第2話 鍛冶場での実験
翌日、アルバートは村の鍛冶場を訪れた。
ガーレット親方は50代の屈強な男性で、代々この村で鍛冶を営んでいる。
「坊ちゃん、お体の具合はいかがで？」
「おかげさまで回復したよ。ところで親方、この炉の効率について話があるんだ」
ガーレットは困惑した表情を見せた。
貴族の息子が突然技術の話を始めるなど、前代未聞だったからだ。
「実は、炉の熱効率を上げる方法を考えついたんだ」
アルバートは鍛冶炉を詳しく観察した。
エーテル感知能力により、熱の流れが視覚的に分かる。
現在の炉は熱の30%程度しか活用できておらず、大部分が無駄に大気中に逃げている。
「まず、炉の内壁に耐火煉瓦を積み直そう。そして煙突の角度を変更して、熱気の滞留時間を延ばす」
「坊ちゃん、そんな複雑なことを...」
「大丈夫だ。設計図を描いてみせる」
アルバートは紙とペンを借りて、前世の知識を活かした設計図を描き始めた。
燃焼室の形状、空気取り入れ口の位置、煙突の角度――すべてが熱力学の法則に基づいている。
ガーレットは設計図を見て驚愕した。
素人が描いたとは思えない精密さと、理にかなった構造。
半信半疑ながらも、落ちぶれた領主の息子の提案を断るわけにもいかず、改修工事を始めることになった。
工事は三日間続いた。
アルバートは現場で指揮を取り、職人たちに細かい指示を出す。
エーテル操作能力により、煉瓦の接着を強化し、金属部品の精度を上げることも可能だった。
そして完成した新しい炉に火を入れると――
「これは...まさか...」
炉の温度は以前の2倍に達し、燃料消費量は半分以下になった。
煙もほとんど出ず、工場内の空気がきれいに保たれている。
「坊ちゃん、いったいどうやって...」
「理論と実践の組み合わせだよ、親方」
第2話の成果：
鍛冶炉の効率200%向上
燃料消費量50%削減
村の職人からの信頼獲得
