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烙印貴族の下剋上  作者: 宮﨑碧
第1章入学編
9/10

第8話裏

刺激のあるシーンがあります。

苦手な方は準備してお読みください。

初日の授業を終えた放課後。


巴先生に言われた通り教室には、イズン・シエン・テソーロ・俺の4名に加え巴先生が残った。結局、この4人でやることになったのか..。この場の主役は俺達生徒で、巴先生は話しには入らないらしい。


生徒4人は1番前の席に集まる一方、巴先生は1番後ろに座り頬杖をつきながら書類業務をしていた。


「始めますわよ。」

「その前に、なんで副委員長に選んだか聞いていいか?シエンさんとテソーロくんを選ぶならわかるが、俺を選んだ理由がわからん。デメリットしかないぞ。」

「そ、それなら私にも、言わせて下さい。辞退させていただけないでしょうか〜。」

「2人が言うなら、俺も聞いておこうかな〜。お嬢様からして俺は印象良くないだろう?不思議だなぁ〜と思ってよ。」

「テソーロくん感がいいですわね。わたくしは貴方が嫌いです。」

「おぉ。ずいぶん直球だなぁ。俺の繊細な心がズタボロだぜ...。(こういう所が好きなのか?あいつは、特殊性癖でも目覚めたのか。くわばらくわばら。)」

「...心の声が、だだ漏れでしてよ。」

「すまん。すまん。気にしないでくれ。」


イズンは冷めた目でテソーロを見ながら、話しを進めた。


「この人選には、私情を入れておりませんの。あくまで決め手にしたのは、得意分野が突出していて尚且つ地に足が着いた理性ある方々を選ばせていただいただけですわ。」

「「「...。」」」

「Cクラスからは、途中退学者を許すわけにはいきませんもの。」

「それに俺らが関係してくるって言うのか?お嬢様よ。」

「えぇ、そうよ。でなければ、選んだりしませんわ。」

「わ、私達は何をすれば、いいのでしょうか?」

「普通にしてればいいわよ。」

「えーと...つまり?」

「そのまま受け取ってくださる?わたくしが望むのは、わたくしの近くで'普通'の生活をしていただければよろしいのですわ。」

「ずっと...本を読んでても..怒らない?」

「えぇ。もちろんよ。手を貸していただきたい時は、貸していただくとは思いますが、基本は自身の好きなように過ごしていただければよろしいわ。」

「...。」


シエンは目を輝かせイズンを見つめ。本を強く抱きしめて、ゆらゆらと体を左右に動かし上機嫌になった。


な〜んか、含みのある言い方だなぁ〜。俺達の質問の答えもあやふやだし...。悪そうには見えないが、隠し事が多そうな奴だな。..あまり、信じない方がいいかな。


「ですが、ヴィトニル君は別ですわ。」

「別?」

「貴方にはもっとクラスの人と関わってほしいわ。初日でしたから、目を瞑りましたが明日からは積極的にクラスの輪に入ってもらいますわ。」

「無理だろ。近づけば離れるんだから。」

「それは、本当の貴方を知らないからですわ。噂がひとり歩きして悪い事が広がりすぎてる今、嫌厭されるのは当然なのですわ。」

「まぁ、つまりは悪い印象を引き剥がすって事だよ。そうだろ?お嬢様。」

「えぇ。」

「...。」

「アッハハハ。そんな嫌そうな顔するなよ〜。なんだ〜お前さん。嫌われたままがいいのか?」


テソーロは、豪快に笑い俺の肩に手を回し顔を近づけた。


「まぁ。今の方が気楽かな。この歳まで家族以外と関わった事ないし、卒業する・しない関係なく元の場所に戻されて生活するんだから必要ないだろ。」

「それを変えられるとしたらどうだ?」

「...。」

「自由に生きられる選択肢があったら?」

「..。自由にか。..魅力的だな。叶うのなら。」

「じゃあ、叶えちまおうぜ。お前がやるべき事はただ一つだ。'信頼'される人物になる事。ただそれだけじゃねぇか。」

「変わるとは思えんが。」

「そうでもないわよ。現に貴方は禁足地の外にいる。皇帝陛下様からの許可をいただいてチャンスをいただいてるわ。」

「...。」

「逆に言えば。ここで汚名返上しねぇと、どうなるかわからねぇって事だ。癪だが、お嬢様に付き合えば自然と実績はついてくるとおもうぜ。」

「て、帝国は実力主義です。な、何かに秀でていれば、重宝されます。た、たとえそれが、悪だとしてもです。」


俺は、首筋の烙印に触れ少し考える。


「それにしたって、ハティフローズに悪い奴って、真正面から言えるたぁ。度胸があるな。アッハハハ。」

「え?..あっ、わ、私が言いたかったことは、どんな罪人でも、実力があれば利用するだけで、決してヴィトニル君が罪人だ。なんて言ったわけじゃなくて、ご、誤解なんです。だ、だから...その..わ、私が言いたいのは、えーと..えーと。」

