第29話 鋼鉄の城塞
ヤマトの船体建造が本格化すると、その規模の壮大さが日に日に明らかになった。
組み上げられていく鋼鉄のフレームは、まさに巨大な城塞を思わせる威容を示していた。
「外板の取り付けを開始する」
船体表面を覆う外板の厚さは、部位により50mmから200mmまで変化する。
特に重要区域の装甲は最大450mmに達し、いかなる砲撃にも耐える防御力を誇る。
「装甲帯の施工が最も重要だ」
ヤマトの生命線である装甲帯の建造に、アルバートは全神経を集中させた。
弾薬庫、機関室、操舵装置などの重要区画を守る装甲は、戦艦の生存性を左右する。
「厚さ450mmの装甲板...これほどの厚さは前例がない」
職人たちは巨大な装甲板の取り扱いに苦労していた。
一枚当たり数十トンに及ぶ装甲板を、ミリメートル単位の精度で取り付ける作業は、まさに職人技の極致だった。
アルバートのエーテル操作により、装甲板同士の接合部は完璧な密着を実現した。
従来の技術では不可能な精密接合により、装甲全体が一体化した巨大な盾となる。
「上部構造物の建造に移る」
船体中央部に聳え立つ艦橋構造物は、それ自体が小さな要塞のような規模を持っていた。
水面から高さ40メートルに達する艦橋は、戦艦の頭脳部として様々な装置が集約される。
「射撃指揮装置の搭載が重要だ」
ヤマトの戦闘力を最大限に発揮するため、最新の火器管制システムが開発された。
46センチエーテル砲の威力を最大限に活かすには、精密な射撃指揮が不可欠だった。
「測距儀は15メートル基線長とする」
巨大な測距儀により、50キロメートル先の目標まで正確に測定可能になる。
これにより46センチエーテル砲の超長射程を有効活用できる。
船体後部には、4基の大型蒸気機関が搭載されていく。総出力75000馬力という驚異的な推進力により、72000トンの巨体でも25ノットの高速航行が可能になる。
「機関部の防御も重要だ」
推進システムは戦艦の生命線のため、厚い装甲で完全に保護される。
機関室への浸水や爆発を防ぐため、多重の防護システムが施されている。
建造開始から6ヶ月、ヤマトの船体外観がほぼ完成した。
その威容は造船所を訪れる見学者たちを圧倒し、まさに「海の城塞」の名にふさわしい姿を見せていた。
「美しい...まるで鋼鉄の宮殿だ」
視察に訪れた国王陛下も、その優美な船体ラインに見惚れていた。
軍艦でありながら、芸術品のような美しさを備えていた。
「これが完成すれば、世界最強の戦艦となるであろうな」
「はい、陛下。必ずやそのようにいたします」
アルバートは深々と頭を下げながら、心の中で前世の大和への思いを重ね合わせていた。
第29話の成果:
超厚装甲(最大450mm)の施工完成
水面から高さ40mの艦橋構造物建造
総出力75000馬力機関部の搭載
「海の城塞」としての威容確立




