第13話 海軍との契約
スターター号の成功から一ヶ月後、王国海軍本部から正式な使節団がスチームフォード領を訪れた。
団長は海軍技術局長のロバート・ネルソン准将――王国海軍の技術革新を担う重要人物だった。
「アルバート殿、まずはスターター号の驚異的な性能に敬意を表したい」
ネルソン准将は威厳のある声で語りかけた。
彼の後ろには海軍の技術者たちが控えており、全員がアルバートの技術に強い関心を示している。
「ありがとうございます。ところで、戦艦建造の件はいかがでしょうか?」
「それについて話し合いたい。しかし、いきなり戦艦というのは...段階を踏む必要があるのではないか」
アルバートは予想していた反応だった。
確かに50トン級の蒸気船からいきなり数千トン級の戦艦への飛躍は大きすぎる。
「おっしゃる通りです。まずは軍用艦艇の建造から始めましょう。護衛艦級の蒸気軍艦はいかがでしょうか?」
「護衛艦...興味深い」
アルバートは設計図を広げた。
そこには500トン級の蒸気軍艦の設計が描かれている。
武装は大砲4門、装甲は薄いが高速性を重視した設計だった。
「この艦なら建造期間6ヶ月、費用は従来の軍艦の半分で済みます」
「半分だと?」
「蒸気推進により帆装が不要、鋼鉄構造により軽量化、そして量産技術による効率化の成果です」
ネルソン准将は部下と相談した後、決断を下した。
「分かった。まずは試作艦1隻を発注しよう。成功すれば、さらなる発注も考慮する」
契約が成立した瞬間、アルバートの心は躍った。
これで戦艦への第一歩を踏み出すことができる。
「艦名は『マスカット』号とします」
第13話の成果:
王国海軍との正式契約締結
200トン級蒸気軍艦の受注獲得
戦艦建造への段階的アプローチ開始