「大丈夫ですよ。シエンさん。伝わってますから。」

「よ、良かった〜。...じ、寿命が縮みました〜。」

「努力してみます。」

「これで、多少はまとまりができたか?お嬢様?」

「まぁ、そうですわね。1ミリは進んだじゃないかしら?」

「全然じゃねぇか!気持ちの変化は大きいだろうが!」

「まずは、一月後の林間学校。そこまでには、壁を無くすまでは行かなくとも、距離を縮めてくださるかしら?」

「あぁ。」

「俺は無視かぁ〜。」


教室で30分〜40分話し合い。その場は解散となり各々の寮へ戻る事になった。


南寮に戻ると何やら騒がしかった。主に1人の男の咆哮といか雄叫び?が。


「何があったんだ?」

「おぉ。おかえり〜。無事1日を終えたらしいね。」

「今それがなくなりそうなんだけど」

「気にしなくて大丈夫だよん。よくある光景さ。告白を断られた哀れな男の叫び声。ホント、懲りないよね〜。これで何回目なんだか。」


リオルは呆れた感じで頭を振り、騒いでいる男の元へ行き肩に肘を置く。


「愚痴。聞いてあげるよ。」

「リオル。オメェて奴は、オメェて奴は。」

「はい。はい。」

「クッソォォーー!今回は行けると思ったのによぉぉーー‼︎」

「うん。うん。ホント凄いよ。ムザンは。何回振られても挑むんだから。私にはできない事だ。一途な思う所。嫌いじゃないよ〜。」

「ありがとな。ありがとうなぁ。」


俺は何を見せられてるんだ。..これが、'友情'って奴なのか。何か違うとは思うが、2人はそういうことなんだろうと思うことにした。




ー第2師団駐屯地ー


「.....。ん..ん...んぅ..。こ...ここは?..どこなのだ?」

「お目覚めですか?」

「ミルチャ?..ミルチャか?」

「はい。まだ意識が、はっきりなさっていないようですね。」


ジャラ


「ん?...なんだ!これは⁉︎..一体どういうつもりだ!ミルチャ⁉︎」

「はて?なんのことでしょうか?」

「とぼけるな!伯爵である私に、こんな事してただではすまんぞ‼︎ツッ!」


伯爵は奇妙な音を聞いて目線を落とすと、手枷がついていた為、意識が戻り焦りを見せた。その反動で、怪我した場所に痛みが走り手で抑える。


「無理をなさらない方がよろしいですよ。傷が開きます。」

「ツッ〜〜。」


ミルチャを睨みつける。


「悲しいものですね。立場が逆転してしまいました。」

「何だと?」

「今までは、伯爵の取り柄のない娘。今は第2師団大将と罪人。...流石にこうなるとは、早すぎますよ。まだ準備ができていないというのに。」

「罪人だと?私が?馬鹿馬鹿しい。」


ミルチャは、持ち帰った資料を伯爵の顔にちらつかせると、顔色が少し悪くなった印象を受けた。怪我や疲れではないだろう。


「黒い話しは耳に入っていました。証拠不十分という事で手を出さないようにしていたんですが、これが出てきてしまったら流石に..ね?」

「身に覚えないな。私は嵌められたんだ。だいたい、あれがムスペルヘイムの奴だなんて知らなかったんだ!」

「だいぶ、無理がありますね。それに、一部ではありますが血判されてますよ。調べれば誰のなのか簡単にわかってしまいます。..一国の伯爵が、隣国の軍隊長を知らないのは問題ですよ。」

「いいから解きなさい!私はフリード・チャド伯爵だ!ミルチャ!誰のおかげで、師団の大将になれたと思っている⁉︎」

「ハァ。父上がここまでの無能であったとは、苦笑ものですよ。」

「何だと⁉︎」

「この状況おわかりにならない?...椅子に縛られ狭い暗がりの部屋。頼りになるのは、この蝋燭の一本のみ。思い出しませんか?」

「...貴様⁉︎」

「娘に向かって酷いです。...殺してはダメ。五体満足であれば問題ない。精神だけ壊せ。いいな?」

「かしこまりました。」

「ま、待て‼︎早まるな!ミルチャーー‼︎」


ミルチャは、部屋のドアにもたれ抵抗する父上の姿を見つめる。父上にとって恐怖でしかないだろう。これから始まる事をよく知っている。その準備を目の前でされ冷酷に見る娘。自分で言うのも何だが、簡単に関係を壊せるな。まぁ、元から無いようなものだったが。


ミルチャは瞼を閉じ、父上の絶叫を耳にして忘れないよう脳裏に刻みこむ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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