2話 お昼休み
午前中の授業の終わりのチャイムが鳴った。
この学校は1限が50分間で、午前中は3限の授業があって、12時に終わる。
科目はお堅いのが主に午前中になるため、月曜の朝は結構辛い。
そのため朝一から眠たく午前中の授業は半分くらい記憶がない。
「祐樹、よく寝てたな」と前田晃が近づいてきてそう言う。
「ああ~死んでたな!」
「月曜日は特に辛いわ」
「それで、良く試験の成績は上位にいるなぁ?」
「試験の前の日に徹夜しているからだよ」と俺は笑いながら答えた。
「よし!メシメシ!」
「行くか?」
「うん」
俺は、昼休みには眠気が少し解消し元気が出ていた。
この高校には食堂がないため、昼食はお弁当を持ってくる人、売店でパンやおにぎりを買う人、数人は食べない人がいる。
俺は毎日売店でパンを購入し食べている。
昼食はほぼ毎日、裏庭のベンチでいつも同じメンバーで昼食をとっている。
今日も前田晃と北村幸一と3人で裏庭のベンチに向かった。
前田はいつもお弁当を持ってきている。
北村は毎日俺と同じ売店でパンを購入する。
「今日はちょっとリッチにハムカツパン!昨日内職バイトのお金が入ったから今日はふところが温かい」と北村が自慢してきた。
「祐樹は何パンを買った?」
「あー、お前と同じだよ!」と言うと。
「あら、お高いのがお好きね!」と北村が笑いながら言った。
続けて「祐樹はお金に困ってないのか?いつも高いものも平気で買うよな?この前もファミレスで俺たちが手が出ないような鰻丼を食べてたし、何か怪しいバイトでもしてるのか?」
「怪しいバイトってなんなんだよ?」
「例えば、変な薬を売っているとか?闇バイトに参加しているとか?
「あと!今流行りの精子提供とか?」
「するかぁ!」と俺が怒鳴る。
「親父がIT企業で少し給料が良いから、お小遣いの金額も高いんだよ」
「いくらもらってるんだよ?」
「月5万ほど・・・。」と嘘をつく
「ごっ!ごっ!5万・・・。」
「そりゃー裕福だわ」と2人は納得した。
ベンチに座ってパンを食べていると。
「昨日のゼネレーションLIVE観た?」
「あー観た」
と前田と北村が話している。
俺は聞かないふりをして、パンをかじっていた。
「ユピネスって凄いよなぁ」
「1週間でモンスタースタジオをクリアーだもんなぁ」
「信じられないよ!」
「俺なんかまだ10ステージだもんなぁ」
2人にとってもゼネレーションLIVEのユピネスはカリスマ的な存在なんだろう。
「相沢も観た?」と北村が俺に振ってきた。
「観てないよ!ってそもそもユピネスって何んなん?まったくわからんから、ついていけない!」と返した。
「祐樹は由紀ちゃんを思い出して、エッチな動画を観てたんだもんな?」
「そう!・・・違うわい!」
2人から笑いが起こった。
「ユピネスは、ゼネレーションLIVEのゲーム配信者で、難しいゲームを短時間でLIVE中にクリアーしていく人なんだよ!」
「ちょっとカリスマ的な配信者で、視聴者はいつも数万、フォロワー数200万を超えている人なんだぁ」って北村が説明してきた。
「そうなんやね!幸一は詳しいんだな!そもそもゼネレーションLIVEもあまり見ないし、ゲームもあまりしないからなぁ。興味ないや!」
俺はいかにも興味なさそうな態度で返した。
「相沢はゲームより色気だな?どんなエッチな動画を観てたんだぁ?熟女か?それとも女学生か?由紀ちゃんの動画か?」
「あのなぁ!教えない!」
「ケチ!」
『ユピネス』は俺自身。
ユピネスが俺と知っている人は誰もいない。
もちろん家族も友人も知らない。
それは一生言うこともないだろう。
言ったら間違いなく騒がれるし、少なからず少しはマスコミも来る。
そんな有名人にはなりたくないし、平凡が一番!
趣味でやっていることだし、はっきり言って裏の顔で良い!
そう、いつも思っている。
昼の休憩時間終了の5分前の予備チャイムが鳴った。
「昼休みは短いなぁ」
「昼からもだるい、早く終わらねぇかな?」と俺が言う。
「教室に戻るか?」と前田が言った。
3人はベンチから立ち上がり、近くの入り口から校舎に入った。
廊下を3人で歩いていると、1人の眼鏡をかけた女の子とすれ違った。
美人と言うよりめっちゃ可愛い感じ。
肌も白くショートカット。
身長も150cm代前半だろうか?
眼鏡ではわからないが、透き通った目をしている。
「今のって誰だっけ?」と北村が尋ねた。
「隣のクラスの根元さんじゃない?」と前田が答えた。
「生徒会役員の人でめっちゃ頭良いらしいよ!いつも試験の結果では学年で5位以内に入っているし」
「凄!」
そんな2人の会話の中、俺は振り返って確認した。
「根元さんかぁ・・・」
読んで頂き、ありがとうございます。
面白いと思って頂いたら、評価、ブックマークの登録をお願いします。