第17話 戦艦設計への挑戦
マスカット号の戦果により、アルバートの技術力への信頼は不動のものとなった。
海軍は正式に戦艦建造を発注し、予算も大幅に増額された。
「ついに戦艦か...」
アルバートは設計室で、前世の記憶を頼りに戦艦の設計図を描き始めた。
頭の中には大和、扶桑、比叡の雄大な姿が浮かんでいる。
「まずは基本要目を決めよう」
全長:120メートル
全幅:20メートル
排水量:5000トン
最大速力:18ノット
主砲:12インチ(305mm)連装砲塔2基
副砲:6インチ(152mm)単装砲6基
この世界初の近代的戦艦の概要が固まった。
スターター号の100倍の規模を誇る巨艦だった。
「主砲の開発が最大の課題だ」
12インチ砲は、これまで製造した砲の10倍以上の口径を持つ。
砲身の製造から砲塔の設計まで、全てが前例のない挑戦となる。
「まず試作砲から始めよう」
アルバートは12インチ砲の試作に着手した。
砲身重量だけで20トンを超える巨大な大砲の製造は、この世界の技術力の限界に挑むものだった。
エーテル操作能力をフル活用し、精密な内筒外筒構造を実現する。
旋条加工も手作業では不可能なため、専用の工作機械を新たに開発した。
「砲塔の設計も重要だ」
主砲を収める砲塔は、装甲厚200mmの鋼鉄製。
重量は砲身込みで150トンに達する巨大構造物だった。
これを旋回させるメカニズムも、蒸気動力を使った革新的なシステムとなる。
設計作業は3ヶ月を要した。
完成した戦艦の設計図は、この世界の常識を遥かに超えた規模と性能を持っていた。
「これが『ドレッドノート』級戦艦だ」
アルバートは前世の知識から、革命的戦艦を意味する名前を採用した。
この戦艦が完成すれば、世界の海軍バランスは一変する。
「建造期間は18ヶ月を予定しています」
海軍上層部への説明会で、アルバートは自信を持って答えた。
「18ヶ月...それほどの巨艦をそんな短期間で?」
「量産技術と効率的な建造手順により実現可能です。既にマスカット号で実証済みです」
提督たちは設計図を見つめ、その革新性に息を呑んだ。
「承認する。国家の威信をかけた事業として、全面的に支援しよう」
第17話の成果:
5000トン級戦艦の設計完成
12インチ主砲の開発着手
戦艦建造の正式承認獲得