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勇気と幻

作者: RERITO

懐かしい香りがする...ここが、なろう...

 君たちは、どんな小さなことでもいい。幻にであったことがあるだろうか。僕には、とても奇妙な出来事だったが...一度だけその奇妙な出来事に触れたことがある。


 深夜22時をすぎた頃の事、学校の帰り道に『散歩道』と書いてある看板に目が止まった。通学路からは、少し外れた所、奥には雑木林が生い茂っており、その手前に小さく開けた空間にポツンと立っていた。


 そもそも、何故僕が22時になって帰宅しているのかと言えば、なんのことはない。学校付近に住んでいる友達と、夜中までサッカーをしていたからだ。僕の親は、スマホから連絡をすれば、許可を出してくれるから、「今日は遅くなる。」と予め連絡しておいた。最後まで二人でパスやドリブル練習をしていたらこんな時間にまでなっていたから、驚きだ。


 だから、寄り道は極力してはいけないのだ。明日も早い。朝の五時には起きなければ、怒られてしまう。分かってはいるのだ。分かっているんだけど....


 僕は、入口あたりに自転車を置いてから、奥の見えない真っ暗な道の中を歩いていた。なんでこんなことをしているんだろう。と内心疑問に思いながら、それでも歩いている。好奇心と、冒険心に身体を任せながら、夜闇の中に消えていく。もしかしたら、道に導かれていたのかもしれない。


 寒い。もう、2月に入ったというのに、夜中は身体が凍えて、指を温めたら、ヒリついてしまうほどに寒いのだ。朝は、暖かい。夜は、以上に寒い。なんで...夜中なんだよ。もっと朝に来れば、少しは暖かかったはずじゃないか。


「ふぅ....」


 僕は、上着のフードを目深に被り、歩いていく。そういえば、『散歩道』と書かれた看板には、この先を進んでいくと、池があると書かれていた。付近には、堀の深い場所もあるため、足元に注意して進んでくださいとも書かれていたのを覚えている。


 ふと、嫌な予感がして、スマホを取り出す。充電は、残り2%。致命的なことに気づいた。これから、スマホを見るのはやめよう。帰りになにかあった時に、スマホが動かないと困ることも多い。万が一があっては、いけない。ズボンの中にそっとしまった。


 2分ほど歩いた頃、怖い。と感じた。なにが、怖いのか。言葉にすると、ちんけなモノになってしまう。だから、段取りを追って状況を説明しようと思う。


 始めは、特に問題のなかった。背後には、車が通る気配がする。光もなんだかんだで木陰から漏れていた。スマホの安心感もあっただろう。


 しかし、歩みを進めるに連れて、徐々に徐々に音が消えていく。光も、月明かりだけになってしまった。ボヤボヤと白い霧と言えるほどではないが、白いモヤが現れ始めた。歩く度に、僕は一人なんだ。と確信する。道はあるのだ。道は...しかし、どこに繋がっているのか分からない。歩けば歩くほど、この道は、一体どこに繋がっているのだろうか。池から、回って戻ってくることは問題ないのだろうか。と、ヤケに、不安ばかりばかりが募ってくる。


「寒くなってきた。」


 ふぅ....と、息を吐くと白いモヤモヤが漂う。それが、まるでその土地から発せられる白いモヤと混同して、さらに真っ白に見える。目の前は、フードで視界が確保できない。ガサリ...と、小さな音が、林の奥から聞こえた。木々が揺れた音なのか、それとも虫が動いた音なのか定かではない。ガサッと今度は、背後で動いた。僕は、咄嗟に背後を振り向く。


「なにも、いない。当たり前だ。誰かがいるわけがない。」


 深夜の22時に、こんな散歩道を歩いている馬鹿は僕ぐらいのものだろう。散歩道...散歩道....。少し歩いてみると、大きく開けたところに着いた。その空間には、いくつかの道が置かれていた。一つは来た道の手前側の道...おそらく、これは戻る時の最短ルートだろう。もう一つは池への道。ゴクリッと、唾を飲み込む。なにを迷っているのだろう。冒険がしたかったのだろう。こんなところで、足を止めてるようじゃ、冒険にはならない。


「ふぅ.....」


 一度ため息を吐いて、更に奥の道へと歩みを進めた。歩き初めて、少しの時間...か、長い 時間かどれくらいの時間が経ったのか分からないが、今もガサガサッという音は定期的に聞こえる。一定して、背後から音が聞こえてくる。やはり、人がいるのでないだろうか。こんな夜中に歩いている人がいるとは思えないが、思えないが、あからさまに僕の後ろを歩いてきている。


 なんで、引き返さなかったのだろうか。一度決めたら、絶対に諦めたくないというプライドが、僕の足を前に前に突き動かしたのだ。あたり前だろう。つまり、僕が求めていたことだ...そう。求めていたことだ....


 僕は、思いっきり走った。耐えられなかった。なりふり構わず、前に前に走っていく。ガサガサッという音は、聞こえないが、足を進めれば進めるほど、木々はより生い茂っていく。一つ一つの木が大きく、僕の身体を四人分重ねたかのような自然の圧力を感じる。僕は、こんなにちっぽけで、惨めな存在だっただろうか。そんな、気分にさせられる。それでも、足は止まらない。とにかく、走る。走る。


「ハァハァハァ....」


 逃げれただろうか。誰から、逃げているのか分からないが、恐怖はなくなっただろうか。走れば解決する話だったのだろうか。


 ダメだ。気にしてしまったら、おしまいだろう。そうだ...大丈夫....


