1話 休み明けの月曜日
5月中旬の月曜日の朝。
時間は8時過ぎ。
ある一軒家の2階の部屋では
(ピッピッ‥‥)目覚まし音が部屋に響く。
1階では食パンが焦げる香ばしい匂いが漂っていた。
(ピピピピピ‥‥)
目覚まし音は次第に大きくなって、すぐに1階にも響く音になっていった。
「祐樹、起きなさい!」
「学校遅れるわよ!」
1階から母親の大きな声が聞こえる。
「ふわーい、母さん」
と言って布団からもぞもぞと出ていく俺。
5月の気候って暑くもなく寒くもなく、GWで怠けた身体と睡眠にはもってこいの時期
ぼさぼさ頭で目が半分くらいしか開いてない状態で、ベットに腰掛ける。
「はぁ、月曜かぁ」
「まだ寝ていたい・・・」とまた横になる。
しばらく目を閉じていると本当に寝てしまいそうな眠気。
「やばい、寝てしまう」
「起きなきゃ」
「あー! めんどくさ!」
高校生の半分以上はそう思っているであろう月曜日の朝。
俺はあくびをしながら、立ち上がり階段を降りた。
先にトイレを済ませ、洗面所で歯を磨いて、ぼさぼさ頭をドライヤーで整える。
母親が「朝食は?パンだけでも食べて行きなさい」と言っている。
俺は眠気のせいか?ぼやっと聞き流す感じになる。
俺はパンを手に取ると「それじゃー、行ってきまーす!」
と食パンをくわえたまま、玄関を飛び出し、自転車にまたがり家を出発した。
朝の外の空気に触れると、眠たさが薄れていく。
近くの垣根には小鳥の鳴き声が聞こえる。
俺は住宅街を抜け、川の堤防を爽快に自転車で走る。
爽やかな風がせっかく整えた髪の毛を一気に乱す。
堤防には朝練だろうか?体操服を着た中学生ぐらいの数人が走っている横をすり抜ける。
「おはようございす。」と声を掛けられる。
俺も「おはようございます。」と返す。
俺は、『相沢祐樹』
この先の北原第一高校の2年生
これと言った取柄もなく、運動部に入っている訳でもなく、平凡な高校生活を過ごしている。
いつ頃だろうか?小さい頃からメカやパソコンが好きで、小学校の時は家にある要らない物を何でも分解していた。
中学校では自分専用のパソコンを自分で製作。
家にある古いパソコンを分解し、必要なパーツのみネットで購入。
ソフトからなんでも自分でインストールし、市販のパソコンと変わらないくらいの完成度に仕上がった。
しかし、それを言うと学校のみんなから、自分のも作ってくれと言われるのがわかるため内緒にしている。
それでかな?自分で言うのもあれだが、手は器用で、細かな作業も得意と思う。
小学校から図工ではいつも完成度の高いものを製作し、先生から褒められていた。
あと、お父さんがIT企業に勤めているからか、小さい頃からC言語やプログラミング用語に触れる機会が多く、いつの間にか、普通のゲームなら自分でプログラミングできる様になっていた。
堤防の坂を下り、学校手前の交差点を右折し、学校に到着した。
そのまま学校の門を自転車でくぐる。
「そこの君!校庭内では自転車から降りること!」立ち番をしていた先生が自転車の前に立ち、俺を止める。
「また君か?」
「何回言ったら直してもらえるのですか?」
俺は「はい、すみません」と自転車から降り、頭を下げた。
「先生にはいつも注意されているなぁ」とつぶやく。
そのまま手で押しながら校庭へ入って行く。
門から駐輪場まで、100mくらい。
普段ならなんでもない距離だけど、月曜日、朝、自転車の条件がそろうと一気に疲れが出てきた。
俺は校庭の奥にある駐輪場に自転車を停めた。
「鍵を閉めないと!」
時々施錠を忘れて自転車の位置が変わっていることがあったからである。
多分誰かが使用して違う場所に停めたのだろうと思う。
俺は自転車の施錠をし、鍵をかばんに入れると校舎へと足を運んだ。
下駄箱で上履きに履き替えていると
「祐樹!、おはよう!」と誰かが飛びついて来た。
声を掛けたのは親友の『前田晃』
「おはよう、晃」
「お前、いつも元気だなぁ」
「祐樹が毎日眠そうにしているだけだろう?」
「夜はエッチなものでも遅くまで見ているんだろう?」
「巨乳か?」
「そう言えば元カノの由紀ちゃんも巨乳だったよな!」
『由紀』は『村口由紀』。
俺の半年付き合った元カノである。
高校入学して告られ付合ったが、相手が進学塾など忙しく自然と消滅したって感じ。
「そうだったな!」と俺が答える。
「由紀ちゃんを思い出して、一人でしてねえだろうな?」
「するかっ!」
「普通のAVだよ!」
「マジか?思春期してるな!」
「あまりやりすぎるなよ」
俺は「はは」と笑うしかなかった。
いつもこの様な会話が普通で楽しいと思う祐樹であった。
たわいもない話をしながら2人で廊下を歩いていると、
「最近、由紀ちゃんとは遊んでないの?」と晃が聞いて来た。
「遊んでないと言うか、会ってもないかな?」
「そうなんだぁ」
「ほんまに別れたんやな」
「たぶんね」とあいまいな返事返した。
由紀とは、どちらからもはっきりと別れようと言っていない状態であった。
教室に入ると、「祐樹おはよう!」
「おは!」
「相沢君、おはよう!」
「おはよう!」と数人と挨拶をしながら、自分の席に座る。
かばんから教科書を取り出し、机の中に入れる。
そのまま、机にうつぶせで目を閉じた。
5分ほどしてチャイムがなった。
担任の先生が教室に入ってきて、月曜のホームルームが始まった。
「今日も1日長そうだ」と俺は心でつぶやいた。
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