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烙印貴族の下剋上  作者: 宮﨑碧
第1章入学編
1/10

プロローグ

久しぶりの新作です。

最後まで読んでいただければ幸いです。

よろしくお願いします。

桜の木に蕾が見え始め冬から春へ移り行く頃。


「親父、母ちゃん行ってきます。」


墓碑に合掌した後、ゆっくり瞼を開け立ち上がり荷を背負う。


「この森とも、さよならか...。」


物心が付く前から過ごしてきた土地を離れるのは寂しくもあるが、それ以上に胸の高鳴りが増す。しんみりと感慨にふけっていると、無粋にも大声と共に視界を閉ざされ担がれる。


「来い!もう別れはすんだろ!こっちは暇じゃねぇんだよ!」

「おっと...〜〜イッテェな!...もっと丁重に扱えや!」

「ふん!...おい、行くぞ。」

「おう。」


鎧をきた兵士に担がれた俺は無造作に投げ飛ばされ、壁に頭をぶつけ文句を言ったが、聞く耳を持たずして馬車が動き出す。


「痛そうですね〜。大丈夫かい?」

「...酒臭いな。あんた」

「クックック。いや〜昼から飲んでOKな仕事があれば、そりゃ〜飲むしかないでしょ!」

「うぇ、あんま近くに寄んなよ。」

「嗅覚がいいのかな?そんな近くには居ないよ?クク..ヒック!」

「口をこっちに向けないでくれ、異臭しかしねぇ。」

「そいつはできない相談だ〜。一応監視役兼・護衛役兼・案内役だからねぇ〜」

「兼が多くないか?」

「クックックッ、それだけ凄腕の人物ってことよ〜。いや〜それにしても残念だよ。こんなイケメン顔を見せられなくて。」

「安心していいぜ。あんたの顔を見なくてもわかる。どうせ爺だろ。」

「そう思うなら、もっと敬って喋るんだな!」

「痛!」


『パリーン』


綺麗な音が響き、髪が多少濡れた。


「道中長いんだからさ。ここは友好的に行こうじゃないの〜。」

「の、わりにはずいぶんな行動で..。」

「クックック。まずは自己紹介といこうじゃないの〜。ワシの名はヘロド。元は旅をしながら冒険者まがいな仕事をしていたが、この歳になりそろそろ落ち着こうと、フリード伯爵家に転がり込んだ者だ。好物は酒と美味い肴。現在彼女募集中じゃ!クックック。」

