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烙印貴族の下剋上  作者: 宮﨑碧
第1章入学編
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第1話新入生歓迎会・前編

プロローグの続きです。

館内に入り下足箱に、靴を入れて履き替える。目の前に横へと繋がる廊下に出ると、左へ誘導され最奥まで歩き大きな扉の前まで来た。前を歩いてた兵士が、2階ドアノックをすると「どうぞ。」と渋い声が聞こえ扉が開かれた。


「失礼いたします。アルベルト第3師団一等兵ゼラフです。この度のご依頼であった。ハティフローズ・ヴィトニルをお連れ致しました。」

「うむ。予定より早い到着流石だな。」

「ありがとうございます。」

「ゆっくり休むといい。君たちは下がりなさい。ヴィトニル君。君は入りたまえ。」


俺が部屋に入ると兵士達は頭を下げ、扉を静かにとじた。先程との態度の違いに驚きながら、この部屋の主であろう者の前に立つ。黒いスーツに身を纏い白髭を綺麗に整えた姿には、かなりの威圧感を放っていた。


「遠路遥々よく来てくれた。感謝するよ。」

「いえ。」

「すでに知っているだろうが、改めて名のらせてもらうよ。ミズガルズ中央学院校長ヘイム・ダルアースだ。5年の付き合いになるだろうから覚えておくといい。これからヴィトニル君には、この学院で教育を受けながら共同生活してもらおうと思っている。詳しい話しは彼に聞いてくれ。」


校長が『右へ』と手で示す先には、ソファの上で茶を啜りながら茶菓子を摘んでいた青年に目が行った。


「彼はこの学院の寮長をしてくれているヘイム・セルバークだ。」

「はじめまして。ヴィトニル君、校長の紹介の通り寮長の役職をもらっているセルバークだ。セルさんとかセル先生と気軽に呼んでくれ。」

「..ヴィトニルです。こちらこそよろしくお願いします。」


セルバークさんは、朗らかな感じで手を差し伸ばしながら軽く自己紹介する。それに応える様に優しく答え握手を交わした。


「校長。ヴィトニル君を連れていきますね。」

「よろしくお願いします。」


セルバークさんは、湯呑みに残っていた茶を飲み干し校長に一礼して退出する。その後を真似る形で自分も退出した。重く大きい扉がゆっくり閉まり廊下には、2人きりになった。


「はぁー。息苦しかったでしょ。ごめんね。ここからは、ラフな感じで話させてもらうよ。」

「いえ、そんな事はないです。」

「ハハ。無理しなくていいよ。歩きながら話そうか中の人に聞こえたら大変だ。」

「はい。」

「まずはこれを渡しておかないとね。」

「ありがとうございます。」


セルバークはポケットに入っていた手帳を手渡した。


「学生手帳だよ。それがないとこの学院内での行動に制限がかかるから、移動する時は必ず携帯しておくようにね。後は、色々ためになる内容が記載されてるから、時間ある時読んどくいいぞ。」

「ありがとうございます。これからどこへ?」

「寮だよ。夕飯時も近いし明日からの学院生活の前に、挨拶しておく方が不便もないだろう。南寮生全員だけだけどね。」

「そうですか。寮生は多いんですか?」

「東西南北に寮が一つずつあって、それぞれに100人程在籍している。その中の南寮がヴィトニル君が入る所だね。..隠さないでいいのかい?」


会話が途切れた所で、セルバークの視線は俺の首元へと向けた。首の左右には、ミズガルズ帝国の国章を模った烙印が押されていた。


「目立つ所に押されていますからね。これで何年も隠しながら生活するには無理がありますし、家名もある悪名高く有名ですからね。変に隠す必要がないと思いました。」

「一般生徒には刺激が強いんだけど..本人の意見を尊重して何も言うまい。それにこの学院は自由を大事にしてるからね。」

「外の景色を楽しめれば俺はそれで十分ですよ。」

「...。そうですか。もうすぐ着きますよ。..ここが、君の拠点となる場所です。部屋番は205号室。学生手帳をドアノブの上にある黒い板にかざせば、鍵が開き中に入れますよ。あと3・40分で新入生歓迎会だから、それまでには一階のホール会場に来てね。」

「わかりました。ここまで案内していただきありがとうございます。」


セルバークさんにきちんとお辞儀をしてから、205号室へと向かった。向かう途中何人かの生徒とすれ違うたび毎回振り向かれる。自分達の目で見た者が信じられないと驚いてる様子だった。


