第16話 海戦の洗礼
マスカット号の艤装が完了し、海軍への引き渡しが行われた。
しかし、真の試練はこれからだった。
折しも隣国との海上紛争が発生し、マスカット号は実戦に投入されることになった。
「アルバート殿、貴殿にも同乗していただきたい」
ネルソン准将からの要請だった。
新型軍艦の性能を最大限に発揮するには、設計者の助言が必要だというのが理由だった。
「喜んでお供します」
アルバートにとっても、自分の技術が実戦でどの程度通用するかを確認する絶好の機会だった。
マスカット号は王国艦隊の先頭に立ち、敵国の軍艦3隻と対峙した。
敵艦は全て木造帆船で、従来型の前装砲を装備している。
「敵艦見ゆ!距離3000メートル!」
見張り員の報告が響く。
従来の軍艦なら、この距離では有効な攻撃は不可能だった。
「しかし我々は違う」
アルバートは砲術長に指示した。
「距離2500メートルで射撃開始!」
「2500メートルですか?そんな遠距離では...」
「信じてください。我々の砲なら命中します」
マスカット号の新型砲が火を吹いた。
砲弾は正確に敵艦に向かい、見事に命中する。
敵艦の船体に大きな穴が開き、混乱が生じた。
「命中!敵艦に損害を与えています!」
「連続射撃を継続!」
毎分4発の発射速度を活かし、マスカット号は一方的な攻撃を続けた。
敵艦が有効射程に入る前に、既に致命的な損害を与えていた。
「敵艦、接近を諦めて後退しています!」
「追撃する!全速前進!」
15ノットの高速力を活かし、マスカット号は敵艦を追い詰めた。
従来の帆船では逃げ切ることは不可能だった。
「敵艦、降伏の意思を示しています!」
戦闘は圧勝で終了した。
マスカット号は無傷で、敵艦3隻全てを撃破または降伏させていた。
「信じられん...これほどまでの戦力差があるとは」
ネルソン准将は興奮していた。
新型軍艦の性能は、最も楽観的な予想さえ上回っていた。
「これで戦艦の必要性をご理解いただけたでしょうか?」
アルバートは静かに尋ねた。
「ああ、完全に理解した。君の戦艦建造計画に、海軍は全面的に協力しよう」
第16話の成果:
マスカット号の実戦での圧勝
新型軍艦技術の実証完了
戦艦建造への海軍の全面支援獲得