50話 CM
月曜日の朝、祐樹は相変わらず起きるのが遅かった。
特に昨日は、その日の余韻で遅くまで寝られなかったためである。
夢の中でもその余韻にひたっていた。
「祐樹!遅れるわよ!」
「早く起きてごはん食べなさい!」
「遠くから声が聞こえる・・・」
「祐樹!早く!」
祐樹が目を覚ます。
「あっ、は~い」
祐樹がベットの上で起き上がると、現実に戻った感じがあった。
「あっ月曜日かぁ」
祐樹は立ち上がり、あくびをしながら階段を降りた。
そのまま洗面所で歯磨きを終えて椅子に座る。
「もう少し早く起きられないものかね?」
「こればっかりは直りません」
「夜遅くまで起きてるからでしょう?もう少し早く寝なさい!」
「考えておきます」
「もーう、この子ったら、いつもこれ」
祐樹が朝食を食べて朝の情報番組を見ていると番組からCMに変わった。
いつもと同じ様なCMが流れる中、何か聞いたことがある曲が流れて来た。
[あなたも自分に合う職を探してみませんか?]の後に続いて女優の岸本美優さんがオフィスのデスクワークをしている姿が映し出された。
次に若手俳優の奏多博が作業服を着て現場の作業をしている状態と変わった。
最後に2人が並んで「夢を実現するために行動してみませんか?」の後にアリス人材派遣会社のロゴが表示された。
いつもなら何も感じないCMであるが、今回はそれが違った。
「これって、HIKARIさんの『希望の一歩』」
「間違いない、声もHIKARIさん」
「何百回と聞いた曲と声」
「でもなんで、CMで流れてるの?」
祐樹は疑問と驚きで、時間を忘れていた。
「祐樹、まだいるの?」
「遅れるよ」
「あっ!」
「行ってきまーす。」
そう言うと慌てて家を出た。
自転車で学校に行く途中で、改めてHIKARIの『希望の一歩』を聴いた。
「やっぱり間違いない、CMの曲、HIKARIさんのだぁ」
学校に着いて教室に入ると、女子たちが話してるのが聞こえた。
「朝のいつもの情報番組のCM、聞いた?」
「あー聴いた」
「あれって、あのYouTuberのHIKARIって言う人の曲だよね」
「そうだと思う」
「凄いね、CMで使用されるなんて、でも曲の感じもCMのイメージにぴったりじゃなかった?」
「そうそう、私も思った。」
「アリス人材派遣会社のCMって凄いよねぇ」
「うん」
その話題を聞いていると
「おはよう!祐樹」
「あっ!晃おはよう」
「なんか話題になってるね、朝のCMのこと」
「晃も知ってたの?HIKARIさんのこと」
「これだけ話題になるとほとんどの人が知ってるだろう?」
「そっか」
「ひとりのYouTuberが一躍有名人だね。収益も凄いんだろうね」
祐樹はYouTuberと言う言葉に引っ掛かった。
本当はYouTubeがメインじゃない?アイドルを目指していることが本当の理由と知っていたからである。
しかし、今の心境はまさかこれほど早くCMなどに使用されることへの驚きと、本人はどう思っているのだろうと言う心配もあった。
星のクラスでもその話題が出ていた。
星は自分の席で、その話を聞かないようにしていた。
早苗が心配して星のデスクに寄ってきた。
「何か凄い話題になってるね」
「うん」
「ここまで話題になるって自分でも思ってなかった」
「でも本当に星の曲なんだよね」
「そう」
「そっか」
「何か複雑」
「そうだよね」
「自分もこんなにも早くCMが流れると思ってなかったため心がついていけてないから」
「これで一気に有名になるんじゃない?」
「アイス人材派遣のCMってあっちこっちで流れてるからね」
「この前別のCMが新宿のアルタのスクリーンにも流れてたから・・」
「そうなんだね」
「それが凄く心配」
「いずれにしても今後のことを決めないといけないね」
「この前の芸能プロダクションの件、どうなった?」
「今週に2社の人と会う約束をしていて、そこで色々話を聞くつもり」
「そっか?」
「祐樹君には言ったの?」
「まだ」
「そっか、でも早く行った方が良いかもね」
「自分もそう思っているんだけど、今の関係が終わっちゃうのが怖いの」
「祐樹君はそんなことで嫌いになったりしないでしょう?」
「それはそうなんだけど、HIKARIのことを一番に応援してくれてる人だから、もしかすると自分が邪魔になるって考えることもあるでしょう?」
「それが怖くて」
「自分より人の幸せを望む様な人だから・・・」
「そっかぁ」
「また夕方話そう!」
「うん」
早苗は自分の席に戻って行った。
放課後の生徒会室でもCMの件が出ていた。
「早苗さんがこの前言っていたYouTubeの人の曲がCMで流れてたよね」
「あの時新聞に載せておけば良かったね」と生徒会のメンバーが早苗に言った。
「その件はもう良いの」
「CMで流れてるくらいだからもうみんな知っているし、そうだよね星」
「うん」
「その時に新聞に載せないでよかった、ね~星」
「うん」
「何か意味深だなぁ」そう言うとそのメンバーは生徒会室から出て行った。
会合が終わるとまた隅の方で早苗と星が話している。
「早苗!さっきの件だけど、芸能プロダクションの人の話を聞いて、本当にデビューすることが決まったら祐樹に正直に話すことに決めた」
「学校にも話さないといけないから、もう祐樹に黙っているのは難しいから」
「話して、もし祐樹が別れる様なことを言ったら真摯に受け止める。」
「本当は別れたくないし、祐樹がいない人生って考えられない」
「でもその原因は私にあるし、祐樹は何も悪くないから・・・。」
「そして小さい頃からの夢を実現するために前を向く」
「そっかぁ」
「でも、もし本当にお別れとかなったらかなり落ち込むかも知れない・・・。」
「その時は私が全力でサポートするよ」
「ありがとう早苗」
「やっぱり早苗は一番の親友」
「今更?」2人は笑った。
それを見ていた原君が「何何?この前の女の子の体のこと解決したの?」
「うん、そうだよ」
「何か凄く気になるんだけど・・。」
「男の子にはわからない事!」
「そうなんだぁ・・よかったね」
「ありがとう原君」
原君が親指を立てて「Good]と返してきた。




