第7話 海への憧憬
アルバートが「蒸気の天才」として名声を確立してから三ヶ月が経った。
領地の工業化は順調に進み、近隣諸国からも技術者たちが学びに訪れるようになっていた。
しかし、アルバートの心は既に次の段階へと向かっていた。
「マーサ、港町リバーサイドまでの距離はどのくらいだったかな?」
「馬車で半日ほどの距離ですが、何か御用でも?」
アルバートは地図を広げながら答えた。
「実際に海を見てみたいんだ。この世界の造船技術がどの程度なのかも知りたい」
前世の記憶の中で、彼が最も愛したのは戦艦だった。
大和、扶桑、比叡――それらの雄大な姿が脳裏に蘇る。
この世界でも、いつかは自分の手で戦艦を造り上げたい。
その夢が日に日に強くなっていた。
翌日、アルバートは馬車でリバーサイド港を訪れた。
港には小さな漁船から中型商船まで、様々な船舶が停泊している。
しかし、どれも帆船ばかりで、蒸気船は一隻も見当たらない。
「蒸気船はないのですか?」と港の管理人に尋ねると、
「王都には数隻あると聞きますが、この辺りではまだ珍しいものでして。燃料費もかかりますし、故障も多いと評判で...」
アルバートは港の造船所を見学した。
職人たちは熟練していたが、使用している工具は依然として手作業が中心。
設計図も経験則に頼った部分が多く、現代の造船工学とは雲泥の差があった。
「ここなら、確実に革命を起こせる」
アルバートの胸に、熱い想いが湧き上がった。
第7話の成果:
港町の造船技術レベル把握
蒸気船普及の遅れを確認
造船業参入の可能性を発見