「うわぁっ!?!」


 身体が、よろけていたからだろうか、気づけば深い堀の底に足を踏み外していた。小さな木が、身体を傷つける。痛い...土が、擦っていく。痛い....こんなことになるなんて、思わなかった。まさか、人二人分くらいの深さがあるなんて...


「......」


 大きな目立った傷はなかったけど、小さな傷の一つ一つが痛い。これは、治るまで時間がかかりそうだ。身体は、動く...動くけど....少しだけ、落ち着く時間が欲しかった。


 大丈夫。大丈夫。暗いけど、この程度どうってことはない。そう。自分に言い聞かせる。こんなところで、縮こまってられない。まずは、この斜面を歩いて上がらないと...


「......っ!?!?!」


 痛い。右足首を捻ったようだ。気づかなかった。なんで気づかなかったんだ。動き出そうとしたら、本確的に痛みを感じたからか。


 そんなことはどうでもいい。歩け俺の足...それでも、歩けそうにない。悔しいけど、スマホを使うしかないだろう。そっと取り出す。真っ暗な画面を、指で叩く。


 反応がない。


 なぜ....確かにさっきまで....画面は、消えていなかった?それとも、勝手に充電が落ちた?なにはともあれ、僕はどうやって、帰ればいいんだろうか。....はぁ...どうすることもできない。


 月が綺麗だ。今日みたいな月は、写真で撮るのではなく、目で見るくらいがいい。そういえば、こんな綺麗な景色もあったなー...くらいで留めておきたい。人は、結局居なかったみたいだ。そりゃそうだ。普通に考えれば、そうだろう。ちょっとした揺れ、ちょっとした木々のざわめき、そんな一つ一つのことが、僕に危害を与えてくるような気がしたから。そんなことないって、分かっていれば、こんな大惨事なんか起きずにすんだのに...


 あぁ、寒い。早く家に帰りたい。

 布団にくるまって、グダグダしたい。

 寒い....


 よし、歩こう。右足は、ダメだけど、左足でなんとか歩こう。この斜面を歩くのは、今の状態じゃ厳しいけど、もしかしたらこの奥に、斜面がなだらかな場所があるかもしれない。虫が、飛び交う。小さな羽虫が、顔の前を鬱陶しく騒ぐ、昔、黄色と青色の奇抜でうぶ毛のようなものが生えた気持ち悪い幼虫を見たのを覚えている。その記憶が、夏だったはずだ。だから、冬とまではいかないまでも、寒くてよかったと思う。草も、ある程度枯れているから、まだ歩けるのだ...大丈夫。僕は、歩ける。


 木と木を伝い伝い歩く。一度間違えて、触れた樹液のようなものや、ぷにぷにした昆虫...うぇ...吐き気を覚える。冒険心とは、恐ろしいものだな...長らく歩いていると、徐々に斜面がなだらかになってきたような気がした。


「これなら...」


 右足に痛みを抱えながら、どうにか上りきった...ふぅ....上りきったんだ。恐ろしいものを感じていたのに、今は少しだけ気分がいい。


「おぉ....」


 月明かりが、水面を反射する。小さな枯れ木が、水から顔を出している。長草が、生い茂っている。それだけじゃない。星も、綺麗に輝いている。


 これは....よい場所だ....風が吹き荒れる。ガザガサと揺れる。その木の葉が擦れ合い、陰影を作り上げる。


「......これは......」


 龍だ....紛うことなき、クッキリと龍が、この湖の周りの木々に浮かび上がっている。奇跡だ。僕は、龍を見たのか...それは、大人になった今でも分からない。だが、龍がいたこと...それは、僕にとって、永遠と刻みつける記憶となっている。


 帰りも、格闘していた。己との戦い。信じ続けなければならない。この道を真っ直ぐ歩くこと。僕の中では、龍に教えをこうたような気がしていた。


 真っ直ぐに進め。と


 なにかを得たような気がすると、自然と白いモヤは気にならないし、足の傷も頑張って耐えようっと思える。


 初めに感じていた恐怖が嘘のようだった。けれども、逆に自分自身が怖くも感じた。もしかしたら、なにも見えていないのではないか?神経を尖らせていた初めの方が、しっかりと進めていたのではないか?


 どうして、疑い続けるのか分からないが...一人で、ただ前に進見続けるだけなのに、自問自答が永遠と繰り返されていく。そんな時間が永遠に続くかと思われた時、車やお店の明かりが木々の隙間から盛れ出していることに気づいた。


「.......辿り着いた.....」


 長いようで短い時間だった気がするあの時間が、思うに貴重だったのかもしれない。僕は今でも、あの龍の姿を思い出す。池をぐるっと取り囲むような龍、例え、勘違い。錯覚。だったとしても、あの時のことは、忘れてはいけないと強く思うのだ。


「ただいま」


 少しの時間の、冒険....幻とは、己を勇気づけるためにあるんだ。だから、学校に向かったら、まず僕は友達に言うんだ。


「昨日の帰り道に、龍を見たんだよ。」

「幻って、前を進む活力になるんだよ....」

「怖かった。一生あんな思いしたくない!!!」


 なんてね。

ーあとがきー

内容のない話を書いたと思う。

ずっと、考えていることがあるんです。大人になっても、冒険はできるって...小さなことに、冒険心を忘れないことが、楽しめる秘訣なんじゃないかな...


俺にとって、読みにくくても、そこにロマンがあるなら、それはいい小説だと思う。小さなロマンを築き上げていくことに、意味があるって信じてます。

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