第11話 スターター号建造開始
春になり、ついに造船所が完成した。
最新の設備を誇る造船所は、王国内でも類を見ない規模と技術レベルを備えていた。
「いよいよだな」
アルバートは造船所の中央に立ち、職人たちを見回した。
50名の熟練工が集まり、全員が『スターター号』の建造に携わる。
「まずは竜骨の設置から始める。この船の背骨となる重要な部分だ」
竜骨は新開発の鋼鉄製で、従来の木造船とは比較にならない強度を持つ。
職人たちは慎重に位置を確認しながら、精密に設置作業を進めた。
次に肋骨の取り付けだ。
船体の形状を決定する重要な工程で、アルバートは一つ一つの角度を厳密にチェックした。
「2度ずれている。修正してくれ」
「坊ちゃん、そんな微細な誤差まで...」
「船の性能は細部で決まる。妥協は禁物だ」
外板の取り付けが始まると、造船所は活気に満ちた。
鋼鉄板を曲げ、溶接し、一枚一枚丁寧に船体に固定していく。
アルバートのエーテル操作能力により、溶接品質は驚異的なレベルに達した。
機関室の建造も並行して進められた。
新型蒸気機関は出力200馬力を誇り、従来の船舶用機関の5倍の性能を持つ。
ボイラーも高圧対応型で、燃料効率は格段に向上している。
「スクリューシャフトの取り付けは特に慎重に」
推進軸の精度は船の性能を左右する。
アルバートは軸受けの調整に丸一日を費やし、完璧な回転バランスを実現した。
建造開始から3ヶ月、『スターター号』の船体がついに完成した。
全長30メートル、全幅6メートル、美しい流線型の船体は、港に停泊する他の船とは明らかに異質の存在感を放っていた。
第11話の成果:
造船所の完全稼働開始
スターター号船体建造完成
革新的造船技術の実証