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烙印貴族の下剋上  作者: 宮﨑碧
第1章入学編
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第7話Cクラス始動

2時限目の授業が始まる時間と同時に、麻袋を担いだ巴先生が入ってきた。


「2時限目始めるぞー。まずは、忘れないうちにこれ渡しとくぞ。」


1番前の席に座る生徒の机に、麻袋に入っていた巾着袋を出していく。


「後ろに回してくれるか?」

「はい。」

「1人一個な。あと、離れた2人。お前らはもっと近くに座れ。やりにくい。」

「わかりましたわ。行きますわよ。ハティフローズ。」

「はいよ。」


なんか従者みたいな扱いされたな。新鮮な気分だ。


俺とイズンは、1番前に座り配られた物を受け取った。以外とズッシリとしていて、金属音が当たる音がして中身がなんなのか、だいたい予想がついた。


「全員に行き渡ったな。それは、学院側からの入学祝い金だと思って受け取れ。」

「マジか!」

「スゲェ!」

「こ、こんなに...。」

「本校は自立した者しか在籍できない。なぜこんなシステムにしたかわかるか?ヴィトニルくん。」

「え?いや、わかりません。」


急に名指しされ、何の用意もしてなかった為、思わずわからないと即答してしまった。


「少しは考えろ。馬鹿が。この国は、2回滅びかけた。1回目は災悪による人類滅亡の危機。2回目は人災による。経済悪化による衰退だ。このシステムにした理由は、2回目の人災による経済悪化が、大きく影響している。」

「なるほど。」

「イズンくん。何があったか、説明できるか?」

「わたくしの口から、言わせる気かしら?...貴族の怠惰。平民の怠慢。」

「簡単にまとめてしまえば、その言葉で間違いないだろう。最初は、ほんの少しの気の緩みから始まった。戦争に勝ち続け、広大な領地と強力な兵力を手にした我々帝国は、ある現象に陥った。それは、自分自身の力に酔いしれ驕った。帝都にいた貴族を中心に、怠惰な生活は伝染していき帝国全土に広がるのに、そう時間はかからなかった。ここからどうなったと思う?テソーロくん。」

「ん。..え〜と..。痛⁉︎」


退屈になったていたのか、テソーロ君は船を漕いでいたせいで、巴先生に目をつけられ指名されるが、答えられないでいると生徒簿の角で頭を叩かれる。


「こんな風に、隙のできた帝国は痛い目にあったとさ。今は、歴史の授業ではないからな。後でキチンと教えてやる。ハッハッハ。」

「...すんません。」

「少し脱線したが、この時間ではクラス委員長と副委員長を決めてもらう。1年間このクラスを牽引していく者だ。誰がなるかで大きく変わる。慎重に決めるように。」


巴先生は生徒に丸投げして、教室の端に座った。


俺らで決めるのか...。誰が口火を切るのだろう。最初に発言した者がこの場の主導権を得られるし、今後のクラス内での立ち位置も確保される。


「わかりました。ここは私、ウォルスター・ヒロムが、司会進行していきたいと思います。」


いかにも坊ちゃんみたいな育ちのいい少年が、教卓の前に立ち眼鏡を指で上げきめる。


「ほぉ。」


聞きにくい音量で、巴先生は顎に手を当て前に出た生徒に注目した。


「まずは、委員長をやりたい方は挙手を願えますか?」


挙手をしたのは以外にも2人だった。リョウとイズンだった。てっきりヒロムって奴も挙げると思ってたけど違うのか。


「締め切ってしまいますが、よろしいですか?...リョウくん。イズンちゃん前へ来ていただけますか?これから2人には、立候補した理由と抱負を」

「そんなもん必要ねぇ!俺が委員長になって、引っ張ってやるよ。」

「ちょっ⁉︎ここは公平に選挙を」

「くだらん!そんな無意味な事に時間を使う必要ないだろ。」

「その方が必要ないと言うのですから、わたくしは構いませんよ。ただ貴方が選ばれるのを除いてわね。」

「何⁉︎」

「当然の事でしょう。貴方には相応しくないもの。この場にいる人達の多くは、そうお思いだと思うわよ?」


イズンは、扇子を開き顔の下を隠しつつ目線をこちらに移して、皆の意見を聞こうとした。


「わ、私はイズンさんに..やってほしいかな?」

「はぁ?」

「ひぃ⁉︎」

「まぁ、空気を読まない奴よりは良いかな?」

「ねぇ。しかも、口ばっかりぽいし。ww」

「「「わかる〜。ww」」」

「俺の何が」

「あ〜、ちょっといいか〜。」


気の抜けるような声で、リョウの発言を遮り挙手をした生徒がいた。


「俺の意見としては、正直誰でもいいって感じなんだよね〜。そこの馬鹿がなろうが、貴族のお嬢様がなろうが、やる事は変わらねぇじゃん。」

「馬鹿はどっちだか?お前、委員長になる意味わかってないだろ?」

「わかってるぜ〜。委員長ってのは、いわばそのクラスの顔になる。学院関係者も外部の人間も、そいつに注目し評価される。委員長になれば、あんたらが気にしている。最低限の面目は守れるじゃねぇか?まぁ。学院の底辺に入った事実は変えられねぇが、まだマシだわなぁ〜。」