「ここか。」


2階まで上がり階段から3番目の場所が、目的の部屋があり言われた通り学生手帳をかざして鍵を開けてドアを開く。


「....失礼した。」


躊躇なく開いたドアを再び閉めてもう一度ドアについてる部屋番を確認した。間違えていないことを確認した後再び開けた。


「物置きかなんかか?」


足の踏み場もないくらいに、物で溢れかえっていた。本は何段も積み重なり、紙はばら撒かれ、ガラクタが散らばった汚部屋を目の当たりにする。


「はぁ〜。あっ。」


ため息をつき振り返ってドアを閉めようと振り返った時、手にしていた仕込み刀の鞘が積み重なった本に当たり雪崩のように崩れていった。


「どうぁぁぉーーーー!!...イッテテテ。おっかしいなぁ。ちゃんと重ねてたはずなんだが。よっこいせと!ん?」


この部屋の主であろう人物は、頭に当たった箇所を摩りながら立ち上がって、本を拾おうとした時俺と目が合った。


「何用で?」

「今日からこの部屋を使う者ですが。」

「え?今日だったけ?..しまったな。完全に忘れておった。仕方ない汚いが遠慮なくくつろいでくれ。」

「そうかそうか。...いや、できるか!座る場所も無ければここから先に入れないだろ。」

「はっはっは。散らばってる紙に触れなければ何を踏んづけてもいいぞ。」

「チッ。よく、こんな、部屋に、居られるな。」


紙を踏まないように、床が見える所を見つけながら飛んで、2段ベッドへたどり着き呑気に椅子に座ってる奴の前まで来る。


「...んんん。あんた⁉︎ハティフローズか?」

「そうだけど。」

「〜〜聞いてねぇぞ!あのバカ寮長!同室になるとは言ってたが..まさか..。」

「で、お名前は?」

「あ、あぁ、便利屋リオルだ。いや〜それにしても、ハティフローズに会える日が来るとは、ラッキーだったよ。」

「はぁ。」

「ふむふむ。なるほどなるほど。いい筋肉してるね。これがあの末裔..。くぅ〜。たまらん。なぁなぁ。私に君の血を分けてくれないか?」


リオルは俺の体をペタペタ触り1人言を言っていると思えば、興奮気味に話しだす。


「嫌だけど。」

「そんなぉ〜。君の血は希少なんだ!なかなか手に入らないと思うんだ!絶対手にひぐ!」

「落ち着け。初対面の相手からいきなり血を求められたら、普通断るだろう。というか気持ち悪いわ!」


リオルの頭にチョップをかまし一旦黙らせる。


「す、すまん。ついついコレクターの心に火がついてしまい1人暴走してしまった。」

「血のコレクター?..キモいな。」

「ストレートに言い過ぎ!趣味は人それぞれ。希少であればあるほど興奮するってもんよ。」

「そうですか。」


呆れつつベッドの上にあったゴミを捨て空いた場所に腰を下ろす。


「それにしたって汚い部屋だな。片付けないの?」

「それがな〜、何度か片付けようと思っても、懐かしの立案資料見たりするとそっちに意識いっちゃって全然掃除が進まなくてもう諦めた。」

「諦めんなよ!」

「はっはっは。別の理由もあってね。なんとこの中の紙に起爆札に近い物も含まれてるから下手に触れないんだよね。試作品だから本当に起爆するかはわからないんだけど。はっはっは。」

「笑ってる場合かよ。起爆したら俺ら2人だけじゃなくここで生活してる奴も危ないだろ!」

「そん時はそん時で。死人さえ出さなければ大丈夫だって。自慢じゃないがすでに、何回か部屋で騒ぎになる事件をやってるけど、死人が出ていないから退学は免れてるからいける。いける。」

「緩すぎるだろ。」


ガチャ


2人で話している途中部屋の鍵が解除され、ドアが開く。


「おい、リオル聞いたか?この寮にハティフローズらしきのが来たらしいぞ。マジやばくないか、俺ら殺されたりしないよな?」

「....。」

「ハッハッハ。ユウキくんは本当に勇気があるね〜。本人を前に、ハッハッハ。」

「リオルお前、とうとう頭おかしくなったのか。それが本当だったら笑ってる..場合..じゃない..。..す、すみませんでしたー。」


この部屋が揺れたと錯覚するほどの勢いで、ドアを閉めその場から逃走して行った。


「ありゃりゃ、こんな感じになるのか〜。..う〜ん。君がこの部屋に居ると商売にはならなそうだな。」

「何か売ってるのか?」

「もちろんだとも。私は便利屋だぞ。様々な依頼を受けて、その報酬金で生計を立ててるんだから。」

「なるほど?」

「..お前さん、聞いてないのか?この学院での」


リオルの話しの途中でチャイムが鳴り響き放送が入った。


『皆さんお待たせしました。会場の準備ができましたので、移動をお願いします。繰り返します。会場の準備ができましたので、移動をお願いします。』


「それじゃ行きますか。」

「いや、話しの続きは?」

「後だ後。遅くなったら寮長の雷が落ちる。怒られるのは勘弁だ。」


リオルと共に会場へと向かった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


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