3話 2週間前の出来事1
時期は4月の終わり、朝はまだ少し肌寒さが感じる休日。
俺はパソコンのメモリーを増やしたいと思って、1人で秋葉原に来ていた。
秋葉原はパソコンやゲームのソフトを購入するため月に数回は来ている。
パソコンショップも行きつけのところがあり、店員さんも顔見知りになっていた。
休日の秋葉原は人だらけで、特にオタクの人が多いと思う。
メガネを掛けたリックを背負った高校生らしい人。
日本のアニメのTシャツを着た観光客の外人。
自分がそのキャラクターになりきっているコスプレの女性。
数年前はメイドの服装の女の子も多くいたが、今は数名すれ違うかどうかって感じである。
あちらこちらの看板に人気アイドルやアニメのキャラクターが描かれている。
「休日は賑やかな街だぁ」とつくづく思う。
俺はぶらぶらしながらいつものパソコンショップに入った。
「いらっやいませ!あー相沢君、こんにちはぁ」
「2週間振りだね。今日は何を買いに来たの?」
「パソコンのメモリーを増やしたくて、見ても良い?」
「ああ!ゆっくり見て行って!説明がいるなら言ってね!」
「でも相沢君の方が詳しいよね」
と店員が笑いながら対応してきた。
俺は「ありがとう」と言って店の奥に入って行った。
その店員は桜井さん。
いきつけのパソコンショップの副支店長。
初めて、たまたま入ったパソコンショップで感じの良い人だった記憶がある。
いつも笑顔で対応してもらって、昔はパソコンの話に2時間以上話し合った。
自分でパソコンを作ったと言ったら、驚いていた。
それから来る度に挨拶をしてくれる様になった。
たまに掘り出し物をメールで連絡してくれることもある。
このショップは1階と2階があり、1階がパソコン本体、2階が周辺機器などを置いている。
俺は2階のメモリーコーナーに足を運んだ。
さすが秋葉原
メモリ―コーナーだけで俺の部屋くらいある。
「探すのが大変だな?」
「えーっと! ほしいメモリーは・・・32GBのDDR4」
「これだ!でもやっぱり高いなぁ?一番安いので良いか?」
と言って、一番安いメモリーを手に取った。
その後、店の中をぶらぶらと探索。
「HDDも増設したいんだけど、高校生には手が出ないな。」
と言いながらも、ゼネレーションLIVEの収益では、毎月数十万円が自分の隠し口座に振り込まれてる。
しかし、あまり派手に金目の物を購入すると親に怪しまれるので、お小遣いの範囲で買おうと決めている。
その口座には今5百万円近く貯まっていることは本人も知らない。
メモリ―を持って1階の入り口のレジへと向かった。
「これにします!」
「はい!、12,000円ね!」
「えっ!12,500円じゃないの?」
「お得意さんへのサービス、サービス」
「ありがとうございます。」
俺は財布からお金を出して支払いを済ませた。
「また来まーす」と言って帰ろうとした時、桜井さんに止められた。
「相沢君はアイドルに興味ある?」
「えっ!アイドルですか?あまり知らないですね」
「AKBとかですかね」と俺は返した。
桜井さんはカウンターの下を探し出した。
数秒後、何かのパンフレットらしきものを手に取っていた。
「これなんだけど、まだ全然売れていないアイドルが数名、今日ライブをするんだよ。ライブハウスのオーナに頼まれて数名サクラを確保してほしいって!。有名じゃないから客席も全然埋まらなくて、本人たちのモチベーションのためにもサクラを用意してほしいと」
とパンフレットを差し出し、説明をした。
「良かったら夕方、私と行ってくれない?終わったら撮影会とかあるけど、先に帰って良いから・・・。もちろん費用はいらないから」
俺はどうしようかと考えた。
アイドルには興味はないが、行きつけのパソコンショップの桜井さんには安くしてもらったりとか恩があるからとOKを出した。
「わかりました。良いですよ!」と俺が返事をすると、
「よかった!助かります!」と桜井さんは笑顔で握手をしてきた。
俺は、桜井さんと時間と待ち合わせの場所を決めて、パソコンショップを後にした。
「夕方の17時かぁ。まだ、2時間ほどあるな」
そう言って、俺は近くの喫茶店の前にいた。
レトロな感じの小さい喫茶店。
ドアは自動ドアではなく木調の開きドア。
派手でなくゆっくり時間を過ごせそうな雰囲気である。
俺はドアを開けた。
[カラン!カラン!]
ドアのベルが鳴った。
「いらっしゃいませ!何名でしょうか?」と直ぐに定員に声を掛けられる。
「1人です」
「では、奥の2人席でお願いします。」
店員に案内されて、席に座った。
定員が水を持ってきて「注文が決まったら呼んでくださいね」と笑顔で話す。
そう言って店員は店の奥に入って行った。
俺はメニューを広げ軽食のページを見る。
「えーっと、少し食べるか?カレーライス、スパゲティー・・・。」
「いずれもお腹に負担が掛かりそう。帰って夕食、食えないなぁ」
「すみません!」
「はい!」
店員が出てきた。
「サンドイッチのセットでお願いします。」
「コーヒーはホットにしますか?アイスにしますか?」
「アイスでお願いします。」
「かしこまいりました、少々お待ちください。」
と言って店員は店の奥に入って行った。
少しお洒落な喫茶店。
周りはカップルや、女子だけの客が数人いた。
窓が少ないため全体的にオレンジ系のライトが落ち着いた雰囲気を作っている。
俺はかばんからショップの桜井さんにもらった本日のライブ出席者のパンフレットを取り出し、机に広げた。。
「アイドルの卵かぁ」
写真付きで紹介のページが一人一人あったが、いかにもカラーコピーしました!って感じの紙質はイマイチのパンフレットであった。
『ひなきりん』16歳
『中澤ゆきな』18歳
数名のメンバーの中で少しアイドル離れした女性がいた。
『HIKARI』17歳
他の人が明るいフリフリの衣装を着ている中で、一人黒のロングドレスを着た女性が目に入った。
「17歳と言うことは俺と同じ歳か?17歳であるが大人びた顔で、黒のロングドレスを着ている。」
「本当にアイドル?でも何だろうこの引き寄せられ感」
俺は紹介文に目が行った。