「っ〜〜。」

「図星か〜。浅い人間だな。」

「テソーロくんと、言ったかしら?」

「そうだけど。」

「貴方の言っている事は、あながち間違ってはいませんわ。ただ、見落としている所もありますわよ。」

「...。」

「わたくしが欲しいのは、そんなチンケな評価ではないわ。将来人の上に立つ者として、経験をつみたいからよ。」

「アハハハ。上に立つ?お嬢様がか?無理だね。このクラスに入った時点で決まってる。」

「あら?なんで、断言できるのかしら?わたくし達の未来の姿が観えるのかしら?」

「観れたら今頃、こんな場所にいないさ。俺は、このクラスに入った先輩達を知ってる。歴史が物語っている..高望みは身を滅ぼす。」

「テソーロくん。貴方は賢いですわね。諦めてしまえば簡単ですものね。...わたくし少々苛立っていますの。」


イズンの視線は、教室の端に座っている巴先生に少し向けた後、再び自分達に視線を向けた。


「Cクラス。確かにこの学院で、ぞんざいな扱いを受けますわ。もう、うんざりではなくて?そんな歴史わたくし達の代で、終わりにいたしませんこと?」

「...。どうするつもりだ?」

「簡単なお話しですわ。強くなればよろしいのよ。何をされても跳ね返せるほどの力を身につければよろしいの。それには、絶対に必要なものがありますわ。巴先生?」

「なんだ?」

「先生は先程、委員長と副委員長を決めろと申しましたよね?」

「そうだ。」

「人数までは、申してませんでしたわよね?」

「...。」


巴先生は、少し考える仕草をして頷く。


「では!わたくしから、副委員長になる方を指名させていただきますわ。まずは、シエンさん!」

「は、はぃぃぃぃ⁉︎わ、私⁉︎」

「次にテソーロさん!」

「...。」

「最後に...ヴィトニルさん!」

「⁉︎」

「この3名を、副委員長に指名させていただきますわ。」

「おい!待てよ!勝手に話し進めるんじゃねぇよ!委員長には俺がなってやるって言ってんだろうが!」

「あら、まだいらしたのね?結果は誰が見ても明らかですわ。なるにしても..お飾りになってしまうわよ?」

「誰が」

「はい。はい。そこまでです。」


リョウとイズンの間に、ヒロムが両手を入れ静止させる。


「これでは話しが進まないので、ここは私が進めます。リョウくんが言ったように、時間の無駄使いになってしまいます。いいですね?2人とも?」

「チッ!」

「よくてよ。」

「...。では。コホン。..表決を取りたいと思います。リョウさんが委員長にと思う方は挙手を。」


教室は静かになり、1人も手を挙げずに終わった。


「締切ます。..イズンさんが委員長にと思う方は挙手を。」


すぐに手を挙げる者、ゆっくり挙げる者様々だったが、クラス全員の挙手によりイズンが委員長になる事が決定した。


「残念ですがリョウくん。これが、全員の意見です。席へとお戻りください。」


なんとも言えない表情で、ゆっくりと戻り着席した。


気まずいな。態度が悪かったにしても、この結末は精神にくるだろ..。可哀想に。


「巴先生決まりました。」

「そうか。ま、大体予想通りのメンバーか。副委員長が3人とは多いな。普通は1人なんだが。」

「わたくし達は、'普通'ではありませんもの。同じ道を辿る必要はありませんわ。」


イズンは扇子を、巴先生に向けて宣言する。


「わたくしが、この学院にこびりついた腐った考えを、壊してさしあげますわ!そうですわね。ここは、リョウくんの言葉をお借りしましょう。わたくし達を舐めない方がよろしくてよ?」

「..。そうか。お前達の学院生活だ。私が手を出す事はない。好きにするといいさ。」


巴先生は、イズンの横に立ち頭を軽く触り背中を叩く。


「さっ!座りな。ヒロムくんも席にもどりな。..Cクラスの委員長は、スノリット・イズン!副委員長を、シエン。テソーロ。ハティフローズ・ヴィトニルとす!この4人は、今日の放課後教室に残るように。今後の方針を決めてもらう。以上!」


巴先生は、教卓を叩き言葉を締めた。


「...。」


.....。あれ?俺、副委員長になったの?..俺達、副委員長になるの承諾してないんだけど...。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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