「...。」

「ほれほれ、お前さんも〜。」


体をツンツンと突かれ、自己紹介をしろと催促してくる。


「ヴィトニル。よろしく。」

「つれないねぇ〜。それだけか〜もっと上手く会話できねぇと、これからの生活上手くいかないよ〜。クックックッ。」


う、うぜぇ〜。

肩を組まれゆさゆさと揺らされながら、耳元で囁かれ鳥肌が立つ。


「必要ないだろ。これから待っている出来事を考えれば、会話なんて意味ないだろ。」

「嫌だ嫌だ。ガキのくせに青春を楽しまねぇつもりか?あぁ?せっかくあの無人の領地から出れたってのによ〜。」

「こっちから話しかけても、相手にされないだけってことだよ。」

「な〜にが、相手されないって。まだ会ってもいない連中に決めつけてんだ?あ?」

「〜〜〜。」


あまりの粘着ぶりで、イラつき立ち上がろうとした時。


「いい加減にしねぇか!さっきからうるせぇんだよ!おっさんは口を動かす暇があるなら仕事しろ!」


小窓を開けて一喝し終えると、力強く閉められた壁越しからは同僚であろう兵士と一緒に話し声が少し漏れていた。


「まったく、あんな怒る事ないだろうに...ワシの様に落ち着く事もできんのか。」

「..少なくとも、あんたには言われたくないと思うぞ。」

「ニル〜お前は、奴らの肩を持つんか?」

「ニル?...はぁ〜もういいや。あいつらが言った通り仕事をしたらどうだ?給料泥棒もいいとこだろ。」

「金は貰ってねぇからいいんだよ。面白そうな奴に会えそうだったから無理矢理横取りを...ゴホッゴホッ。そんじゃ〜、やりますかね。」

「...あんたの事情は知らんが、見世物じゃねぇぞ。」


『呪解』


真っ暗闇の視界に、一点の光が現れそこから多方面にヒビが入り一瞬で砕け散った。


「...。」

「どうも〜改めましてヘロドで〜す。よろしく〜。」


目の前には、真っ赤な顔をして幸せそうに笑った男が、手を振りながら気さくに話しかけてきた。


「誰だあんた?」

「おいおい。まずは、感謝の言葉を言わんかい!」


立てかけていた木の棒を持ち振り下ろす。


「なかなかやるねぇ〜。」

「..いや、なんもしてねぇよ。」


俺を狙ったであろう攻撃は、大きく外れた場所に振り下ろされ底板に突き刺ささっていた。

この酔っぱらいは何がしたいんだ?気さくに話かけたり、仲良くしようと言い出したり、あろうことか勝手に束縛を解いて攻撃してきたりと好き勝手すぎるだろ。それと案外若かったな。70過ぎの声だったが、50歳くらいだろうか無精髭のせいでより老けては見えるが。


「まぁ、ええわ。今のを避けた腕に免じて水に流してやろうではないか。」

「一歩も動いてないんだが。」

「よっこいせ。さっきから揺れが激しくて気持ち悪いんだわ。だからなんかあったら、自分で対処してくれや。いい物やるからよ。...ほれ。」


マジか..こいつ。まさかとは思うが、こんなしょうもない理由で解いたのか?


「ほれ!早く受け取らんかい!」

「あ、あぁ。どうも。」


男は突き刺さった棒を抜き俺に突き出して、小刻みに震えていた。手をのばし受け取ると男は意識が切れた様に、後ろへ倒れ大の字に横になる。


「あぁ、もう限界だわ。...あとはよろしくな。」


手を軽くあげヒラヒラと振ると、寝息が聞こえ始め自分1人だけ立ったままの不思議な空間が生まれた。


...いやいやいや、何この状況!?

逃げようと思えば容易く逃げれるんだけど、俺今なんか試されてたりする?それとも罠かなんか?

...。


男を見下ろす様子を見るが、気持ち良さそうにいびきをかいて寝てるだけしか伝わってこない。


「ひとまず様子見かな。...何かあるかもしれないし。」


馬車に揺られながら長い事座って、警戒していたが何事もなく時間だけが過ぎて行きやがて馬車が止まった。


結局何もおきなかった〜。一体この時間はなんだったのだろうただただ、横で爆睡してる酔っぱらいを見ながら移動しただけの無駄な時間だった。


「チッ!これだから役立たずは嫌いなんだよ。おい、降りろ。見えんだろ?変な動きしたらわかるよな?」


後ろの幕を開けた兵士は、腰にある剣を握りながら外で待ち構えていた。


「はぁ〜。同じ国民だってのに相変わらずの嫌われぶりで。」

「早くしろ!」

「ハイハイ。」


小声で聞こえない様に座ったまま文句を垂れていると、馬車を蹴り怒り散らしてる兵士を逆撫でしない様、従順に従い降りると外は夕暮れ時になっていた。


「ついてこい。」


兵士が先頭に立ち歩き始める。付いてく前に振り返り馬車中を見る。あの酔っぱらい結局起きるなかったな...。手にはあいつから貰った棒を見る。ありがたく貰っておくか。単なる棒かと思ってたけど仕込み刀だったし。


「早く行きなさい。」


背中を押されて進まされると、周りを囲まれながら先へと進み立派な門を通り立派な建物が待ち構えていた。周囲からは多くの視線が痛い。声も僅かに聞こえるがあまり良い言葉はなかった。それらを受け止めながら5人で建物の中へ入って行った。





ここまで読んでいただきありがとうございました。

次話を楽しみにしていただければ幸いです。

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