第19話 アスタリスクの威容
戦艦アスタリスクの進水式は、王国海軍史上最大の式典となった。
王都から遠く離れた造船所にも関わらず、国王陛下をはじめとする王室一族、海軍首脳陣、各国の駐在武官まで参列する盛大なものだった。
「神よ、この鋼鉄の巨人に祝福を与えたまえ」
王室付きの聖職者が祈りを捧げる中、戦艦は静かに水面へ滑り降りていく。
5000トンの巨体が水に浮かんだ瞬間、見物人から大きな歓声が上がった。
「信じられん…あのような巨艦が本当に浮くとは」
各国武官たちの驚愕の声が、海風に乗って聞こえてくる。
アスタリスクの規模は、彼らの想像をはるかに超えていた。
進水から一週間後、待望の公試運転が行われた。
アルバートは艦橋の高い位置から艦を見下ろす。
艦首が水を切り、光を反射した艦体が銀色に輝く様子は、まるで鋼鉄の怪獣が海を支配しているかのようだった。
「機関、前進微速!」
低く唸る8000馬力の大出力機関が艦全体に振動を伝える。
艦橋の床が微かに震え、波しぶきが舷側を洗う。潮の香りが鼻腔を満たし、海面の反射光が艦体に煌めく。
巨艦はゆっくりと動き出した。
速度計が徐々に上がっていく。
「速力10ノット…15ノット…18ノット到達!」
設計通りの高速力を発揮するアスタリスクに、試乗していた海軍関係者たちは興奮を隠せなかった。
「主砲射撃テストを実施する!」
艦首の12インチ主砲がゆっくりと砲口を上げる。
アルバートが指示を出すと、砲塔が静かに回転し、海上の標的に照準を合わせた。
「発射!」
轟音とともに砲身がわずかに跳ね上がり、艦全体に後退するかのような反動が伝わる。
火薬の煙が立ち上り、甲板を覆う灰色の靄となる。
鉄の匂いと煙の香りが混ざり合い、視界の端を揺らす波しぶきが臨場感を増す。
砲弾は15キロメートル先の標的を正確に撃破し、水面に巨大な水柱を上げる。
波間に散る白い飛沫が、アルバートの視界を彩った。
「射程15キロメートル、命中精度良好!」
海軍砲術専門家たちは口々に称賛し、関係者たちの興奮の声が艦橋に響く。
アスタリスクの圧倒的な存在感と戦闘力を、誰もが肌で感じていた。
しかし、アルバートの心には別の想いがあった。
「まだ足りない…もっと大きく、もっと強力な戦艦が必要だ」
前世の記憶に残る大和の46センチ主砲、18インチという驚異的な口径が脳裏に浮かぶ。
アスタリスクは革命的だが、彼の理想には届かない。
「次は超戦艦を建造する」
アルバートの瞳に、新たな決意の炎が宿った。
第19話の成果
戦艦アスタリスクの進水成功
設計値通りの高性能を実証(速力18ノット)
主砲射程15km、命中精度良好
超戦艦建造への新たな決意