4話 2週間前の出来事2
喫茶店の奥の席で、1人アイドルの卵のパンフレットを見ている俺。
名前は『HIKARI』歳は17歳
-----以下紹介文-----
出身は東京都
都内の高校に通いながら基本はオリジナル曲を作って歌っています。
小さい頃からピアノを習っていて、そのピアノで作曲を行っています。
歌詞も日頃の出来事などをベースに書き下ろしたものです。
まだまだ未熟な私ですが、アイドルになる夢を小さい頃からもって頑張っています。
よろしくお願いします。
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と書かれていた。
同じ歳で、アイドルを目指して頑張っている。
「なんか自分では考えられないなぁ」と考えていた。
「でもアイドルと言うより、作詞、作曲のシンガーソングライターだな!」と俺は思った。
食事を済まして、時間を見ると16時50分
「そろそろ行かないと」
俺は席を立ち、伝票を持ってレジへと向かった。
先ほどの店員が「お支払いですか?」と尋ねてくる。
「はい!」と店員に伝票を渡す。
「サンドイッチのセットで680円です。」
俺は財布から千円札を差し出した。
「お釣りの320円です。」
「ありがとうございました。またお越し下さい」と笑顔で送られた。
「良い感じの店だったなぁ、また今度も立ち寄ってみよう」と思った。
俺は支払いを済まして、待ち合わせ場所の交差点に向かった。
待ち合わせまでは10分程度
待ち合わせ場所に着くと、パソコンショップの桜井さんが既に待っていた。
「すみません。遅くなりました」
「ごめんね相沢君、忙しいのに・・」
「いえ、暇ですから」
「じゃあ―行こうか!」
「はい」
秋葉原には劇場やライブハウスがたくさんある。
有名なところはAKB劇場。
その前にはたくさんのファンが集まっている。
小さなライブハウスは、まだあまり有名でないバンドやアイドルなどが時々ライブをしているんだろうな。
俺は桜井さんとある秋葉原の外れのライブハウスに向かった。
ライブハウスの本来の入り口とは別の裏の入り口から中に入る2人。
そこにはライブハウスのオーナがいた。
「桜井君。ごめんね」
「オーナー、1人確保しましたので一緒に来ました。」
「ありがとう」
「君も無理言ってありがとうね」とオーナが話してきた。
「相沢です。よろしくお願いします。」
「ホールはこっちだから好きなところに座って!」とオーナーに案内されて俺と桜井さんはホールに入った。
ライブハウスのホールに入るとそこには200席ほどの椅子が並べられていた。
小さいライブハウス。
いかにも椅子を並べました感がある。
「普段はテーブルもあって、飲み物なども飲みながら聞くスタイルだろう」と思った。
「アイドルの卵ならこんなもんか?」と思い席についた。
200席ぐらいある席が半分くらい埋まる程度の人
「ここにいる何人がサクラなんだろう」と心の中で思う。
しばらくしてホールの照明が一気に暗くなり、ステージにスポットライトが浴びせられた。
1人の女性がマイクを持って現れる。
「司会の人だろうか?」
その人は中央でなく、ステージの端の方では話し始めた。
「本日は、お忙しい中新人アイドルオンステージに来場頂き、ありがとうございます。」
「私は今回の運営及び司会を担当します、荒巻と申します。よろしくお願いします。」
会場の数人から拍手があった。
「今回のライブは、まだ一度もステージで披露したことがないアイドル希望の方を募集しています。」
「ご応募下さった中から本日は4名のライブを行います」
「皆さん緊張されていますが、温かくご声援よろしくお願いします。」
「では早速1人目のステージでございます。ひなきりんさんどうぞよろしくお願いします。」
司会の紹介で、女の子がステージに現れる。
白の衣装とフリフリのスカートを履いた女の子
パンフレットの写真と同じ衣装を着ている。
「ひなきりん、です。」
「16歳です」
「よろしくお願いします」
と言うと、音楽が流れだした。
お世辞でも歌がうまいとは言えないアイドルの卵がダンスをしながら歌っている。
「顔はそれなりにかわいいが、何このフリフリな衣装?」
客席に愛想を振りまくっているが、客席の反応は今一。
「1人で盛り上がっているが内心は恥ずかしいんだろうな」と可哀そうになる。
2曲が終わり挨拶になった。
「ひなきりんです。16歳です。出身は群馬県です。」
「小さい頃からアイドルになりたかったので、今日のステージはとても感激しました。」
