16話 体育祭打ち上げ1
体育祭は晴天にもめぐまれて無事に終了した。
実行委員と言われる各クラスの代表2名と生徒会役員は後片付けの仕事が残っている。
「それでは手分けして後片付けを行います。」
「準備の時に分かれたグループ単位で別れて作業をお願いします」と生徒会役員からの説明があった。
根元さんが「私のグループはテントをしまいます。こちらに集まってください。」と叫んでいた。
祐樹たちもそのテントに集合した。
「では、足の折り曲げから行いますので、4つの足を2人づつ担当してください。」
祐樹は由紀と足を持った。
「由紀は明日からもう塾再開?」
「うん、その約束だからね」
「そっか大変だけど頑張ってね」
「ありがとう!」
「祐樹は帰宅部再開?」と由紀は笑いながら言った。
「そうだよ!こいつ!」と頭を[こつん」と只いた。
由紀は「痛!これで祐樹とのこの前のことは忘れてしまいました。」と笑った。
お互いは笑顔で見つめ合った。
テントの足の折り畳みが終わり、その後足の回収とテント自体を畳んで袋に入れる作業を別れて行った。
テントのしまい込みが終わると、全員でグランドのごみ拾いを行った。
みんなで協力したおかげで30分程度で後片付けが終われた。
生徒会長がメンバーの前に立った。
「みんなのおかげで無事に体育祭を終えることが出来ました。」
「ご協力ありがとうございました。」
「本日はお疲れだと思うので、明日の放課後に実行委員で打ち上げを行いたいと思います。」
みんなから「やったー」「おごりー?」と歓声が起こった。
「参加できない人は残念ですが、参加できる方は明日視聴覚室に来てください。」
「えっ?学校で行うの?」
みんなからブーイングが起こった。
「学校行事の打ち上げなので仕方ないかっ?」の声も出た。
「では解散します。みなさん気を付けて帰ってくださいね」と生徒会長が閉めた。
今日はこのまま解散となったので、各自教室に戻ってその後は帰宅となる。
教室に向かう途中、
「準備と当日の運営、お疲れさまでした!」と声を掛けて来た。
振り返ると同じクラスの代表をしていた、中川さんであった。
「中川さんもお疲れ様でした。」
「準備の内容が違ったのであまり話せなかったですね」と俺が言うと。
「ですね、でも明日の打ち上げがありますからね」と返してきた。
「中川さんは参加なんですね」
「はい! 相沢君は?」
「俺も参加予定だよ」会話をしながら教室に着いた。
みんなは既に帰宅していて、残ったのは実行委員だけだった。
「帰るにしても汗だくのジャージのまま帰るのはちょっと」と思っていると、
中川さんが、「先に帰りますね。バイバイ!」と言ってジャージのまま帰って行った。
俺は教室を見渡し、扉も閉まっているのを確認する。
教室には誰もいない。
俺はジャージを脱ぎ、パンツ一丁の状態でタオルで体を拭き始めた。
「競技には出ていないが、後片付けなどで汗が出て体がべとべとしている。
お腹、背中、手足の汗を拭いてその後、
俺がパンツも少し下げておしりを拭いていると・・・。
その時、教室のドアが「ガラガラ」と開いて、「相沢君帰った?」って声が聞こえた。
入って来たのは根元さんだった。
お互い目が合って
根元さんは、「キャー、ごめんなさい」とドアを閉めた。
俺は慌てて、パンツを上げ、ズボンをはいてシャツを羽織った。
「根元さん、もう大丈夫だよ!」と大きな声で言うと、真っ赤な顔の根元さんがドアを開けて入って来た。
「ごめんなさい、まさか着替えてるなんて思ってなくて!」
「こっちこそごめんなさい。」
「で、何か用事かな?」
「明日の打ち上げって行くのか確認しようと思って」
「行きますよ!」
「よかった!」
「打ち上げは1時間程度お菓子を食べながら懇親会みたいな感じだけど、そのあと数名でカラオケでも行かない?って言ってて」
「相沢君もどうかな?って思って!」
「それならそっちも参加で!」
「わかりました、では明日またね、バイバイ」
「あっ!根元さん!」
「はい」
「見ました?」
根元さんは真っ赤になって、「ちょっとだけ」って言って教室から出て行った。
俺は「しまった!」と叫んだ
その後教室から出て駐輪場に行くと、由紀が待っていた。
俺に気づくと、
「祐樹、お疲れ様」と言って来た。
「由紀もお疲れ様!」
「待っててくれたの?」
「そう!明日からまた塾に行くし、打ち上げも行けないから少し話したくて・・・。」
「良いよ、いつもの喫茶店に行く?」
「うん!」と由紀は頷いた。
由紀を自転車の後ろに乗せ、喫茶店まで走った。
由紀は前みたいにお腹まで手を回すのではなく、俺の腰のシャツをしっかり握っていた。
「こうして祐樹と自転車で帰るものもう最後だね」と由紀がつぶやいた。
俺は聞こえない振りをして、「えっ!何?」と言うと
由紀は「なんでもない!」と返した。
俺は少し複雑な気持ちになった。
喫茶店に着いて扉を開けると、いつもの店員が出てきた。
「いらっしゃい!好きなテーブルにどうぞ!」
俺は「ありがとう!」と言うといつもの席に座った。
店員は「アイスコーヒーですか?」と笑いながら聞いてきた。
「ではそれでお願いします。」
2人ともアイスコーヒーを注文した。
俺は由紀と目を合わせ、「絶対この前の覚えてるよね!」と言うと
「ここやっぱり面白い!」と由紀が返してきた。
「祐樹、この前はごめんね」
「半年以上会ってなかったのに、いきなり家に呼んで、エッチしようって!」
「で、結局お母さんでできなかって」
「やっぱり嫌になるよねぇ」と話してきた。
「由紀、それは忘れたんじゃなかったの?」
「そっか!」
「こっちこそ、あいまいな態度でごめん」
「やっぱりけじめを付けないと、と思って!」
「あの後、休んでたんだよね」
「うん、やっぱりショックと日頃の疲れで、熱が出て・・。」
「そっか?ほんまにごめん」
「でも、もう大丈夫」
「祐樹には新しい彼女とかできると良いね。私みたいに自分勝手じゃなくて祐樹を第一優先してくれる様な彼女」
「由紀も考えてくれてたじゃん」
「でも結局塾ってなったのは祐樹のことを考えてなかったから・・・。」
「由紀にも俺より良い彼氏見つかるよ」
「私はしばらく良いや!塾もあるし」
「由紀も美人だし、その気になればすぐに彼氏みつかるよ」
「そうなのかな?それより祐樹より好きな人が出来るかどうか?」
「時間がたてばね」
「うん」
「これからも友達でしょう?」
「うん、そうだよ」
「友達としてたまにはここに来ない?」
「あっ祐樹に彼女が出来たらだめだけど・・・。」
「大丈夫だよ」
「ありがとう」
「それと学校でもし会ったら少し話そう」
「うん、学校で会ったらちょっとでも話そうね」
「ありがとう」
「祐樹、やっぱり優しい」
「本当に好きになって良かった。」
「俺も由紀を好きになって良かった。」
2人は指切りをして、その日は別れた。
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