第15話 マスカット号建造
砲術革新の成功を受け、マスカット号の建造が本格的に開始された。
スターター号の10倍の規模となる500トン級軍艦は、造船所にとっても新たな挑戦だった。
「竜骨の長さは40メートル。これまでで最大の船体だ」
アルバートは造船所の中央に立ち、職人たちに指示を出した。
マスカット号の設計は軍艦としての要求を満たすため、民間船とは大きく異なる構造を持っている。
「装甲の取り付けから始める」
軍艦最大の特徴である装甲の装着が開始された。厚さ25mmの鋼鉄板を船体全体に張り巡らせる作業は、精密さと根気を要する。
「溶接箇所は全て二重チェックだ。戦闘時に装甲が剥がれるようなことがあってはならない」
アルバートのエーテル操作により、溶接強度は従来の倍以上に向上していた。
完成した装甲は、従来の木造軍艦では考えられない防御力を提供する。
機関室の建造も特別な配慮が必要だった。
戦闘時の損傷に備え、重要な部品は装甲で保護し、予備部品も多数搭載する。
「出力400馬力の新型機関を搭載する」
マスカット号用に開発された蒸気機関は、スターター号の倍の出力を誇る。
これにより重装甲にも関わらず、15ノットの高速航行が可能になる。
武装の搭載は最も注意深く行われた。
新開発の6ポンド後装砲4門が、船体各部に配置される。
砲塔は回転式で、広い射界を確保している。
「砲弾庫の配置は安全性を最優先に」
弾薬庫は船体中央の最も保護された場所に設置し、火災や浸水に対する安全装置も完備した。
建造開始から4ヶ月後、マスカット号の船体が完成した。
スターター号とは比較にならない重厚さと威容を備えた姿に、造船所の職人たちも誇らしげだった。
「美しい...」
アルバートは完成したマスカット号を見上げながらつぶやいた。
これはまだ戦艦ではないが、確実に戦艦への道のりを歩んでいる。
第15話の成果:
500トン級蒸気軍艦の建造完成
装甲防御システムの実用化
軍艦建造技術の確立