「もし今後、どこかのステージで私を見つけたら応援よろしくお願いします。」
「本日はありがとうございました。」
挨拶が終わり、1人目のライブが終了した。
次に2人目のライブが始まる。
司会の女性から「では次のステージに移ります。中澤ゆきなさんよろしくお願いします。」と紹介があった。
2人目のアイドルの卵がステージの中央に現れる。
衣装の色や柄は違っても1人目と同じ感じに見える。
曲が始まった。
「曲は違うけど、全員同じ人に見えるな?」
「個性もあまりない。」
「これでは売れるかどうかわからないな」と心の中でつぶやいていた。
「AKBなどの華やかさを見ているからだろうか?何か華やかさもなく印象も残らない感じ」
2人目の挨拶が終わった。
つづいて3人目の紹介とステージがあったが、まったく頭に残らない感じだった。
3名のライブが終了した。
4人目「では続きまして、『HIKARI』さんよろしくお願いします。」と司会のアナウンスが聞こえた。
現れたのはパンフレットの写真と同じ黒のワンピースを着た女の子
緊張しているのかも知れないが、その瞳はすごく輝いていた。
「HIKARIです。」
「17歳です。」
「まずはバラードからお聞きください」
「希望の一歩」
曲が始まると、しっくりくるバラードから始まった。
イントロが終わって、歌が始まる。
「えっ!うまい」
初めの3名がいたからか、余計にうまく聞こえる。
「クリアーでありながら高い声も出て、アイドルと言うよりロック歌手みたいに声のトーンが凄い」
でも曲の感じは落ち着いた雰囲気に仕上がっている。
「前の3人が他のアイドルのカバー曲を歌っていたが、これはオリジナル曲?」
「派手さはないものの、見るからに歌唱と言う点で群を抜いている。」
俺は知らない間に、少し前のめりに聞き込んでいた。
1曲目が終わり、2曲目が始まった。
2曲目は少しアップテンポの曲
これもアイドルの様な派手さはないが、曲は途中変調させたりと難しい曲となっていた。
でもそれをうまく歌い上げる。
「これもうまい」
「お世辞でもなく、本当にうまい。」
「よく見ると顔もめちゃくちゃ美人じゃん」
派手なダンスをする訳でもなく、軽くステップを踏むだけのステージ。
なんか引き付けられる。
歌が終わって、挨拶になった。
「皆さん、はじめまして!」
「HIKARI」です。
「東京都出身の17歳です。」
「基本はオリジナル曲で活動しています。」
「もしどこかで私を見つけたら、応援して頂けると嬉しいです。」
「これからも頑張って行くのでよろしくお願いします」
数名から「頑張って!」との声が上がった。
「HIKARI」さんは、その後挨拶を終えてステージから去った。
「曲も何か印象に残っているなぁ」
「特にバラード・・・。」
「希望の一歩とか言ってったっけ?」
「るるるーる、るる」
知らない間に口ずさんでいる自分がいた。
再び司会の女性がステージに現れる。
「以上をもちまして、本日のプログラムを終了します。」
「この4名の今後の活躍を期待しています。」
「皆さんも応援よろしくお願いします。」
「なお30分後に、握手会と撮影会を開始します。」
「時間がある方は、入口のブースにお集まりください。」
「本日は本当にありがとうございました。」
司会の女性が頭を下げてステージが終了した。
「みんな凄かったね。私的には4人目の女性がうまかったと思うんだけどね!」と桜井さんが話してきた。
「そうですね。自分もそう思います。」
「相沢君は撮影会と握手会どうする?」と桜井さんが聞いてきた。
「俺は・・・」
「母親に夕食までに帰るって出掛けて来たので、帰ります。」答えた。
内心は「HIKARI」さんに会ってもう少しお話したいと思っている自分がいたが、遅くなると母親に怒られるのでやむなく断った。
「相沢君、今日は無理言って付き合ってくれてありがとうね」
「いえ!こちらこそありがとうございました。」
俺はライブハウスから出て、最寄りの駅に向かう。
空はもうすっかり暗くなっていたが、秋葉原の街の明かりで道は来た時以上に輝いていた。
俺は駅に着くと電車に乗り込み、座席に座った。
もう一度、ライブのパンフレットをかばんから取り出し、「HIKARI」の挨拶文を読み返した。
「希望の一歩かぁ・・・」
「るるるーる、るる」
帰りの電車では先ほどの曲を口ずさんでいる自分がいた。
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