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烙印貴族の下剋上  作者: 宮﨑碧
第1章入学編
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第3話新入生歓迎会・後編

ステージ上に新入生が横一列に並び正面を向く。俺との間が不自然な距離があるが、気にしないでおこう。


「新入生の皆さん、改めましてご入学おめでとうございます。私は南寮の代表生徒ユングリング・ミミルです。歓迎会は楽しんでくれましたか?...それは、良かったです。楽しんでいただけたのならば、開催した甲斐がありました。この場の全員が、話し足りないと感じますが、夜も更けてきましたので新入生のお名前紹介を、もちましてお開きとさせていただきます。お名前が呼ばれましたら、一歩前へ出ていただければ幸いです。」


司会者が一人一人名前を言い、新入生は一歩前へ出ると一礼して行く。全員の紹介が終わりステージから人が降りると、司会者は新入生歓迎会の終わりを告げお開きとなった。各自部屋に戻るが、何人かは会場に残っていた。俺は部屋のベッドに寝転がり身を任せた。


「さて、何で私に呼ばれたかわかるかなー?」

「おいおい、目が怖いぞ。」

「なんとなく。」

「俺は何で呼ばれたんだよ⁈」

「あらら、1人わからない人が居るみたいねぇ。」


会場後には上級生達が片付ける中、部屋の隅で床に座らせている3人と仁王立ちする女生徒1人。

床に座らされた3人を見下ろし、説教が入り片付けている上級生達は、そんな4人のやりとりを、チラチラみていた。


「今回ばかりは許しませんよ。」

「ミミルちゃん。そんな事言うなって〜。場を和まそうと思って、からかってただけなんだって。」

「ほ〜。揶揄うですか。意味わかって言ってます?リオルさん。人を怒らせて場が和むと思いますか?」

「ギクッ!」

「おい!大丈夫か⁈」

「ダ、ダメみたいだ..。」

「リ、リオルーーー‼︎まだ、傷は浅いぞ。なんて事を。」

「...。茶番はいいから聞きなさい。ムザン。貴方はもう5年生。今年で卒業なの。わかってるのかしら?」

「わかっとるわ。」

「だったらもっと、大人になりなさい。どこに就職するかは知らないけど、今のままでは困るのは貴方だけでなく、周囲の方達にも迷惑をかけるのですよ。」

「グッ⁉︎..正論を淡々と言いよって。」

「貴方の豪胆さは美徳でもありますが、度が過ぎればハッキリ言わせていただくと、とても迷惑です。そんな事をしているから、意中の人に振り向いてくれないんですよ。」

「....。」

「ミミルちゃん。今のはキツイって。」

「知りません。」


ムザンは地面を一点に見つめ俯く。その肩を優しく叩くリオルの画は、哀愁が漂っていた。


「ユウキくん。」

「はい!」


ユウキは2人に意識がいっていた為、呼ばれるとは予想していなかったのか、大声で返事をしてしまった。


「貴方は感情に左右されすぎです。リオルさんみたいになれとは言いませんが、冷静でいる自分を置きなさい。感情の乱れは身を滅ぼしかねません。」

「うっ⁉︎」

「ムザン、リオルさん、ユウキくん。今回の騒ぎで、新入生達と十分な会話はできませんでした。私は全員と話したかったのに」

「そんなことは無いと思うよ。ミミルちゃん。なんせ、予定してた時間に終わったわけだし。」

「ほぉ〜。まだ言いますか。反省が見えないので貴方達は、来月まで個人研究を禁止とします。」

「な⁉︎それは横暴だぞ!」

「本来ならすでに行使してた所ですが、温情でやらなかっただけです。今回の件を受けて、自分を見つめ直し今後に活かしてください。私からは以上です。あっ!ちなみに、守らなかったらどうなるかわかるよね?」


