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最終話 永遠なる鋼鉄の夢

10年後


王国暦1887年、ヤマト完成から10年の歳月が流れていた。

アルバート・スチームフォード侯爵(43歳)は、王国技術院総裁として科学技術政策の頂点に立っていた。


「侯爵、新型潜水艦の設計図が完成いたしました」


研究室を訪れた技術者が報告書を提出する。

アルバートの技術革新は戦艦だけに留まらず、潜水艦、航空機、装甲車両など全方位に及んでいた。


「エーテル推進システムの潜水艦か...面白い」


この10年間で、アルバートは前世の知識とエーテル操作能力を活用し、この世界の技術レベルを数十年分押し上げていた。

蒸気機関から始まった産業革命は、今や全産業に波及している。


窓から港を見下ろすと、ヤマトの雄大な姿が目に入る。

10年経った今でも、世界最強の戦艦として君臨し続けていた。


「未だに追随する戦艦は現れていないか」


各国が必死に対抗戦艦の建造を試みたが、技術格差は縮まるどころか広がる一方だった。

アルバートの継続的な技術革新により、王国の優位性は更に拡大していた。


執務室のドアが開き、息子のエドワード(12歳)が入ってきた。

アルバートと妻リリアンの長男で、父親譲りの機械への興味を示している。


「お父様、ヤマトに乗せていただけませんか?」

「もう少し大きくなったらな。あの艦は君にとっても特別な存在になるだろう」


息子の瞳に宿る輝きを見て、アルバートは自分の少年時代を思い出していた。

戦艦への憧れは、次の世代にも受け継がれている。


夕方、アルバートは久しぶりにヤマトを訪問した。

艦上で夕日を眺めるのが、最近の日課になっていた。


「スチームフォード侯爵、お疲れ様です」


ジョンソン艦長(現在は准将)が敬礼する。

彼もまたヤマトと共に年月を重ね、王国海軍の象徴的存在となっていた。


「艦の調子はどうかね?」

「完璧です。まるで昨日完成したかのような状態を保っております」


アルバートのエーテル操作により強化された船体は、通常の金属疲労を起こさない。

理論上は数百年の運用が可能だった。


艦橋に上がり、46センチエーテル主砲塔を見上げる。

10年前と変わらぬ威容は、時の流れを感じさせない。


「君たちは永遠に最強だ」


前世で愛した戦艦たちへの思いを込めて、アルバートは静かにつぶやいた。


その時、通信兵が駆けつけてきた。


「侯爵、緊急電文です!新大陸で未知の文明が発見されました!」

「未知の文明?」


受け取った電文を読むと、大西洋の向こうで高度な技術を持つ文明との接触があったという内容だった。彼らもまた、独自の進化を遂げた軍事技術を保有しているらしい。


「面白い...新たな挑戦者の登場か」


アルバートの瞳に、久々に闘志の炎が宿った。技術者としての血が騒いでいる。


「ヤマトよ、君の真価を問う時が来るかもしれないな」


夕日を背負った超々戦艦は、まるでアルバートの言葉に応えるように、威厳ある姿で海上に浮かんでいた。

新たな技術革新への挑戦、未知の文明との出会い、そして永遠に続く大艦巨砲主義への道...

アルバート・スチームフォード侯爵の挑戦は、まだ始まったばかりだった。




現代日本の機械工学博士だった田中翔太は、異世界転生を経てアルバート・スチームフォードとして第二の人生を歩んだ。

蒸気機関の改良から始まった技術革新は、ついに前世で愛した戦艦大和の完全再現という夢の実現に至った。

72000トン、46センチエーテル主砲9門を擁する超々戦艦ヤマトは、大艦巨砲主義の究極的完成形として歴史に刻まれた。

しかし物語はここで終わりではない。

新大陸の未知文明、継続する技術革新、次世代への夢の継承...アルバートの挑戦は永遠に続いていく。

大艦巨砲主義のなにがダメなのか?

その答えは、この物語の中にある。

技術への情熱、夢への挑戦、そして不可能を可能にする意志の力。

それこそが、どんな主義思想よりも価値ある真実なのかもしれない。

鋼鉄の巨艦に込められた夢は、時代を超えて永遠に輝き続ける。

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