第28話 運命の竜骨
46センチエーテル砲の開発成功から三ヶ月後、造船所では史上最大のプロジェクトが始動しようとしていた。
新設された巨大ドライドックは全長300メートル、幅50メートルという驚異的な規模を誇り、まさに戦艦建造のための大聖堂のような威容を見せていた。
「ついにこの日が来た...」
アルバートは竜骨設置の準備が整ったドライドックを見下ろしながら、深い感慨に浸っていた。
前世で愛した戦艦大和が、この異世界で蘇ろうとしている。
竜骨設置式典は国家的行事として盛大に執り行われた。
国王陛下、王室一族、海軍首脳陣に加え、友好国からも多数の観客が参列していた。
「神よ、この鋼鉄の巨人に祝福を与えたまえ」
聖職者の祈りが響く中、250メートルに及ぶ巨大な竜骨が慎重にクレーンで吊り上げられた。
その光景は、まるで神話の巨人の背骨を運んでいるようだった。
「竜骨設置!」
アルバートの指令と共に、ヤマトの運命を背負った鋼鉄の背骨が、静かに定位置に据えられた。
その瞬間、見物人から大きな拍手が沸き起こった。
「これより超戦艦『ヤマト』の建造を開始する!」
アルバートの宣言に、造船所の職人たち全員が応えた。
総勢500名を超える熟練工が、この前例のない巨艦建造に参加することになった。
「坊ちゃん、本当にこんな巨大な船が完成するんでしょうか?」
古参の船大工が不安そうに尋ねた。
250メートルという規模は、彼らの想像を遥かに超えていた。
「必ず完成させる。これは私の夢であり、この世界の技術力の結晶となる船だ」
アルバートの確信に満ちた表情に、職人たちも徐々に闘志を燃やし始めた。
竜骨設置から一週間後、本格的な建造作業が開始された。
まずは船体の骨格となる肋骨の組み立てから始まる。
「各フレームの角度は厳密に計算されている。1度でも狂えば、船体強度に致命的な影響を与える」
アルバートは現場を巡回し、一つ一つのフレーム設置を厳格にチェックした。
72000トンの巨体を支える構造は、建築物以上の精密さが要求される。
エーテル操作能力をフル活用し、溶接品質を極限まで向上させる。
従来では不可能だった強度と精度が、超自然的な力により実現されていく。
「これが大和の骨格か...」
組み上げられていく船体フレームを見上げながら、アルバートは前世の記憶を重ね合わせていた。
呉海軍工廠で建造された本物の大和の姿が、脳裏に蘇ってくる。
第28話の成果:
超戦艦ヤマトの竜骨設置成功
250メートル級巨艦建造の開始
500名規模の建造チーム結成
前世大和への憧憬の具現化開始




