第3話 蒸気機関への挑戦
鍛冶炉の改良が評判となり、村の有力者たちがアルバートのもとを訪れるようになった。
その中に、小さな織物工場を営むトーマス商人がいた。
「アルバート様、我が工場の蒸気機関も見ていただけませんでしょうか?最近調子が悪くて、生産が滞っているのです」
アルバートはトーマスの工場を訪問した。
そこにあったのは、この世界では標準的だが、現代の目から見れば極めて原始的な蒸気機関だった。
「これは...ニューコメン機関の亜流か」
前世の知識によると、この機関は18世紀初頭の技術レベル。
効率は数%程度で、燃料を大量に消費する割に出力が小さい。
「トーマスさん、この機関の問題点を説明しよう」
アルバートはエーテル感知能力で蒸気の流れを観察した。
案の定、熱エネルギーの大部分が無駄に放散されている。
シリンダー内の温度制御も不適切で、蒸気の凝縮タイミングがずれている。
「まず、シリンダーとピストンの気密性を向上させる必要がある。そして蒸気の凝縮を別の場所で行う復水器を設置しよう」
「復水器...ですか?」
「そうだ。これによりシリンダーを常に高温に保てる。さらに排気バルブのタイミングを調整して...」
アルバートは改良案を次々と提示した。
これらはワットの蒸気機関で実現された技術だが、この世界ではまだ発明されていない。
改良工事は一週間続いた。
アルバートは職人たちと共に汗を流し、精密な部品の製作を指導した。
エーテル操作により、金属の加工精度を現代レベルまで引き上げることができた。
そして運転テストの日――
「始動!」
改良された蒸気機関が唸りを上げて動き出した。
以前よりもはるかに力強く、そして静かに。
「信じられない...出力が3倍になっている!」
トーマスは興奮して叫んだ。
織機の稼働音も以前より軽やかで、明らかに効率が向上している。
「しかも燃料消費量は逆に減っているじゃありませんか!」
工場の職人たちも驚愕していた。蒸気機関の常識が覆されたのだ。
第3話の成果:
蒸気機関出力300%向上
燃料効率40%改善
商人階級からの注目獲得




