
「うん」
「やっぱり病状良くなくて、もって半年だって」
「やっぱりそうなんだぁ。星大丈夫?」
「うん、それでね」
「祐樹や早苗とは離れたくないんだけど、向こうで住むことにしたの」
「えっ」
「ちょくちょく行くんじゃなくて?」
「そう、お母さんがそうして欲しいって」
「祐樹とは付き合って、まだ少ししかたってないのに・・・ごめんね」
「でも私もね、高校に入ってからお父さんと一緒に住んでなかったから、最後ぐらい3人で一緒に住みたいって思って」
「祐樹と離れるのは嫌だけど、今は家族を大事にしたいなぁって思うんだぁ」
「そうなんだね。でもずっと会えないわけじゃないから」
「うん、でね。明日がこっちでの最後の日になるの」
「そんなに急に?」
「だから今日はいっぱい祐樹と過ごしたい」
「向こうに行ってもLINEとかは出来るんでしょう?」
「うん、でも毎日学校から直接病院に行くと思うから、あまりできないかも知れない。」
「寂しくなるなぁ」
「私もそう。でもお父さんが大事だから、本当にごめんね」
「わかった。でもこの関係が終わるのは嫌だからね」
「うん。私も終わらしたくない」
「星」
「祐樹」
2人はキスをした。
「祐樹」
「寝室行こう!」
「うん」
祐樹が寝室に行くと、前とは違ってベットの周りは段ボール箱が積まれていた。
それを見ると、「本当のことなんだぁ」と実感した。
「なんか段ボールばかりで、部屋が狭くなったでしょう?」
「土曜日に帰って来てから2日でまとめたの」
「ちょうど引っ越しの日程が空いてて、明日の午後にアパートから出るから」
「ここも出るんだぁ」
「うん」
「ここは色んな意味でいっぱい思い出が詰まった部屋だけど、借りておくわけにはいかないから」
「そうだよね」
「祐樹、しばらく会えないから凄く甘えたい」
「祐樹の温もりを身体に覚えておきたいの」
「僕もだよ」
「でも今日用意してこなかった」
「大丈夫!多分安全な日だから」
「本当に」
「うん、それに万が一そうなっても私大丈夫だから」
「星い」
「祐樹、抱きしめて」
「星、好きだよ、大好き」
「私も大好き、祐樹」
そのまま2人はベットに入った。
2人は時間の許す限り何度も熱い時間を過ごした。
時間は22時になっていた。
祐樹のスマホが鳴る。
「お母さんからだぁ」
「帰ってきなさいって!」
「うん」
「じゃぁ帰るね。」
「うん」
「明日は学校で会えるんだよねぇ」
「うん、午前中だけだけど・・・」
「そっか」
「祐樹、キスして」
2人は抱き合ってキスをした。
その後、祐樹は星のアパートを後にした。
帰りの自転車をこぎながら、祐樹は涙を流した。
そして星も涙が溢れて止まらなかった。
読んで頂き、ありがとうございます。
とうとう星と祐樹の最後の夜
甘くせつない2人の関係が今後どうなるのでしょうか?
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