不適な笑みをして首を傾げる。その圧に負け渋々頷いた。




ーフリード伯爵邸ー

学院での騒ぎがあった同時間のフリード伯爵邸の一室でも、少し賑やかにしていた。


「うぃ〜。今、戻ったぜ伯爵。」 

「息を吸う様に嘘をつくでない。2時間程前に兵士からの報告が来ておる。それと一緒に、苦情も来とる。」

「ん?苦情?心あたりがないなぁ。」

「私から見れば、納得のいくものばかりなんだがね?」

「流石は伯爵様。素晴らしい目をお持ちで。」

「...。金のやり取りをしている仲だ。それなりの働きをしないと、君とは契約を切る事になるが、それでもいいのかね?」

「クックック。冗談きついぜ。契約を切られた日には、野垂れ死んじまいますよ。」

「君がどうなろうが、私には関係ない事だ。君の悪評で私の評価が下がるなら、致し方ないだろう。」

「冷たいね〜。下民の命は安いってか〜。言われた通り遂行してきたじゃないの。」

「私は、君に頼んだつもりはなかったんだがね。その時点で、君は契約違反を犯している。命令無視というね。」

「...。わかった。わかった。出ていきますよ。そんな睨みつけないで下さいよ。」

「わかってくれてなによりだ。早急に荷をまとめて出ていきなさい。」

「はいよ。」


フリード伯爵は回転する椅子を回しヘロドに背を見せ、別れを告げ窓越しから月を見上げた。


「あ〜そうそう。伯爵。渡し忘れた物がありましたわ。」

「何だね?」


ヘロドに声をかけられ振り向くと、そこには誰も居なかった。


「?ヘロド?..うぉぉ⁉︎」


間抜けな声を出した時、座っていた椅子が弾き飛ばされ壁に激突した。運の悪い事に頭を強く打ったのか意識が遠くなっていき意識を失った。


金属音が部屋中に響き渡ると同時に、強い衝撃波が襲う。壁や窓が軋みだし、簡単に窓ガラスが割れ部屋中に亀裂が入った。


「...。嬢ちゃん。横槍とはいただけないねぇ。」

「お久しぶりですね。ジャックさん。今は、ヘロドさんとお呼びした方がいいのかしら?」


交えた刃越しに、一言交わした後距離を取る。


「どちらでも構わんよ。何故ここに?」

「それはこちらのセリフですよ。他国の軍隊長が無断で、国境を超えているのかお伺いしても?」

「観光旅行だよ。たまの息抜きはしないとね。」

「へぇ〜。息抜きが他国の貴族殺しですか..。いい趣味してますね。」

「そう、怒らんでくれ。どうだ?一杯?」


刀を鞘に納め。片手に持っていた瓢箪を煽り、女性騎士に投げつけた。


「ふざけた人ですね。それと嬢ちゃん呼ばわりは、やめていただけませんか。立場があるんで。」

「あ〜あ。勿体ない。クックック。これはこれは、手厚い歓迎な事で。」


女性騎士は瓢箪を受け取らず避けると、部屋の出入り口で瓢箪が真っ二つ切られ、瓢箪とその中身が床に飛び散る。鎧を着た兵士5人が突撃してくる。


「ミルチャ大将!配置完了致しました!彼がムスペルヘイム国の軍隊長ですか?」

「そうよ。汚い容姿になっているけどね。さて、ジャックさん。この状況さすがの貴方もお分かりですよね?」

「降参じゃ。ワシ1人じゃキツい。」


どしんと勢いよくあぐらをかいて座り、帯刀していた刀を横に置く。


「大将!大手柄ですよ。早速」

「待ちなさい。」

「え?」

「ジャックさん、提案があるのですが聞く気はありますか?」

「大将⁉︎」

「私と彼の会話です。余計な口を挟まないでください。」


ミルチャ大将がジャックに提案を持ちかけようとすると、部下達が驚き会話に割り込もうとしたので、大将であるミルチャが注意をした。


「貴方が何もせず、我が国から出ていくのならこの件を不問とし、見逃しますがどうでしょうか?」

「クックック。一体何を考えておる?自慢ではないが、この首を欲しがる者は大勢おる。それをみすみす見逃すのか?」

「こちらにも事情がありましてね。喉から手が出る程欲しいですよ。ただ、今じゃないんですよ。残念な事にね。」

「死ななくてよいのなら、見逃してもらおうかの。まぁ、見逃して貰うお礼として、忠告しておこう。あんたら帝国が何を考えてるかは知らんが、ハティフローズは今すぐ禁足地に戻した方が良い。あれに戦い方を教えたら、取り返しのつかない事になるぞ。」

「ご忠告どうも。あれは皇帝と宮廷魔導士達が決めた事。私達にはどうする事もできん。」

「なるほど。あんたら所も一枚岩じゃないのか。」

「そうね。少なくともムスペルヘイム国よりは、マシかしらね。」

「言ってろ。」


ジャックは、割れた窓ガラスから飛び降り、屋根をつたって走り、姿は暗闇へと消えていった。


「本当に見逃して良かったのですか?」

「あぁ。近隣の住民には、強盗が入り無事捕らえたと説明しておけ。それと、そこの無能を回収しておけ。手当てはしなくていい。」

「はっ!かしこまりました。行くぞ。」


ミルチャ大将の指示通り部下達が動き出す中、ミルチャはフリード伯爵の机の引き出しを漁った。


「おい。そこの新人。これも持ってけ。」

「わ、わかりました。」


入隊したばかりで、あたふたしていた新人を呼び止め、厚みのある資料を渡す。


他国の軍隊長を入国させ、しまいには国家機密である情報を渡すとは、とんだ裏切り者だな。私の父君は。第2師団以外の人間には、知られてはいけないな。信頼が地に落ちる。


「私は先に、第2師団駐屯地に戻る。新人とその無能を担いでついてこい。」

「「はっ!」」


騒がしくなる中、ミルチャ大将らは裏戸から出て人目のつかない路地を、静かに進んだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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